ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

書籍・雑誌(09-)

火山のふもとで / 松家仁之

前回の記事「沈むフランシス」で言及した松家仁之の鮮烈なデビュー作です。ブクレコのレビューですが、掲載させていただきます。 『 「夏の家」では、先生がいちばんの早起きだった。―物語は、1982年、およそ10年ぶりに噴火した浅間山のふもとの山荘で始まる…

沈むフランシス / 松家仁之

「火山のふもとで」という瑞々しい小説でデビューし話題を呼んだ松家仁之の二作目「沈むフランシス」です。「火山のふもとで」はてっきりレビューしていると思っていたのですが、検索しても出てこないのでどうやらブクレコだけだったようです。次記事に再録…

今年を振り返る2014(4) 書籍・展覧会編...and more

(Andreas Gursky 「Kamiokande」) はむちぃ: 皆様、いよいよ2014年の「今年を振り返る」シリーズ、今回で最後でございます。ゆうけい: 最後は書籍・コミックス、展覧会ですね、さ、さっさとやっちゃって風呂に入りましょうで、はむちぃ君!(^^)!は; …

オールタイム・ベスト 映画遺産 外国映画男優・女優100

拙ブログで何度か書いていますように、父が昔映画館を経営していたので、私にとって映画はごく自然にそこにあるものでした。そして思春期にさしかかったばかりの頃に「小さな恋のメロディ」の一大ブームが日本を席巻し、ますます映画の虜になり、自然に洋画…

シェル・コレクター / アンソニー・ドーア著 岩本正恵訳

久々に書籍の紹介です。アンソニー・ドーアというアメリカの若手現代文学作家が20台の若さで初めて発表した8編の短編集です。 ブクレコやFacebookで紹介されていて静謐な海の物語のように思われ、興味を惹かれて買ったのですがさにあらず、これが意外な難物…

高野聖 / 泉鏡花と高村薫と

私の尊敬する作家高村薫が現在月二回新聞に「21世紀の空海」という連載を続けておらます。今日で17回目に入りましたが、この二回は「高野聖」についての考察でした。 「聖(ひじり)」といっても古くは役小角、行基、そして若き日の空海、西行に至るまで半僧…

小川洋子この三本

高村薫、村上春樹、ポール・オースターといった限られた範囲に偏りまくっている拙ブログの書籍レビューですが、最近ブクレコにはまっていることもあり、少しずつですがレパートリーが増えてきました。そこで今回は最近はまっている小川洋子さんの作品につい…

アゴタ・クリストフの三部作

先日レビューした映画「悪童日記」でも解説しましたが、原作者はハンガリー人女性アゴタ・クリストフで、ハンガリー動乱の際オーストリアに亡命、その後スイスに定住し、辛苦の生活の末離婚、その後執筆活動に取り組み、本作の世界的成功で現代を代表する世…

蜩の記 / 葉室麟

先日公開された同名映画の原作です。映画館の予告編を何度も見ていたので、もう見る気満々です。ただ、予告編で語られるある情報に疑問があり、まず原作を吟味してみることにしました。 その疑問とは主人公が「10年後」の切腹を命じられていること。死罪に値…

しまなみ海道紀行(1)「村上海賊の娘」の島へ行く

(能島鯛崎島手前の渦潮) 9月6-7日と遅めの夏休みをとり、家内と二人でしまなみ海道ドライブに出かけてきました。昨日は尾道を散策したあと、しまなみ海道をドライブして今治に入り、ケーオーホテルというなかなか小じゃれたホテルに宿泊。美味しいディナー…

四人組がいた。/ 高村薫

私が最も尊敬する日本の作家、高村薫の待望の新刊です。 それもなんと、実に痛快にして抱腹絶倒なユーモア小説ときましたからびっくりです。裏書を読むと2008年から2014年まで「オール讀物」に連載されていた12編を収録したそうです。と言うことは、あのハー…

小澤征爾さんと、音楽について話をする / 小澤征爾x村上春樹

村上春樹氏と世界の小沢征爾さんの対談集が文庫版になったので早速購入しました。3年前に出た時にも買おうと思ったのですが、ちょっと高すぎるな、と敬遠しておりました。今回文庫本化に当たって、ジャズピアニスト大西順子さんとのエピソード「厚木からの…

あなたの人生の物語 / テッド・チャン

先日「SFマガジン700[海外篇]」を紹介した際に、テッド・チャンというSF作家の作品が素晴らしかったと書きました。そのテッド・チャンの、本邦で唯一出版されている作品がこの「あなたの人生の物語」という短編集で8作が収録されています。これがまた、とん…

SFマガジン700 【国内篇】

先日の「海外篇」に続いてSfマガジン創刊700号を記念する「日本篇」を紹介します。「海外篇」が優れた佳作揃いだったので日本篇も楽しみにしていたのですが。。。 残念ながら「不揃いのりんごたち」でした。 大森望氏が編集後記でその理由を語っておられて…

SFマガジン700 【海外篇】

1959年の創刊の「SFマガジン」、私も学生時代にずいぶん愛読していました。社会人になってからはとんとご無沙汰していましたが、ついに創刊700号に達したそうで、それを記念する集大成的アンソロジー「SF700」の海外篇と日本篇が編まれました。 そこでまず海…

