ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

書籍・雑誌(15-)

天気の子

eiga.com みなさんこんばんは、今日も暑かったですね。このところ公私ともにバタバタしていて休日をなかなかとれなかつたんですが、今日は久々にフリー。 まずはいつもの通り、神戸大丸へインプを入れます。写真は大丸にあるニケ像です。 仕事で半年お世話し…

沈黙

⭐︎⭐︎⭐︎ あれだけ遠藤周作の原作に忠実に残酷で崇高な物語を紡いでおきながら、マーチン・スコセッシは最後の最後で原作との根源的な解釈の違いを見せた。残念だ。 沈黙 サイレンス eiga.com

怒り / 吉田秀一

吉田修一を読むのは「悪人」「さよなら渓谷」に次いで三作目です。何故そうはっきり言い切れるかというと、彼の作品は映画を観た後でしか読んだことがないからです。ということで、今回も映画「怒り」を観て深い感銘を受け、早速読みました。 今回吉田修一が…

大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア - 序章 - / J.D.サリンジャー、野崎孝、井上謙二訳

【 この二つの物語の「記述者」「作者」とされているグラース家の次兄バディ・グラースに敬意をこめて 】 あなたが私の書いたひたすら饒舌で未完成な - ちなみにこのレビュアーは私の作品「テディ」をナイン・ストーリーズ中最大の問題作と書いているが、間…

ナイン・ストーリーズ / サリンジャー、野崎孝訳

先日レビューした「フラニーとズーイ」の作者、J.D.サリンジャーの短編集「ナイン・ストーリーズ」です。訳は野崎孝氏、久々に本棚から引っ張り出してきました。 1953年にサリンジャーはそれまで書いた29編の短編小説の中から9編を選び、発表年代順に配列し…

フラニーとズーイ / 村上春樹 訳

先日ブクレコの常連Fさんが野崎孝訳「フラニーとゾーイー」を「楽しく読めた」とおっしゃっていて、お世辞抜きで凄いな、と思いました。 例えばサリンジャーで一番有名な「ライ麦畑でつかまえて」は原文もキャッチーな文章がいたるところに散りばめれていて…

暗幕のゲルニカ / 原田マハ

原田マハは良く知られているようにキュレーターの資格を有しており、キュレーターを主人公とした作品をいくつか手掛けていますが、代表作はなんといってもルソーの「夢」を題材にした「楽園のカンヴァス」でしょう。 あれから4年、過去(20世紀)と現代(21…

折れた竜骨 / 米澤穂信

前から気になっていた米澤穂信の長編作品です。中世欧州を舞台に繰り広げる「魔術と剣と(殺人劇の)謎解き」ミステリという紹介文、他の彼の作品とあまりに雰囲気が違うのでずっと後回しにしておいたのですが、ついに読みました。うまくラノベと本格ミステ…

死神の浮力 / 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の造形するキャラクタには独特の魅力があります。死神の千葉もその一人。当たり前ですが人間とは判断基準や価値観が全く異なるので、人間との会話に齟齬が生じ、それが巧まざるユーモアを醸し出すのです。 その死神の仕事は事件事故災害などで死…

カラマーゾフの兄弟 / ドストエフスキー

さあ、「カラマーゾフの兄弟」です。泣く子も黙る世界最高峰の、それもエベレストではなく、ヒマラヤ山脈に例うべき、サマセット・モームの選んだ「世界十大小説」の一つ。 交響楽を模して三章ずつの四部構成になっている、ドストエフスキー最後にして最長の…

ドストエフスキイの生活 / 小林秀雄

今はもう変わっていると思いますが、私が学生時代のころの現代国語の大学入試問題御三家と言えば小林秀雄、夏目漱石、天声人語と相場が決まっていました。このうち最も難解な文章で何千何万の受験生を悩ませたのが小林秀雄。今でもこの名前にアレルギーのあ…

40年ぶりの「ポーの一族」復活 「春の夢」 / 萩尾望都

売り切れ続出、というかほぼ予約完売、AMAZONではもう3倍の値がついている、というこの出版不況の時代に大変なことになっている月刊フラワーズ7月号。その理由は表紙を観れば一目瞭然、萩尾望都の「ポーの一族」の新作「春の夢」掲載!!! ヴァンパネラ一…

黒と茶の幻想 / 恩田陸

このところ三作続けて恩田陸の「理瀬シリーズ」をレビューしてきましたが、その勢いで大作「黒と茶の幻想」を読了しました。文中の言葉を借りれば「安楽椅子探偵紀行」ミステリですが、広い意味では理瀬シリーズの一環をなす作品です。 理瀬シリーズの端緒と…

黄昏の百合の骨 / 恩田陸

恩田陸の理瀬シリーズのレビュー三作目、「三月は深き紅の淵を」「麦の海に沈む果実 」に続く「黄昏は百合の骨」です。「麦の海」の後日譚と言える作品ですが、ここにおいても恩田陸は様々な伏線を張り巡らせ、数々のエピソードを連ね、最後には見事に(忌ま…

麦の海に沈む果実 / 恩田陸

恩田陸の「理瀬シリーズ」の中核をなす作品です。 広大な湿原に浮かぶ青い丘にある「幻想の学園帝国」の物語、読後しばらく放心してしまうほど濃密でスリリングで恐ろしい「学園ミステリ」でした。 好き嫌いが分かれるとすればラストのどんでん返しでしょう…

