ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

letters / 川江美奈子

letters

  前回紹介した今井美樹の「Dialogue」の最後にもう一枚カバー集を紹介しますと書いたのが今回のアルバムです。アーチストは、その今井美樹に数多くの楽曲を提供し、先日の今井美樹さんのコンサートにサポートメンバーとして参加されていた川江美奈子さんです。

 普通ソロ・コンサートでその人以外のアーチストに演奏の技巧以外で興味を惹かれることはまずないはずですが、今回は違いました。川江さんのバックコーラスの柔らかくて透明感あふれる美しい歌声と、しっとりとしてテクニックも完璧なピアノ演奏に感銘を受けてしまいました。特に今井美樹さんが特別に彼女だけを紹介し、二人で歌われた「あなたがおしえてくれた」は絶品でした。

 帰って早速調べましたところ既に数枚のアルバムを発表されていることを知り、何曲かYoutubeでも聴いてますます興味を惹かれました。
 そして手始めに購入したのが、他のアーチストに提供した楽曲をセルフカバーしたこの「letters」です。2008年に発表されたアルバムで、好評だったのでしょう、3年後には「letters 2」も出されています。
 全曲ピアノの弾き語りという私好みの構成で楽曲も素晴らしく、愛聴盤となりそうです。

1. つないで手 ( for 一青窈 2007.9 )
2. 孤独の向こう (for 平原綾香 2008.4 )
3. 滴 (for 今井美樹 2007.11 )
4. 桜色舞うころ (for 中島美嘉 2004.2 )
5. 足跡  (for 今井美樹 2008.4 )
6. 夢暦 (for 平原綾香 2007.1 )
7. ありのままでそばにいて (for 郷ひろみ 2008.6 )
8. ピアノ

『 ピアノと歌で綴ったletters

中島美嘉今井美樹平原綾香一青窈郷ひろみへの提供楽曲を、
弾き語りにより収録した初のセルフカヴァーアルバム。 (AMAZON解説より) 』

 ピアノの弾き語りというシンプルなアレンジが自作曲の魅力を見事に引き出しています。佳曲揃いですが、特に素晴らしいのは平原綾香に提供した「孤独の向こう」、中島美嘉に提供した「桜色舞う頃」でした。この二曲を聴くだけで買った価値がありました。特に「孤独のむこう」は平原版でも大好きな曲ですが、川江さんの透明感のある歌唱を聴いて益々好きになりました。

 もちろん今井美樹に提供した「」「足跡」も良いですが、できれば「年下の水夫」を聴きたかったです。

 ただセルフカバー集だけにどの曲も優しくて切ないバラードばかりで曲調が似ており、金太郎飴的であることは否めません。ただ、川江さんの場合、歌詞が深いのでそれを楽しむのも一興ではあると思います。

 そんな中で少しアクセントになっているのは、ただ一人の男性シンガーである郷ひろみに提供した「ありのままでそばにいて」です。郷さんがこんないい曲を歌っていたのかという驚きと、川江さんが郷さんの心の中を覗いたかのような冒頭の二節の歌詞が印象的です。

「時はただ僕のために
流れてくはずだった
自分以上に誰かを
思う日が来るなんて

新しい五線紙には
悲しい唄もあるだろう
だけど君がいるかぎり
声を枯らし唄うよ」

 そして終曲は自らのセルフカバー曲「ピアノ」。

「私がきっともうすぐいなくなると
知ったらあなたは泣くのかな」

という歌詞で始まり

「言葉にならない夜は
ピアノを弾いて
二度と触れられなくても
どこかでいつも想ってるから」

という歌詞で終わる痛切な歌で心に沁みるものがあります。実は2007年に大病を患って入院されており、その時に作った曲だそうでその当時の心境が吐露されているのではないでしょうか。

 というわけで、好きなアーチストが一人増えました。それほど大ヒットした曲はないものの、とても質の高い楽曲を提供される優れたシンガーソングライターだと思います。今井美樹さんのコンサートに行ってよかったです。
  もし「letters 3」が出るのなら、是非今井美樹さんの新譜「Colours」から「あなたがおしえてくれた」をセルフカバーしていただきたいと思います。