ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

陽気なギャングは三つ数えろ / 伊坂幸太郎

陽気なギャングは三つ数えろ (ノン・ノベル)

【 陽気なギャング・リターンズ 】

 伊坂センセの「陽気なギャング」が9年ぶりに帰ってきたぜ。中身はないけれどしゃべり始めたら止まらない超自信過剰男響野と人間嘘発見器にして公務員の傍ら副業として銀行強盗をたしなむ成瀬と人間以外の動物をこよなく愛する憎めない天才スリの天然系青年久遠とコンマ一秒精度の体内時計を持つ凄腕ドライバー雪子の四人は健在で響野の妻祥子も何でも作るヒッキー田中も相変わらずだけど雪子の息子慎一は真っ当な青年に成長していたな、嬉しいよ俺は。伊坂流章立て作法もますます磨きがかかってる。例えば第一章は「悪党たちは久々に銀行を襲い、小さな失敗をきっかけにトラブルに巻き込まれる。いつものこと。-おとなしくできないなら、せめて気をつけてやれ。」だぜ、クールだろ、え?どうせ失敗するのは響野だろうって?おいおい響野の爽やかな饒舌をなめてもらっちゃ困るな、今回も成瀬と久遠がせっせと働いている時の無駄に面白い演説は見事なんだぜ、皆さんSNSで思いっきり尾鰭をつけて宣伝してください「警察には事実を、ネットには面白い脚色を」なんてな、今風だろ。えっ、今風なんて死語を使うなって?、悪かったなおやじ言葉で、あいつらもそれなりに年をとったってこった。で意外にも失敗するのは久遠、警備員の投げた警棒が左手に当たって怪我しちゃうんだ。おっとこの先はちゃんと本を読んでくれよ、頼むぜ、と伊坂センセも言ってたぞ。嘘だろって、、、そりゃ嘘だけどさ。何の話だったかな、そうそう章立てがうまいってこと、各章の分割には四人の名前と辞典が相変わらず出てくるんだけど例えばこんなのどうよ?「= 久遠 V = したがう【従う・随う】①(中略)③他のものの変化に伴って変化する。「シリーズを重ねるに ---・って書くのが大変になる」④(以下略)」って伊坂センセも大変だなって涙が出てくるだろ、おい。で、今回つきまとってくる小悪党は三流ゴシップ雑誌の糞ライター野郎なんだけど、これがまた情けないほどに小物なんだけど法律スレスレの記事を書きゃそれなりに世間の耳目を集めっちまうわけで、四人が銀行強盗かもなんて記事載せられちゃそりゃまあ困るわけだな。で、こいつ他にもたくさん恨みを買っていて某ホテルで「オリエント急行」ばりの襲撃も受けちまうわけなんだが、偶然久遠が絡んじゃって頓挫、そこからその辺の人たちも巻き込んで大騒動になるわけだよ、さっすが伊坂センセ、このあたりは上手いよな。当然コワいお兄さん方も登場してその方々とも丁々発止のやり取りがあるわけなんだが天才響野様の出番を待つまでもなく、というか彼には大人しくしていただいておいて成瀬君がなんとかしてしまうのが一番だと思うだろ、おっとどっこいそれじゃあ面白くないじゃないか。最後は響野様の登場だ。登場するだけだけどな。でもって解決するのは動物だ。こんな書き方をすると「そうじゃない」と成瀬に怒られそうだがまあそういうことだ。それで終わってほんとにコワい兄さん方が納得したのか、っていう処理に問題があると俺は思うわけだがまああの四人組のことだ、これからも何とかやってくんだろう、もう銀行強盗なんてする歳じゃない卒業だなんて言ってるけど、俺はあいつ等はまた何かやらかすとにらんでる、だって伊坂君が彼らのことを大大大好きだもの。