ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

現在形の村上春樹

 村上春樹の最新作「アフターダーク」を読みました。すでに関連サイトでは感想文オンパレードですが、好意的に作風の変化を捉えているものが多いようです。私はまだ感想が頭の中でまとまりきらないのですが、あっと思ったことをとりあえず一つだけ速報で。

 この小説は章毎に時計が提示され、地の文が現在形で語られます。つい先日の記事ポール・オースターの「幽霊たち」が現在形で語られることについて書いたばかりだったので不思議な感じがして読んでいました。同じ現在形で語られていても、もちろんオースターと村上春樹の作風はずいぶん異なっています。前者がある程度探偵小説の体裁を持っていて緊張感が張り詰めていくのに対して、後者は何か虚無の中へ意識が解体されていくような感じがします。「世界の終わり」の国の図書館で時間を一つずつ眺めているような感触、とでも言いましょうか。

 音楽が今までにも増して次から次へかかっているのになぜか静かですね、といいたいくらい。そういえばゴダールの「アルファヴィル」がラブホの名前になっているのもシュールでした。博覧強記なのかチープなスノビズムなのか、この辺は相変わらずにやりとさせられる春樹ワールドの真骨頂ですね。

 また、再読して自分なりの把握をして見ます。