ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

あなたと見た夢 君のいない朝 / 柴田淳

あなたと見た夢 君のいない朝
  シバジュンこと柴田淳の通算9枚目のオリジナルアルバムです。前作「僕たちの未来」から約1年半ぶりとなりますが、この間カバーアルバム「Cover 70's」を挟んでいますのであまり久しぶりという感じはしませんね。
 さて、本題に入る前に一言言いたいことがあります。「僕たちの未来」の時も少し書きましたが、、最近の日本のアーチストのアルバムは「初回限定盤」「初回特別盤」と称してDVDカップリングして売ることが多くなっています。本作もそうですし、次に紹介しようと思っているデリコの新譜もそうです。不振に喘ぐ日本のCD販売のカンフル剤にしたいと言う思惑はよく分かるのですが、正直なところPVなんて一回観れば大抵それで終わりですし、嵩張るし、そんなのつけるくらいならCD単体盤を少しでも安く販売して欲しいです。ところが本作など、CD単体でも3000円を超えています。となると、たいていの人がもうiTunes(アルバム買い2100円)などでのダウンロードでいいや、となってしまうのではないでしょうか。
 
 
 

1.ノマド
2.あなたの手
3.雲海
4.恋人よ
5.冷めたスープ
6.嘘
7.朝靄
8.魔女の話
9.道
10.キャッチボール

「 カバーアルバム「COVER 70’s」で聴く手を存分に魅了した柴田淳の「声」と「歌唱力」。
シンガーとしての魅力だけでなく、本来のシンガーソングライターとしての柴田淳の魅力を原点から見つめ直した渾身の作。
カバーアルバムで得た期待を裏切らず、さらなる魅力を見せつける。
デビュー11年で培った歌唱力と、以前より業界内外でも評価の高い彼女ならではのメロディラインを存分に堪能出来る今作は、柴田淳の意地を表現したと言っても過言ではない。
またプロデュース陣は、「COVER 70's」のプロデュース、アレンジを手掛け、以前から柴田淳の作品に携わっている羽毛田丈史氏。更に、以前より柴田淳の作品に携わり、彼女の世界にロックテイストを吹き込んだ松浦晃久氏をプロデューサーに迎え制作進行中。

(オフィシャルHPより) 」

 さて本作でもシバジュンのクリアボイス、美しいファルセットは健在で歌唱も安定しております。近年彼女のアレンジを手がけ続けている羽毛田丈史氏の安定感のあるアレンジともあいまってどの曲も一定の水準を保ち、平均点の高い作品となっています。

 個人的には、カバーで取り上げた「異邦人」を髣髴とさせるような1「ノマド」の新鮮さ、4「恋人」の切々とした歌唱、9「」の初心に戻ったかのような強い意思表明が印象に残りました。

 ただ、難を言えばアルバム全体としてのメリハリがありません。これは凄い、という飛びぬけた曲がありませんし、いつもはいいチェンジオブペースになっていたピアノソロが入っていません。羽毛田流の無難なバラード・アレンジは先ほど述べた様にある一定の水準をクリアするにはとてもいいと思いますが、それで最初から最後までやられてしまうと少し辛いものがあります。

 例えば同じ羽毛田氏が手がけていた初期の鬼束ちひろなどは、彼女の暴れ馬のような強烈な個性を羽毛田氏が上手く調教して素晴らしい仕上がりのアルバムが出来ていたのですが、優等生のシバジュンと組んでしまうと両者のおとなしめの個性がぶつかりあうことなく無難なものしか生まれないという歯がゆさを聴くものは感じてしまいます。

 ちょっときついことを書いてしまいましたが、これもシバジュンへの期待度が高いがためとお許しいただきたいと思います。もちろん彼女のファンには十分楽しめる素晴らしいアルバムです。ただ、彼女が今後もっとメジャーなアーチストを目指したいと志向しているのか、それとも今のようにマイナーではあるけれど安定した固定ファンを大切にしていく路線を守り続けたいのか、それが今一つ見えてこない。デビューから10年以上の歳月を経て、彼女も難しいところに来ているようです。とりあえず一つの節目となる次回第10作目に期待しましょう。