渋江抽斎 / 森鴎外

Kindle Paperwhiteを買ってよかったと思うのは、青空文庫をどんどんダウンロードして読めることです。もちろん無料。そこで、最近はずっと森鴎外を読んでいました。 代表作「高瀬舟」「山椒大夫」「阿部一族」あたりを手始めに、ドイツ三部作(「舞姫」「う…

When Marnie Was There / Joan G. Robinson

Kindleの利点の一つが、洋書を容易にかつ安価で入手できるようになったことです。今回はジブリの次回作「思い出のマーニー」の原作Joan G.Robinsonの「When Marnie Was There」を読んでみました。ちなみにペイパーバックで1224円しますがKindleだと380円でDL…

ゴジラの精神史 / 小野俊太郎

怪獣映画の元祖にして今なお世界的な知名度を誇るゴジラ(Godzilla)。その第一作「ゴジラ」が公開されたのが1954年なので、今年でゴジラも還暦を迎えます。200万年前の恐竜が水爆実験を機に蘇ったのですから、デーモン閣下風に言えば言えば200万60歳と言えな…

集団的自衛権の深層 / 松竹伸幸

安部首相が躍起になって閣議決定しようとしている「集団的自衛権」ですが、今日(6月13日金曜日)の夕刊を見ても、まだ公明党の合意を得られないようです。安部首相はきっと切歯扼腕していることでしょう。 政治に関してはまったく素人の私、9条の改憲は先…

闇の中の男 / ポール・オースター著、柴田元幸訳

先日レビューしたように、「写字室の旅」を上梓されたばかりの柴田元幸氏ですが、オースターの次の作品「Man In The Dark」の翻訳が完成し、このたび出版されました。「写字室の旅」のあとがきで鋭意翻訳中であるとは書いておられましたが、こんなに早く出る…

うたかたの日々 / ボリス・ヴィアン

先日読んだ「注文の多い注文書」で、とりわけ魅力的な注文だった「肺の中に咲く睡蓮」の原作です。 『 青年コランは美しいクロエと恋に落ち、結婚する。しかしクロエは肺の中に睡蓮が生長する奇妙な病気にかかってしまう……。愉快な青春の季節の果てに訪れる…

注文の多い注文書 / 小川洋子+クラフト・エヴィング商會

今回はちょっと不思議系の面白い本を紹介しましょう。ブクレコでヘビー・レビュアーの方がこぞって紹介されていて、面白そうだなと思って図書館で予約していたんですがなんと43人待ち!ようやく今週順番が回ってきました。 小川洋子さんとクラフト・エヴィ…

Report From The Interior / Paul Auster

以前Paul Austerの自伝「Winter Journal」を紹介しましたが、第二弾として出版されたのが本作「Rreport From The Interior」です。前者が外面的、後者が内面的自伝として一対になっています。 実はこれを読む為にKindle Paperwhiteを買ったんですが、先に「W…

村上海賊の娘 / 和田竜

和田竜(りょう)の時代小説は「のぼうの城」「忍びの国」「小太郎の左腕」と文句なしに面白い。そして2014本屋大賞、第35回吉川英治文学新人賞を受賞した本作は4年の歳月をかけて完成を見た、1000Pに迫る著者にとって過去最大の大作となっています。 いきな…

女のいない男たち / 村上春樹

「女のいない男たち」といえばヘミングウェイの連作が有名ですが、村上春樹氏が同一の題名をつけて新作を発表しました。 今回は短編集で、「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」の6編が収録…

写字室の旅 / ポール・オースター作、柴田元幸訳

ポール・オースターの作品を着実に訳し続ける柴田元幸氏の今回の新刊は「写字室の旅」です。 原題は「Travels in Scriptocrium」で、これをレビューしたのがいつだったかな、と調べてみれば2008年でした。そのときの印象はあまり良くなくてポストモダンの不…

記者たちは海に向かった / 門田隆将

またまた本のレビューとなります。 最近段々とブクレコにはまり始め、多くのレビュワーのレビューを拝見しているのですが、3月に出たこの本をレビューしておられる方がおられ、そのレビューに感銘を受け即AMAZONで購入しました。 著者はノンフィクション作…

猫鳴り / 沼田まほかる

本好きの方なら「沼田まほかる」というちょっと変わったペンネームを一度は目にしたことがおありかと思います。 この方はその経歴も異色で、若くして結婚・離婚を経験、その後僧侶をされていたり、建設コンサルト会社を経営されたりした後、50代で初めて書い…

そこのみにて光輝く / 佐藤泰志

何度も直木賞候補になりその才能を高く評価されながら41歳で自死を遂げた作家、佐藤泰志。彼の名は以前ご紹介した「海炭市叙景」の映画化で広く知られることになりました。 この作品は明らかに函館市を舞台とした群像劇で、自然描写の美しさとは裏腹のさびれ…

ロスジェネの逆襲 / 池井戸潤

近年稀に見る高視聴率を稼ぎ出した、堺雅人主演のTVドラマ「半沢直樹」、私も家内と楽しみに毎週見ておりました。その原作は池井戸潤氏の「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」という、題名だけを見るとドラマの内容とは随分印象の違う二小説で…