ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

恋愛小説 / 原田知世

恋愛小説

 原田知世様の新譜はGontitiさんとのコラボ「Summer Breeze」以来の久しぶりの洋楽カバー集です。肩の力を抜いて楽しそうに、口ずさむように歌う知世様の魅力全開で、、おまけに最近は声質が従来のちょっと鼻にかかった甘ったるい声から透明感のある美声へと変化していることもあり、10編の「恋愛小説」を堪能できます。もっとも知世様はネイティブ・スピーカーではありませんから、典型的なジャパングリッシュでちょっと拙いところもありますが、ファンならばそれも込みで楽しまなくてはいけません(笑。

 パートナーはいつもの如く、伊藤ゴローさん。中ジャケも素敵でSHM-CDで音質も良好ですので是非CDで聴いてほしいですね!

1. 夢の人  (The Beatles
2. ドント・ノー・ホワイ feat. Jessy Harris  (Norah Jones and Jessy Harris)
3. イン・マイ・シークレット・ライフ  (Leonard Cohen)
4. ベイビー・アイム・ア・フール (Melody Gardot)
5. ナイト・アンド・デイ (Cole Porter
6. ブルー・ムーン (Lorenz Hart and Richard Rogers) 
7. イフ・ユー・ウェント・アウェイ (Marcos Valle and Paulo Sergio Valle)
8. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン  (Bart Haward)
9. 恋の面影  (Burt Bacharach and Hal David )
10. ラヴ・ミー・テンダー  ( arr by Vera Matson and Elvis Presley)

『 女優でありシンガーでもある原田知世が綴る、大人のラヴ・ソング・カヴァー・アルバム。凛とした輝きと芯の強さ、そして奥深い表情を湛える歌声で英語曲をカヴァー。アコースティック~ボサ・ノヴァ~ジャジー・ポップのテイストが漂う上質なポップ・アルバム。プロデュース及び楽曲アレンジは、ボサ・ノヴァ・ギタリストの伊藤ゴローが担当。(AMAZON解説より)』

 では10曲の寸評を。

 一曲目はビートルズの「夢の人」。ポールがボーカルを取っている小品ですが、テンポが全然違いますから全く違う曲のように思えます。喩えは古いですが、レコードの45回転(ポール)を33回転(知世様)に落としたような感じです。それに、ポールのサビの部分「and she keeps calling」って部分は殆ど聞き取れないくらいの発音なのですが、さすが知世さんは丁寧に歌っておられますので聞き取り易いです。

 二曲目はこのアルバムの売りの一つ、ブルーノート史上空前のセールスを記録したノラ・ジョーンズのデビュー作から、共作者ジェシー・ハリスとの共演で「Don't Know Why」。ノラの太くて強い声質にはさすがに敵いませんが、結構ジェシーと声の線の細さが似ていて、違和感が無く、なかなかいい雰囲気です。

 三曲目が渋い選曲で唸りました!なんとレナード・コーエンの「In My secret Life」!私の大好きな曲で、知世さんが歌うとまた違った魅力があります。コーエンのカバーと言えばジェニファー・ウォーンズが有名ですが、知世さんにも作って欲しいですねえ、コーエンのカバー集。

 四曲目はメロディ・ガルドーを持って来ました。ジャズ界注目の新星、というかもうすっかり中堅となったシンガーです。ゴローさんが編曲して知世さんが歌うとジャズではなくて、まるでシャンソンみたいですが、これもありです。

 五曲目はスタンダードで、コール・ポーターの「Night and Day」。もう何百何千とカバーがあると思いますが、ピアノをメインとした王道的なアレンジで軽やかに歌っております。

 六曲目もスタンダードで黄金のコンビ・ハート&ロジャーズの「Blue Moon」、知世さんの透明感溢れる声も良いですが、鳥越啓介さんのベースが適度なスイング感でサポートしておられて。これもとてもいい雰囲気です。

 七曲目はちょっと変わった選曲でマルコス・ヴァーリの「If You Went Away」。ブラジルのシンガー・ソングライターですので、ボサノバギターのゴローさんの推薦があったのかもしれません。私も初めて聴きましたがストリングスも導入してゆったりとしたテンポで歌いこむ知世さんの歌声が心地よく、切ない歌詞が心に沁みます。

 八曲目はエヴァンゲリオン・ファンなら誰でも知ってる「Fly Me To The Moon」、高橋洋子さんヴァージョンと聞き比べるのもいいでしょう。歌詞は実は「月に連れてって」欲しいわけじゃなくて、「とにかくあなたがすきなのよ」という内容なんですよね。

 九曲目はバカラック・ナンバーで「The Look Of Love」。映画「007 カジノ・ロワイヤル」でダスティ・スプリングフィールドが歌って流行しましたが、ジャズファンにはダイアナ・クラールのカバーが有名です。それと比べるのは知世さんに可哀想、でも頑張って歌っております。

 最後の十曲目は泣く子も黙るプレスリーの「Love Me Tender」。オルゴール風のアレンジでさらっと歌い流して〆めとしております。

 というわけで多彩な選曲、安心の知世流歌唱、ぜひ購入してお楽しみください。ああっ、ライブに行きたい!