ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

おとうと

Otouto
はむちぃ: 皆様こん**は、本日の映画レビューは公開されたばかりの山田洋次監督久々の現代劇「おとうと」でございます。というよりも、ご主人様にとっては、
ゆうけい: 久々に蒼井優ちゃんの演技を堪能できる映画ですな、正直申し上げて山田洋次監督のタッチは肌にあわないんですが、仕方無しに見てきました(苦笑。
は: また、国民的監督山田洋次様ファンを敵にまわす様な事を(-_-;)、ではグダグダにならないうちに早速映画紹介に参りましょう。

『2010年、日本、松竹映画

スタッフ
監督・脚本: 山田洋次
脚本: 平松恵美子
音楽: 冨田勲

キャスト
吉永小百合
笑福亭鶴瓶
蒼井優
加瀬亮
小林稔
加藤治子

ストーリー:夫を亡くした吟子(吉永小百合)は、東京のある商店街にある薬局を女手一つで切り盛りしながら娘の小春(蒼井優)を育て、義母の絹代(加藤治子)と3人で暮らしていた。やがて、小春の結婚が決まり、結婚式当日を迎えるが、吟子の弟・鉄郎(笑福亭鶴瓶)が紋付はかまで大阪から現われ、披露宴を酔っ払って台なしにしてしまう。

手一つで娘を育ててきた姉と、大阪で芸人にあこがれながら破天荒な暮らしを送る弟との再会と別れを描く家族ドラマ。10年ぶりの現代劇となる山田洋次監督が市川崑監督の『おとうと』にオマージュをささげ、戦後に生まれ育った姉弟のきずなをバブル景気直前に生まれた娘を通して、現在と今後の日本の家族の姿を映す。主演を吉永小百合が務め、その弟役を笑福亭鶴瓶が好演。笑いと涙にあふれた家族の希望と再生の物語に胸が熱くなる。 
シネマトゥデイより)』

は: 冒頭のシーンとラストシーンが見事にリンクする良く練りこまれた見事な脚本、一つ一つ丁寧に撮影・編集され一分の隙も無いカット割り、安心して見ていられる安定した演技レベルの俳優のキャスティング、そして涙あり、笑いありの観客を飽きさせない演出、「山田洋次監督作品」の完成形とも思わせる素晴らしい映画でございました。はむちぃメ、不覚にも鶴瓶様の最期にはウルウル来てしまいました。

ゆ: 見事な評価文ありがとう、もう付け加える事もないね(笑。でもね、私には正直なところ全然面白くなかった、優ちゃんが出ていなかったらお金出して見た事を後悔してたよ、まあ、彼女が出て無かったら来て無いけどね(^_^;)。

は: そ、そうでございますか、そう言えばご主人様は以前「幸せの黄色いハンカチは本当に名作なのか?」という問題提起をされていましたね。
ゆ: そう、もちろん山田監督は松竹の、と言うより日本映画界の至宝だと思うし、客観的に見て、彼ほど日本映画界に貢献して来た人はいないし、今なお作り続ける作品群もこの作品を含めて全く破綻の無い高レベルの作品ばかりだと思う。だけど、
は: 肌に合わないと?
ゆ: そうなんだよ、万人受けする作品の見本だと思うんだけど、裏返せばあまりにも無難で先の読めてしまうストーリー展開、やや誇張気味のステレオタイプな人物像、笑いの質のカビの映えたような陳腐さが見え隠れするわけで、合わない人には徹底的に合わないんじゃないかね。

は: 今回は医療関係の対照的なシーンがございましたので、それを基にちょっと解説していただきましょうか?
ゆ: そうですね、ネタバレしない程度にやりますと、まず優ちゃんが結婚する相手と言うのが、鶴瓶ちゃん演じるおとうとの社会的位置と対極にあるエリート医師なんだけど、そいつのエリート臭と家庭でのいやらしさは、多くの人が

「エリート医師って、ホントはこんな人間じゃないの?」

って思い描く、半ばコンプレックス混じりの先入観に見事に迎合していると思うんだ。
は: 披露宴での乾杯の挨拶をする医者の台詞にしてもそうでございますね。
ゆ: そして、どうしようもないごんたくれで社会のつまはじき者だったおとうとが最後に辿り着く「みどりのいえ」という、民間ホスピス。そこの職員の皆さんのボランティア精神と心根の優しさ、姉・姪との和解幸せな最期の迎え方、どれをとってもこの映画に期待する観客の求める全てがあるし、

