ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Warming Up / Nachiko

Warming up (MINI ALBUM)
 昨年末に1980年代の幻の3アルバムの復刻が決まったNachikoさんですが、HPが新しくなっており、歌手として復活されていることを知りました。驚きと喜びで焦る気持ちを抑えつつ、早速新譜「Warming Up」を密林で購入、年末からヘビーローテーションで聴いております。

 ウォーミングアップと言いながらその完成度は高く、ミニアルバムと銘打ちながら普通のアルバムとなんら変わりないボリュームがあり、そして何より嬉しいのは30年の歳月が信じられないほどNachikoさんの声が変わっていないことでした。

1. 紫の糸 ~光を~
2. Prisoner
3. ホ・ン・ネ
4. 夕映え
5. 幻華
6. 体が風になるまで
7.μμタンバリン ボーナストラック

女性シンガー・ソングライター、Nachikoのアルバム。「人は独りでは生きていけない。求めることから全てが始まる。それは必ず幸せに繋がる」という思いが込められた、次のアルバムへの序章的な内容の作品。メジャー・コードを使い、孤独を表現したロック・バラード「夕映え It was good die in loneliness」他を収録。
うつろいゆく世紀を彷徨える魂が、歌声で激しく揺すぶられ、さらなる高揚が訪れる。

AMAZON解説より)』

 いきなり一曲目「紫の糸 ~光を~」からヘビーなナンバーでエンジン全開です。なんと15分以上あります。
 原曲の「紫の糸(A Priori)」は第二作「お花畑は水びたし」のA面三曲目に入っていた傑作ですが、その時の倍近くになっており、

<Overture>
<第一幕・天国編>
<第二幕・地獄編>
<第三幕・貌洋>
<第四幕・地獄編>

ダンテの「神曲芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を意識したかのような壮大な構成の大作と変化しています。原曲は「四人囃子」の森園勝敏等による70年代~80年代プログレを意識したアレンジになっていましたが、今回はそうる透という方がプロデュースされ、DEEP PURPLELED ZEPPを髣髴とさせるような70年代ハードロック風のアレンジに変わっています。

 ということで、SEやハードロック風イントロが延々と続き、ついにNachikoさんのボーカルが滑り込んでくるのが約3分後(^_^;)。いやあ驚きました。アレンジは変われど、先程も書いたように「お花畑は水びたし」の頃と全く変わらない声です。30年間と言う歳月を忘れ、陶然としてあっという間に15分が過ぎてしまいました。そして、「わたししか見えない」のリフレインの懐かしさにじわっと熱いものがこみ上げてきました。

 二曲目「Prisoner」はクールダウンして、スローテンポで歌いこむ、ちょっと切ない歌詞のラブソング。

 三曲目「ホ・ン・ネ」は、珍しくタンゴ風のアレンジとなっています。新しいチャレンジですね。

 四曲目「夕映え」は個人的にはアルバム中でも白眉の一曲。昔のNachikoワールドを思い起こさせる切なくも懐かしいアレンジ。そして歌詞は聞き流せば普通のラブソングですが、夕映えの世界の夜に変わっていく寂寥と

「寂しさで死ねたらいいね It was good die in loneliness」

という歌詞の重さ。やはりNachikoさんの言葉に対する研ぎ澄まされた感覚は健在です。

 五曲目「幻華」は再びヘビーな大作となっています。内容はNachiko版いろは歌。その独特の歌詞世界は難解ですが言葉の一つ一つはすっと脳に忍び込んでくる感じで洗脳されてしまいそうです(笑。

 一応のエンディング曲は再びセルフカバー。一曲目と同じく二作目のB面に収録されていた「体が風になるまで」です。こちらは「紫の糸」と異なり、軽快なキターストロークの伴奏で明るく淡々とまるでフォークソングを歌うように歌っておられて意外でしたが、これはこれでとても心地よい。

 そしてどんでん返しのサプライズはボーナストラック「μμタンバリン」。驚くほど明るく、打ち込み多用、声と歌唱法も変えてあり、まるでNachiko版「踊るポンポコリン」です。正直なところ面食らってしまいました。まあ、驚きあってのNachikoワールドですよね。

 でもNachikoさんのブログを拝見するとこの曲の歌詞、想像以上に深いのです。映画「ブリキの太鼓」に、ルイス•キャロルの「不思議の国のアリス」を粉砂糖のようにまぶして重さを飛ばして作ってあるそうです。それを知って聴くとまた違う世界が見えてきます。私も「ブリキの太鼓」は観ましたが、ここまで自分の中に取り込んで解釈することはできませんでした。脱帽です。

 というわけで、Nachikoさん、おかえりなさい。関西でのライブを期待しています。