ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

キース・へリング展@伊丹市立美術館

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 80年代を代表するポップアートの旗手、キース・ヘリング。彼は惜しくもAIDSで斃れてしまったため、実際の活動期間は僅か10年間と限られたものでしたが、この間驚くべきエネルギーで作品を産み続け、日本でも親しまれていましたし、彼も日本がお気に入りでした。その彼の業績の
『全貌に迫り、多くの人々と「アートの力」を共有することを目指し、中村キース・ヘリング美術館(山梨県)の所蔵品を中心に、国内から集められた約150点を展示(公式HPより)』
した展覧会が伊丹市立美術館で開催されています。

キース・ヘリング展 ー アートはみんなのもの
LOVE POP! Keith Haring Exhibition  Art Is For Everybody!

Haring  というわけで久々の陽気に誘われて、日曜日に行ってまいりました。伊丹市立美術館は柿衛文庫の建物を増築する形で開館した古風な建物ですが、その外壁にいかにもへリング風の壁画が描いてありました。思わず本物か!と思ってしまいましたがそんなわけないですよね。「壁画プロジェクト」と称してこの展覧会にあわせて描かれたそうです。へリングといえば地下鉄の落書きからキャリアが始まり、「アートは大衆のものだ!」と主張し続けた人ですから、こういうストリート・アート系の試みは粋ですね。

Itamishiritubijyutukan  美術館の庭です。ちなみに庭伝いに行ける隣の柿衛文庫本館では梅の盆栽展をやってました。これもまた和みます。都会の真ん中で、そうと意識しなければわかならい様なところなんですが、意外にも良い美術館でした。

 閑話休題、さてこのへリング、良くバスキアと並び称されます。そのバスキアアンディ・ウォーホル、作家のウィリアム・バロウズ、歌手のマドンナ、グレイス・ジョーンズ等々と80年代狂躁のニューヨークで親交を深めつつ、彼の親しみやすい作品群は産み出されていきました。本展覧会ではその業績を4つのセクションにわけて分かりやすく紹介していました。

 輪郭だけという極端に単純化された人間像や、漫画風の犬、空飛ぶ円盤、更にはアンディ・ウォーホルミッキー・マウスを合体させたアンディ・マウスなど、へリングの描くモチーフは限られていて、逆にそれが誰もが一目観てへリングと分かる作風となっています。当然ながら今回も多くはそういう作品群で、これならわざわざ伊丹まで観にいかなくても、なんて邪な気持ちも抱いてしまいそうでしたが、

 腹に穴が開いた人間像が、ジョンレノンの射殺にショックを受けて考え出されたものだったとか、

 グレイス・ジョーンズにボディ・ペインティングをしている貴重な写真があったりとか、

 キャンパスは既成の絵画芸術の権威の象徴なので生涯使わなかったとか、

 日本の子どもたちと共同制作している写真の中に、肩揉みをしてもらっている微笑ましいシーンがあったりとか、

 作家・ウィリアム・バロウズとのコラボレーション「アポカリプス」ではその難解な詩と、それまでにない複雑な構成やコラージュに驚いたりとか、(モナリザにあんな落書きしていいのか^^;)

 相次ぐ贋作の出現が、彼らしい発想の転換でポップ運動、ポップショップにつながっていっただとか、

 いろいろな知らなかったへリング像を知ることができ、有意義な時間を過ごせました。今月いっぱいですので、関西近辺の方は是非お見逃しなく。