三月は深き紅の淵を / 恩田陸

本ブログでは恩田陸はあまり取り上げていませんが、「六番目の小夜子」「夜のピクニック」「ライオンハート」「常野シリーズ」をはじめ色々と読んでおり、ブクレコでは結構な数のレビューを書いています。 とはいえ、多作家の恩田陸のこと、まだまだ未読は多…

一瞬と永遠と / 萩尾望都

AMAZONは過去の購買歴をキーワードとして次々とメールを送ってきます。まあたいていは無視していますが、「萩尾望都」「原田知世」「ヒラリー・ハーン」といった何人かの殊更な女性の名前だけは別です。 というわけで、望都様の最新の文庫版エッセイ集をポチ…

モナドの領域 / 筒井康隆

去年やり残した宿題の一つ、筒井康隆の「モナドの領域」をようやく読了しました。 筒井自身が「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と宣言する「究極の小説」ですので、とりあえず「東海道戦争」以降ずっと付き合い続けてきた読者としては押さえてお…

探偵の鑑定 I&II / 松岡圭祐

松岡圭祐の新シリーズ、とは言うものの「探偵の鑑定」というタイトル通り人気シリーズ「万能鑑定士Q」と「探偵の探偵」のフュージョン作品です。Iでは話が途中で終わってしまい、最近発刊されたIIで完結なりました。このシリーズは一応これで終了です。とい…

サブマリン / 伊坂幸太郎

【 はた迷惑調査官陣内さんが帰ってきた! 】 伊坂幸太郎の名作「チルドレン」の続編ということで心待ちにしていた「サブマリン」がようやく出版されました。もう一気に読んでしまいました。 主人公の陣内さんは家裁の調査官というお堅い職業でありながら、…

永い言い訳 / 西川美和

「 妻が死んだ。これっぽっちも泣けなかった。 」 これは今秋公開の映画「永い言い訳」のキャッチコピーです。本作はその映画の原作で、監督西川美和自身の作品です。オリジナルのストーリーにこだわる彼女のことですから、この小説を書くにあたっては当然な…

黄金の服 / 佐藤泰志

五回芥川賞候補になりながら受賞できず、1990年に自殺した作家佐藤泰志。彼が残した作品は、2010年に「海炭市叙景」が、2014年に「そこのみにて光り輝く」が映画化され、何れも高い評価を得ました。そして第三弾「オーバー・フェンス」がオダギリジョー、蒼…

Carol / Patricia Highsmith

先日レビューした傑作恋愛映画「キャロル」の原作です。主演女優二人の素晴らしい演技、素晴らしい脚本・演出の雰囲気を味わいたく、原書で読んでみました。ちなみに今日が奇しくもアカデミー賞授賞式だったのですが、キャロル役のケイト・ブランシェット、…

The Buried Giant / Kazuo Ishiguro

本年元旦に今年の課題としたカズオ・イシグロの昨年3月に出版された新作「The Buried Giant」を読了しました。もちろん昨年5月に土屋政雄氏の訳で「忘れられた巨人」は読んでいたわけですが、こちらは原書になります。 原書を読もうと思ったのは理由は2015…

KindleのWord Wise機能

(Word Wise 機能 Full) 今年最大級の寒波がやってきましたね。こんな日は家で読書、というわけで、年末公約のカズオ・イシグロの「The Buried Giant」を読み始めました。 はじめはやはりクイーンズイングリッシュが手強くて戸惑いましたが、徐々に中世英国…

陽気なギャングは三つ数えろ / 伊坂幸太郎

【 陽気なギャング・リターンズ 】 伊坂センセの「陽気なギャング」が9年ぶりに帰ってきたぜ。中身はないけれどしゃべり始めたら止まらない超自信過剰男響野と人間嘘発見器にして公務員の傍ら副業として銀行強盗をたしなむ成瀬と人間以外の動物をこよなく愛…

「古典五種競技」質問

(Claud Monet: Impression, soleil levant、1872) 先日紹介した雑誌「MONKEY」には「猿からの質問」というコーナーがあり、今回のお題は「古典五種競技」でした。質問内容は 『 以下の五つの分野について、あなたにとって一番大事と思える古典の作品(等)…

MONKEY No.7 : 新年のご挨拶に代えて

あけましておめでとうございます。本年も拙ブログをよろしくお願いいたします。 さて新年第一回の記事は申年で満を持してのMONKEY紹介です。この雑誌は翻訳家としての村上春樹氏の盟友である柴田元幸氏主宰の英米文学翻訳評論雑誌です。といっても学術…

太刀洗万智を追いかけて(2) 真実の10メートル手前

「太刀洗万智を追いかけて」後編は、発刊されたばかりの「真実の10メートル手前」 です。「さよなら妖精」と「王とサーカス」の間に書かれた「ベルーフ(天職)」シリーズ6編が収められており、その中には私が初めて彼女に出会った「ナイフを失われた思い…

太刀洗万智を追いかけて(1) 「さよなら妖精」「王とサーカス」

こちらでは一度も紹介していませんでしたが、実は最近とても気になっている作家、というか、その作中の人物がいます。作家は米澤穂信。そして作中人物は太刀洗万智(たちあらいまち)。 簡単に太刀洗万智を紹介しましょう。 「さよなら妖精」で初登場。この時…