ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

るろうに剣心

Rurouni
(パンフレットより)
はむちぃ: 皆様お久しぶりでございます。久々に映画レビューに呼び出されてまいりました。作品は公開前より様々なメディアで話題沸騰していた「るろうに剣心」でございます。
ゆうけい: るろうにファンとしては待ちきれずに、先行上映を観てまいりました。
は: 原作は和月伸宏の傑作時代劇で、「少年ジャンプ」で初めて女性ファンがついたというほど各キャラが立っており、「Samurai X」として海外での評価も高い作品でございますね。
ゆ: 私自身としてもジャンプでは最後の愛読漫画で、TVアニメも含めて大変思い入れのある作品です。
は: なにしろPSソフト「るろうに剣心~十勇士陰謀編」を何度も飽きずに徹底的にやりこまれたくらいですから。
ゆ: そうなんだよね~、主人公二人がワンセットで同じゲームを二回もやらねばならんのに、一回目は隠しアイテムをとり損ねて裏ダンジョンへ行けず、めげずに最初からやり直したくらいですから。。。って、これこれはむちぃ余計なことはイワンの馬鹿(ーー;)。
は: おお、久しぶりのイワンの馬鹿(笑。でもそれだけに連載終了から10年以上たった今頃の実写映画化には若干疑問があったのでは?
ゆ: そうなんですよ、「ようやく剣心を演じられる役者が現れたから」という製作サイドのコメントも宣伝くさいなあ、と思っていたのですが!
は: おお、久しぶりのビックリマーク!ということは、佐藤健様の演技は、、、
ゆ: 期待以上でした!(^^)!
は: では早速映画紹介参りましょう。

『 2012年 日本映画 配給:ワーナー・ブラザース映画

監督・脚本: 大友啓史
原作: 和月伸宏
脚本: 藤井清美
アクション監督: 谷垣健治
音楽: 佐藤直紀

キャスト
佐藤健武井咲、吉川晃司、蒼井優青木崇高綾野剛須藤元気、田中偉登 、奥田瑛二江口洋介香川照之、他

幕末から明治になり、かつて「人斬り抜刀斎」として恐れられた剣客・緋村剣心佐藤健)は「不殺(ころさず)」の誓いのもと流浪人となっていた。流浪の旅の途中、剣心は神谷道場の師範代・薫(武井咲)を助けたことから、薫のところで居候することに。一方、街では「抜刀斎」を名乗る人物による人斬り事件が発生しており……。(シネマトゥデイより)』

は: 映画の導入部では戊辰戦争の終焉が描かれております。緋村剣心がこれを機会に人斬りをやめるという設定になっております。
ゆ: 寒色系の彩度の低い映像で凄惨な戦闘が描かれており、大友組の本気度が窺い知れる始まり方でしたね。
は: この戦闘シーンをはじめ、本作のアクションシーンでは一切CGを使っていないとの事でございます。
ゆ: あとでパンフレットを読んで初めて知りましたが驚きですね。どのアクションシーンも結構ロングで撮ってじっくりと見せていましたから、スタッフもキャストも大変だったでしょうね。
は: アクション監督の谷垣健治様は香港映画で数多くのアクションシーンを担当された経験があり、今回は大友監督直々の要請での起用だとの事でございます。
ゆ: この方は「カムイ外伝」でも今までの時代劇にはない魅力的なアクションシーンを作り上げておられましたが、今回も「アクションの中に登場人物の人間性やドラマ性をきっちり描き込む」という大友監督の難しい要請に見事に応えておられたと思います。

は: さて、この導入部で早くも緋村剣心斉藤一鵜堂刃衛が登場し、その後のそれぞれの立ち居地を暗示するシーンが描かれるのですが、
ゆ: 当時新撰組であった斉藤一が戦闘の真っ最中にタバコを吸っているのには少々ガクッと来てしまいました。原作でヘビースモーカーであるところからの設定なんでしょうけれども、あれはあまりといえばあんまりですね。

