ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

パーマネント野ばら

パーマネント野ばら [DVD]
はむちぃ: みなさまこん**は、本日の映画レビューは邦画に戻りまして昨年公開されました西原理恵子原作の「パーマネント野ばら」でございます。
ゆうけい: ども、梅小鉢高田沙千子の「’あ’の多い菅野美穂」のモノマネが好きなゆうけいです。
は: その菅野美穂様、8年ぶりという久々の主演作でございます。
ゆ: 映画では久しぶりなんですがNHKドラマの「坂の上の雲」で良い演技を見せていましたからね、楽しみです。

『2010年日本映画
原作:西原理恵子
監督:吉田大八
脚本:奥寺佐渡

キャスト
菅野美穂小池栄子池脇千鶴、宇崎竜童、夏木マリ江口洋介

人気漫画家・西原理恵子の原作を菅野美穂主演で映画化した恋愛ドラマ。海辺の小さな港町に佇む美容室・パーマネント野ばらにひとり娘を連れて出戻ったなおこを中心に、町の女たちがそれぞれ抱いている“大人の女性の恋心”を繊細なタッチで描く。(AMAZON解説より)』

は: 西原理恵子の出身地高知の小さな港町の情景を活き活きと描きつつ、そこを舞台に繰り広げられる恋愛模様を笑いあり涙ありで描いた好篇でございました。
ゆ: 「いけちゃんとぼく」もそうでしたし「毎日かあさん」も映画化されるし、このところ西原理恵子ブームといっても過言ではないですね。
は: 彼女独特の毒を世間一般が許容するようになったということでございますかね。
ゆ: そうですねえ、今回の映画でも随分下世話なエピソードや猥談がバンバン出てくるんですけどPG規制はありませんからね(笑。

は: 脚本もそのサイバラワールドを活写しつつ、最後の一ひねりが見事でございました。
ゆ: 確かに。男にだまされてもだまされても恋を求めるタフな女性たち、飲む打つ浮気するのダメ男たち、奇矯な行動を繰り返す呆れたやつ、そしてパーマ屋にたむろする年季の入ったおばちゃん方は猥談し放題でもう何も怖いものなし、と主人公の周辺にはこれぞサイバラワールドという人物像満載なんですが、主人公はちょっと印象が違う。
は: 子連れバツイチで実家のパーマ屋さんに戻ってきた女性で比較的物静かな印象ですね。
ゆ: ではあるけれども、やっぱり恋はしていて高校教師の恋人(江口洋介)がいる。
は: この江口洋介様がどうも要領を得ないというか、本気なのかちょっとした遊びなのかがよく分からない。
ゆ: 菅野美穂の恋心には応えてキスもすれば抱いてもやるわけですが、自分から能動的には彼女を誘わない。
は: おまけに一泊二日の温泉旅行に来たのに彼女が眠っている間に姿を消してしまう。
ゆ: その後、夜の公衆電話から彼に電話する菅野美穂の渾身の演技には涙を誘われましたね。
は: ところがラスト近くになって江口洋介様の真の事情が判明されるに及び、観客が抱いていたそれまでの彼の行動への疑問が氷解し、全てにおいて新しい意味が付与される。
ゆ: 西原、うまい!と思わず小膝を叩いてしまうような心地よいだまされ方でしたなあ。
は: 後で思い返すと、何故今の時代に公衆電話だったのか納得できますし、池脇千鶴様がろくでもない旦那の死後にポツンと漏らす

「人は二度死ぬんよ、体が死んだとき、完全に忘れ去られるとき」

という台詞にも重要な鍵があったことが分かりますね。

は: その主人公を演じた菅野美穂様の演技は「彼女の新境地」と評されておりますが。
ゆ: 先ほど申し上げたように後半に思わぬどんでん返しがある難しい役なんですが、ラスト近くまでちゃんとバツイチの親の顔と恋する女の顔を演じわけて好演していましたね。先程述べた夜の公衆電話の中で泣き崩れながらも江口洋介への恋心を吐露する場面と、浜辺で小池栄子に「私、狂うとるんやろか」とボソッと尋ねる場面などは鳥肌ものでした。そしてそれを引き出した吉田大八監督も素晴らしい。さすが、『腑抜けども、悲しみの愛をみせろ』を撮った監督だけのことはあります。

は: 彼女の友達の小池栄子池脇千鶴のお二人も吉田監督の演出に応えて好演されておられました。
ゆ: 小池栄子が活発で男勝りなフィリピンパブのママ、池脇千鶴がおとなしくて男運が悪すぎ、しかも猫が死んだ時の方が旦那が死んだ時より悲しむ風変わりな貧乏暮らしの女性と、適材適所でしたね。小池栄子が思いのほかよかったですけど、個人的には池脇千鶴のファンなので彼女の演技が凄く印象に残りました。
は: しかしそれより何より強烈な印象を残したのは、菅野美穂様のお母様、夏木マリ様でございましょう。
ゆ: 金髪チリチリパンチパーマ、タバコスパスパ、口は悪いけど根は優しいパーマ屋さんを怪演でしたねえ。美味しい役といえばそれまでですが、彼女も大した傑物です(笑。

は: というわけでございまして、高知の美しい景色を背景に遠慮会釈のない辛辣で滑稽なサイバラワールドで観客を楽しませておいて、最後にどんでん返しを用意した面白い映画でございました。
ゆ: あくまでもサイバラワールドにアレルギーのない方向けの小品ではございますが、興味の沸いた方は是非ご覧くださいませ。

評価: C(佳作)
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)