ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

「古典五種競技」質問

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(Claud Monet: Impression, soleil levant、1872)

 先日紹介した雑誌「MONKEY」には「猿からの質問」というコーナーがあり、今回のお題は「古典五種競技」でした。質問内容は

『 以下の五つの分野について、あなたにとって一番大事と思える古典の作品(等)を挙げていただき、それぞれに四百字以内で解説してください。

1:文学
2:音楽
3:美術
4:思想
5:映画


(1~4については1900年以前、5の映画のみは1945年以前のもの) 』

というものです。錚々たる回答者がさすがと思わせる深い(あるいは難解な)回答をしています。

 で、私も正月の暇にあかせて無い知恵を絞ってみました。

1: 文学; 小倉百人一首 藤原定家 編 (平安末期ー鎌倉初期)

 日本人の識字率の高さは数百年にわたって世界でも驚異的な高さであると言われていますが、それは漢字から仮名を発明したことが大きいと思われます。そしてその仮名を利用した短歌(和歌)は世界に誇れる詩形式であると思います。そして藤原定家の編んだ百人一首は、詩としてのレベルの高さとその後のかるたに応用された庶民性を併せ持つという奇跡的な存在です。もちろん作者は百人いるわけですが、編纂者が天才定家であったからこそ成し得た奇跡の詩集だと思います。

Mullovabach

2: 音楽; J.S.Bach " Sonatas and Partitas for Violin Solo" (1720年ごろ)

  現在における音楽の「世界共通語」はやはり西洋音楽であり、その基礎となる(鍵盤楽器における)平均律、対位法、フーガ技法等を確立したのは大バッハです。となると当然「平均律クラヴィーア集」を挙げるべきなのでしょうけれど、個人の好みとして「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ」を挙げたいと思います。「シャコンヌ」をはじめ名曲そろいで、重音奏法が多く技巧的にも高度な技が要求されるため、私の好きなヴァイオリニストは必ずチャレンジしています。ちなみに知っている中ではヴィクトリア・ムローヴァの演奏が最高です。

3: 美術; Claud Monet: Impression, soleil levant (1872)(冒頭写真)

  日頃「印象派はもう見飽きた」と嘯いていますが、やはり近代絵画におけるもっとも革新的な運動だったことは論を待ちません。そしてその数ある印象派絵画の中で最も重要な作品と言えばモネの「印象 日の出」に止めを刺すでしょう。この絵により「印象派」という呼称が誕生するわけですから。個人的にも絵画鑑賞歴の中で最もインパクトのあった作品です。

4: 思想; マルクス主義 (19世紀後半)

 実は内田樹も挙げているのですが、民族・宗教以外でこれほど世界に対立をもたらし、「その思想のもとに」あるいはその思想に「対抗して」これだけ多くの死者を出したのはこの思想をおいて外にないでしょう。理想的世界を志向しながら現実には悲惨な社会的実験に終わった(一応まだ終わっていない国もありますが)この思想の存在は、反面教師として歴史にしっかりと刻まれるべきでしょう。

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5: 映画; 「市民ケーン」 オーソン・ウェルズ (1941年)

 1945年以前という縛りがある限り、この作品がベストだと思います。これが処女作というところにオーソン・ウェルズの才能の凄さを感じます。ポール・オースターは「何か一つのものに映画を象徴させる演出がある映画は傑作だ」と語っていますが、まさにそういう映画。「Rose Bud(薔薇の蕾)」はあまりにも有名。新聞王ハーストをモデルとしたため、様々な批判や妨害工作があり興行的には成功しませんでしたが、高い芸術性と映画技法の斬新性は当時の映画の常識を覆すものでした。技法的なことで言えば、ワンシーン・ワンショット撮影、ディープフォーカス、広角レンズ、ローアングル、クローズアップ技法などが画期的でした。

 以上です。ブログの勃興期に「指名されたら必ずやるアンケート」という企画が流行りましたが、チェーンメール的なところがあるので敢えて指名はしません。
 興味ある方は是非チャレンジしてみてください。