ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ゴーストライター

ゴーストライター [DVD]
はむちぃ: みなさまこん**は、今回の映画レビューは洋画「ゴーストライター」でございます。
ゆうけい: ゴーストライター、といっても柴田淳のアルバムではございません。
は: 当然でございます(ーー;)。2011年度キネマ旬報洋画部門で堂々の第一位を獲得した傑作との評判も高い作品でございます。
ゆ: たかけんさんも絶賛していましたねえ。
は: なにしろ監督があのロマン・ポランスキー様ですから、いやがうえにも期待は高まりますね。
ゆ: 1933年生まれですから、ポランスキーももう79歳ですか。イーストウッド監督の例もありますから歳で判断しちゃいけないんですが、果たしてどれだけの作品を撮ってくれるのか?映画館でトレーラーは見て面白そうだな、とは思っていたんですが公開時には見逃してしまいました。
は: というわけでDVD鑑賞になってしまいましたが、作品紹介参りましょう。

『 The Ghost Writer  2010年 フランス・ドイツ・イギリス合作映画 日本配給:日活

スタッフ:
監督・脚本・製作:ロマン・ポランスキー
原作・脚本:ロバート・ハリス

キャスト:
ユアン・マクレガーピアース・ブロスナンキム・キャトラルオリヴィア・ウィリアムズトム・ウィルキンソンイーライ・ウォラック

元英国首相アダム・ラングの自叙伝執筆を依頼されたゴーストライター。ラングが滞在する真冬のアメリ東海岸の孤島に1ヵ月閉じ込められることと、締め切りまで時間がないことを除けば、おいしい仕事のはずだった。しかし、前任者のゴーストライターは事故で死んだという-。とにかく、気乗りがしなかった・・・。 仕事を始めた直後、ラングに、イスラム過激派のテロ容疑者を“不法”に捕らえ、拷問にかけたという戦犯容疑がかかる。しかし、この政治スキャンダルもまだ序章に過ぎなかった。 はかどらない原稿と格闘していく中で、ゴーストライターはラングの発言と前任者の遺した資料との間に矛盾を見出し、ラング自身の過去に隠されたもっと大きな秘密に気づき始める。やがて彼は、ラングの妻ルースと専属秘書アメリア・ブライとともに、国際政治を揺るがす恐ろしい影に近づいてゆく・・・。(AMAZON解説より)』

は: こ、これは凄い。。。
ゆ: いやいや、恐れ入りました、ポランスキー監督、ヒッチコック映画を髣髴とさせる心理サスペンス・ドラマを作り上げましたね。

は: テンポはゆっくり目で派手なアクションシーンも殆どないんですが、
ゆ: 一部でも内容をしゃべるとネタバレになってしまうくらい緊密な構成で、観るものをぐいぐい引っ張っていきました。
は: 冒頭次々と降車していくフェリーの中に一台のBMWが取り残されているシーンから不穏な空気が流れ、
ゆ: 最終盤に至り、ついに「真の」謎を主人公が解明した直後、路上を撮るカメラが一瞬揺れ、あることを暗示する見事なラストシーンまで、原作者が練りに練ったプロットをポランスキーが寒色系の色調で描きあげています。
は: 寒色系といえば、孤島の寒々とした風景が印象的でございました。
ゆ: 見事なカメラワークでしたね。アメリカの島も欧州のスタッフが撮るとこういう寂寥とした風景になるのか、と変な感慨を持ってしまいました。

は: あえてプロットの瑕疵を探しますと、
ゆ: グーグルを調べれば何でも分かってしまうのか、とか、前任のゴーストライターの車のナビをあの組織がそのまま放置しておくか、とか、幾つか突っ込みどころはあるんですが、ストーリーの流れが見事ですから、まあそれほど気にならないですね。
は: イラク戦争当時の首相であったトニー・ブレア氏をモデルにしていると言われていますが、
ゆ: そういう意味ではきわめて政治的な映画でもあるのですが、その辺を突っ込んでしゃべるとネタバレになるのでやめておきましょう。

は: 主演のユアン・マクレガー様はスターウォーズシリーズのジェダイの騎士で有名でございますが、
ゆ: 今回はこれがユアンか?というくらい風采の上がらないゴーストライターの役をうまく演じていましたね。首相役のピアース・ブロスナンが矍鑠としていてどうしてもジェームス・ボンドに見えてしまうのとは対照的でした。
は: その他首相の妻、秘書件愛人という二人の主演級女優から、いかにも腹に一物あるような物語の鍵を握る人物二人、何かおどおどしている家政婦や、島の老人に至るまでキャスティングがぴったりとはまっていましたね。

は: ポランスキー監督はこの作品が未完成のうちに米国司法当局の依頼を受けたスイス当局により拘留され、拘留中にポストプロダクションの指示を出して完成にこぎつけたそうでございます。
ゆ: ポランスキーにはスキャンダルがつきものとはいえ、まあ凄いバイタリティの持ち主ですねえ。
は: それだけにアメリカ憎しの思いが映画にこめられているような気もいたします。
ゆ: これこれはむちぃ君、ネタバレにつながるようなことはこの映画に限っては慎みましょうで。
は: 申し訳ありません、そうでございました。というわけで見応え十分なサスベンスドラマとなっております。
ゆ: 英米の観客には笑えるネタも随所に仕込まれているのですが、そのあたりは残念ながら十分には理解できませんでした。観終ってからネットであちこちの解説を読むとなるほどな、と分かります。それも楽しみの一つとしてご覧くださいませ。

評価  A: 傑作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)