は: 一方の佐藤健演じる緋村剣心は早くも見事な殺陣を見せますね。
ゆ: 最初でも申し上げましたが、彼は凄いですね。俊敏さ、スピード感が半端でなく凄い。アクション監督に相当鍛え上げられたのでしょうけれども、天性の才能も十分感じました。
は: 小柄で華奢な緋村剣心がそのハンデを克服すべく得た神速ともいえる俊敏さを演じきっておられましたね。
ゆ: 一方で普段の時に見せる柔和な顔の表情も剣心そのもの、「ようやく剣心を演じられる役者が現れた」というに値するだけのはまり役でしたね。

は: さて、本編でございますが、原作初期の「鵜堂刃衛編」と「武田観柳編」をミックスした脚本になっておりました。
ゆ: 原作ではもちろん「京都編」が一番人気が高いのですが、さすがにそれをいきなり映画化するのは困難で、この選択は妥当なところでしょうね。それに原作のはじめから順番に見せていては、2時間あまりという映画の時間の制約上無理がありますからミックスして一つの物語としたのも止むを得ないところでしょう。
は: 大友監督の意図としては「原作に忠実に」ではなく「原作に誠実に」を目指したそうでございます。
ゆ: それであらためて感じたのは、原作の「元人斬りの不殺の誓い」というのは実写にすると結構重くて暗い、ということですね。
は: この誓いのおかげで映画に一本筋が通って凛とした雰囲気が流れており、良い脚本だとは思いましたが?
ゆ: 実写で江口洋介に逆刃刀の偽善を身をもって知らしめられたり、吉川晃司が偽人斬り抜刀斎として凄惨な殺人を繰り返すのを見せ付けられると、少し胸が苦しくなりました。

は: そのような重いテーマを抱えつつも、ほのぼのとした生活シーンとアクションシーンを適度に織り交ぜつつ最後の凄絶なクライマックスにまでもっていく脚本は良く練られていたと思います。
ゆ: 漫画原作ということを考えるとよくできていましたね。まだ公開前なので具体的なことを書くわけには行きませんが、明治という新時代の明るさと新たな暗黒面を各登場人物を通してよく描けていたと思います。

は: さて、その登場人物を演じられた各俳優さんはいかがでしたでしょうか?
ゆ: 佐藤健に関してはもう誉めまくったので割愛しますが、敵役の鵜堂刃衛を演じた吉川晃司はさすがの貫禄でしたね。華奢な佐藤健が新時代の殺陣を見せたとすれば、強靭な肉体を持つ彼は時代劇の王道の所作としての殺陣を見せてくれたのはないでしょうか。もう一人のライバル、斉藤一を演じた江口洋介は「牙突」の出番が極めて少なかったのが残念でしたが、存在感のある演技をしていたと思います。
は: 悪の親玉を演じられたのは名優香川照之様でございますが、
ゆ: もう確固たる地位を築いた演技派俳優ですから大友監督もある程度好きにやらせたようですが、正直なところやりすぎ、漫画的なところが表に出すぎで、個人的には気に入らなかったですね。明治になって台頭してきた新たな「悪」の要素の方をもっと前面に出してシリアスに演技しても良かったのではないか、と思います。

は: さて、ヒロインの武井咲様に関してはいかがでしたでしょうか。
ゆ: 意外に薫に似合っていたし、可愛かったですね。鵜堂刃衛に心の一方をかけられた時の演技もなかなか見せてくれましたし。
は: そして最後にご主人様のご贔屓と言えばこの方、蒼井優様について一言お願いいたします。
ゆ: まあ演技については何の心配もなしに見てられますが、やはり「この映画一番のミスキャスト」と言われたくらい原作の高荷惠のイメージとは違っていましたね(苦笑。それでも眉をそり落として思い切ったイメチェンをしての熱演、さすがでございました。まあそれはともかく、また早く主演作が見たいのう。

は: というわけでございまして、「るろうに剣心」は佐藤健という役者を得て見事な実写作品になったのではないかと思います。
ゆ: まあ突っ込みどころがないわけではないのですが、最後の鵜堂刃衛との死闘、炸裂する双龍閃を見るだけでもお金を払う価値があるのではないかと思います。

評価: C: 佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)