ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Tightrope Walker / Rachael Yamagata

TIGHTROPE WALKER

  待望のレイチェル・ヤマガタの新譜が出ました。「Tightrope Walker」です。前回の「Chesapeak」から4年振りとなります。前作と同じく、Pledgemusicという、大手レーベルから離れてファンの寄付でアルバムを作るという姿勢で発表されましたが、公式サイトのMLによると好調な滑り出しをみせており、良かったです。

Heavyweight

 実はこの間に、「Heavyweight」というなかなか良いバラード集も出ていたのですが、ミニアルバムだったので敢えて紹介はしませんでした。今回は10曲収められた正式なアルバムで、通算4作目となります。

 Produced By Rachael Yamagata and John Alagia

1. Tightrope Walker
2. Nobody
3. EZ Target
4. Over
5. Let Me Be Your Girl
6. Break Apart
7. I'm Going Back
8. Rainsong
9. Black Sheep
10. Money Fame Thunder

  プロデュースはデビュー作以来の長い付き合いであるジョン・アレイジアとRY本人の二人。なので、基本的な音楽性に特に変化はみられません。

 タイトル曲の綱渡り師(「Tightrope Walker」)を題材にしたダークでヘビーなナンバーで幕を開け、終曲の「Money Fame Thunder」で再び「綱渡り師のように顔を上げて下を向かずにさあ始めよう」というポジティブ志向な歌詞で一曲目に回帰するという、かっちりとしたアルバムであることを十分に意識して仕上げていることが分かります。

 ただその間の曲構成にやや首を傾げました。意識的なものかどうかは分かりませんが、同じ傾向の曲が固まっているのです。1-3曲目は初期の代表曲「Sunday Afternoon」に通じるようなだーくでヘビーなロック志向のナンバー、4,5曲目はデビュー作「Happenstance」に見られたようなキャッチーなメロディのポップな売れ線曲、そして6曲目から9曲目まで4曲連続でミニアルバム「Heavyweight」に似たスローバラード。

 確かにこの三つの個性が彼女の持ち味ではあり、どの曲もレイチェルにしか歌えない歌ばかりではあるのですが、こう固めてしまわないで適度にばらけさせた方が飽きずに聴けるのにな、とちょっと惜しい気がしました。もう好きな曲をDLして聴く時代ですのであまり関係ないのかもしれませんが。

 そんな中でも、ライブで盛り上がるだろうタイトル曲とアンサーソングの「Money Fame Thunder」、

 もうおしまい、あなたと私は別の道を行きましょう、という破れた恋を歌っていながら不思議な明るさのある「Over」、

 シングルカットするならこれかなというポップな佳曲「Let Me Be Your Girl」、

 あなたが私を好きになってくれなかったら、私は壊れてばらばらの破片になってあなたの周りに散らばってしまう、という痛切な歌詞をじっくりと歌い上げる「Break Apart」、

 黒羊(≒厄介者)が夜明け前に目を覚ますだろう、それを倒せるのはあなただけ、というちょっとシュールな歌詞をカントリーフォーク調のギター伴奏で歌う「Black Sheep」、

などが聴きどころでしょう。

 FacebookやMLで彼女の動向は逐次フォローできる時代ですが、とにもかくにも新譜を聴くことができて良かったです。ライブも予定されていますが残念ながらまだ日本は含まれていません、久しぶりに彼女のライブを見たいですねえ。