ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

闇の子供たち

闇の子供たち プレミアム・エディション [DVD]
はむちぃ: 皆様こん**は、筆頭執事のはむちぃでございます。今日の映画レビューも少し古いのですが、2年前大変話題になりました「闇の子供たち」をお送りします。
ゆうけい: 2-3年前の自分の体調では見たくても見られなかった映画でしたし、改正臓器移植法の施行に伴い、最近本人同意不詳の移植例がでてきておりますので、タイミングとしては今か、とようやく踏ん切りがつきました。
は: タイの貧困層の子供が臓器提供のため売られていると言うショッキングな内容でしたからね。
ゆ: 2年前の自分では「 無~理~ フルポン村上風)」でしたね、きっと。では、はむちぃ君映画紹介お願いします。
は: わざわざ斜め文字まで使ってとりあえずギャグ一発かますんですから(ーー;)。では参りましょう。

『 2008年 日本映画、PG-12指定

スタッフ:
監督・脚本:阪本順治
原作:梁石日
撮影:笠松則通
音楽:岩代太郎
主題歌:桑田佳祐

キャスト:
江口洋介 宮崎あおい 妻夫木聡 プラパドン・スワンバン プライマー・ラッチャタ 豊原功補 鈴木砂羽 塩見三省 佐藤浩市

ストーリー:
タイ駐在の新聞記者、南部浩行が、闇ルートでの臓器売買に関する取材を始めると、金のために子供の命までもが容赦なく奪われるという、想像を遙かに超えたおぞましい実態が明らかになってくる。一方、理想を胸にバンコクNGO団体に加入した音羽恵子も、子供たちがさらされている、あまりに悲惨な現実を目の当たりにしていく。やがて、突然姿を消した貧民街の少女が売春宿に売り飛ばされていることを知った恵子らNGOのメンバーは、彼女を助け出そうとするが…。(AMAZON解説等より)』

は: 東南アジアの貧困問題、AIDS問題、幼児買春問題、そして臓器移植目的の幼児人身売買問題と次から次へヘビーな内容が目白押しでございました。
ゆ: が、、、これなら2年前に見てもどってことなかったっすね~。
は: と、申しますと?
ゆ: 内容の深刻さに比べて映像と脚本が軽いんですよね。もちろん出演する子供たちの精神的影響を考えて自粛した部分があることは十分理解しますし、タイ政府等からの抗議でカットした部分があるらしいのですが、それを差し引いても軽い。何も知らずにNGOで乗り込んできた宮崎あおい並みに軽い(笑。
は: それはどうしてでしょう?
ゆ: 一つにはフィクションなのに内容を「盛り過ぎ」たんでしょうね。で、一つ一つの問題への突っ込み方が浅い。もう一つは江口洋介宮崎あおい妻夫木聡等への危険の及び方が軽い。全然タイマフィアは怖くないのかと思っちゃうくらい、軽々と取材したり見張りしたりしてる。最後の集会シーンを除けば、殺されるのはNGOの一人だけですからね。これだとムエタイアクション映画の「マッハ!!!!!!!!」の方が、同じタイの暗黒部の描き方が余程ディープで暗かったですよ。
は: フィクションなのに、というところがミソでございますかね。
ゆ: そうなんですよ、実はこの映画、公開当初は「ノン・フィクション」を売りにしてたんですよ。で、あちこちから抗議が来て、いつのまにかノン・フィクションという文字が取れちゃった。で、今は完全にフィクションです、ということになってる。そのあたりの曖昧さ、いい加減さが、この映画に大きなダメージを与えていることは間違いないですね。

は: 日本人俳優、子役を含めたタイ人俳優は大変な熱演をされていますからね。
ゆ: 江口洋介なんか、停滞気味の最近では出色の熱演でしたし、宮崎あおいはこの時期あの「篤姫」で超多忙の時期なんですよ、根性あるなあ、と思いましたもんねえ。
は: 江口洋介様は最後おそらく自殺したんじゃないかと思うんですが、ちょっとその理由が分かりにくかったですね。
ゆ: 確かにラストはすっきりしませんでしたね、これもまた物議を醸した映画「The Rose」のラストシーンを髣髴とさせるシーンを最後に持ってきたんですから、もう少し丁寧に説明してほしかったです。

は: さて、そのような虚実の曖昧な作品ではございましたが、訴えかけるテーマは現実である部分も多く、大変重いものでございますね。
ゆ: 生体心移植というのはおそらくありえない、と思うのですが貧困に端を発する幼児人身売買児童ポルノ、それによるAIDSの蔓延は明らかな事実です。
は: UNICEFMSF国境なき医師団)が全世界に児童ポルノ廃絶を呼びかけていることはこのブログでも度々取り上げてきました。
ゆ: 児童ポルノ表現の自由だとか言って擁護するような輩はこの映画を見て根本から考えを改めろ、と言いたいですね。
は: 貧困ゆえに売られて外人相手におもちゃにされてAIDSになってゴミ袋に入れられて捨てられて、命からがら生家に戻っても家畜小屋に入れられて隔離され惨めに死んでいき、最後は家畜小屋ごと焼かれる。これを見て何にも思わずに児童ポルノ規制反対なんて口に出せる人間がいたら、その理性を疑いますね。
ゆ: 確かにそういう意味では意義ある映画なんですが、ノンフィクションじゃねえんだろ、と揶揄されてしまうところが本当に痛いですねえ。でもこういう子がいることは限り無くノンフィクションなんですから、この子を中心にすえてじっくりと映画を作ったほうがインパクトが強かったかもしれないですね。

は: ところでエンドロールでの桑田佳祐様の歌はちょっと違和感がございましたね。
ゆ: ちょっとどころじゃないですね、闘病中の彼には悪いけれど、ぶち壊しと言ったほうが。。。最初にタイ人のバイヤーが買った子供を乗せて運転中に口ずさむ「タイガーマスク」のエンディングテーマ「みなし児のバラード」がとても印象的だったのであの曲の方がまだ良かったんじゃないですかね。

は: というわけでとても重いテーマを扱ったにも関わらず、ちょっと尻すぼみになってしまった話題作でございました。採点に参りましょう。
ゆ: 逆にフィクションとしてそれほど怖がらずに見ることのできる映画ですので、PG-12指定の通り、中学生以上(個人的にはできれば高校生以上の方がいいかと思いますが)の方でこういうテーマを勉強したい方には一助となると思います。

はむちぃ: 70点
ゆうけい: 66点