「こういう施設が健全に運営できる社会であって欲しい」

と願う監督のメッセージ性も、悪く言えば

「文句を付ければ人非人のように思われる」

は: 確かに。。。
ゆ: でも、ちょっと考えてみれば、この「おとうと」みたいな人間が癌になって救急車でどこかの病院に運ばれて手術され、胃瘻まで作られて、ホスピスで最期を迎えるまでのお金はどこから出ているんだろう?映画の中で小日向文世が言ってたように

生活保護者の手続きが取られて全額税金でまかなわれる」

んだよ。確かにホスピスに入る金はカツカツかも知れないかもしれない、でも手術費を含めた急性期の医療費はどうだろう?結構凄い金だよ。
は: 勿論やむをえない事情で生活保護を受ける方も多いのでございますが、
ゆ: とは言え、人の迷惑などお構いなし、どっからお金が出てるかなんて考えた事も無し、胃瘻から焼酎を入れてまで酒を飲みたい、ってな人間に税金が払われている事を考えるとへらへら笑って見てられるかい、この医療危機の時代に?生活保護はこのところ右肩上がりで増え続けてるんだぜ。
は: 映画を観にこられる方は、そういう日ごろの憂さや社会の矛盾への憤りを一瞬でも晴らすために来られるんですから、社会派の監督ばかりになっても困りますよ。
ゆ: そう、その通り。だからこそ山田洋次監督のような方は日本映画界に必要なんだよ。そう言う意味でこの映画は傑作だと思うし、冒頭の蒼井優の回想シーンで「男はつらいよシリーズ」を茶化したりするあたりなんか見ても、本当にいい人なんだろうなと思う。あとは

「肌が合わない」

だけなんだよ(苦笑。

は: さてさて、難しい話はさておきまして、俳優の皆様方でございますが。
ゆ: 蒼井優ちゃん、良かったですよ。山田映画でも監督の求める演技を完璧にこなしていましたし、表情一つで感情を表現できる天才振りも健在でした。山田監督作品に準主役級で起用されて、彼女のステイタスもまたまたうなぎのぼりでしょうけれど、やっぱり彼女主演で斬新な映画を私は望みたいですね。

は: 笑福亭鶴瓶様は以前ご紹介した「ディア・ドクター」でブルーリボン主演男優賞をお取りになりましたが、この映画でも素晴らしい演技でございました。
ゆ: あまり甘やかしちゃいけないと思いますけどね、インタビューで彼自身が語っているように、関西にはこの様な人物を地で行く芸人がごろごろしてるわけで、彼にとっては苦も無く演じられる役柄だったでしょう。
は: 鶴瓶様の偉いところはそのような破滅型芸人と自分の立ち位置を明確に区別しているところでございましょう?
ゆ: それには若い頃の失敗と彼を叱ってくれる人間がいたからこそなんですよ。冒頭に出てきたアフロヘアの頃は彼だってあんな破滅型の人生を歩む可能性だってあったんですよ。まあ、だからこそのあの演技力なんでしょうけど、芸人にあまたの男優が負けてるようじゃ日本の映画界の未来は暗いですよ。

は: 息の長い名女優吉永小百合様の姉役も深く心に残る好演でございました。
ゆ: そうですね、ただ吉永さんの難しいところは、あくまでも主役を張らないといけない所でしょうね。以前「「北の零年」で主役を張る年齢ではないと厳しい事を週刊文春に書かれておられましたが、今回もそうですね。市川昆監督が岸恵子をキャスティングしたのに比べると、蒼井優の母をやるにはやっぱり無理がありますよ。彼女を誰が何時助演に、そして高齢者役にキャスティングできるのか、本当に難しいですね。
は: 王貞治長嶋茂雄のお二人の引退はご自身でしか決められなかったように、いつかご自身で、引退か助演に回るか判断される時が来るのではないでしょうか。で、今回姉役をやるとすれば誰が適任だったと思われますか?
ゆ: 優ちゃんの母をできるだけの美貌でいくと、黒木瞳さんあたりでしょうね(笑。でも原作に忠実に大阪出身の女で鶴瓶の姉貴という観点から見ると藤山直美さんあたりがやると凄く面白い絡みが見られたと思いますよ。ちょっと花には欠けますけどね。

は: ということで、ご主人様はかなり厳しいご評価でございますが、本当に良くできた名作でございます。皆様どうぞ映画館に足をお運びくださいませ。
ゆ: では採点参りましょうか。

はむちぃ: 88点
ゆうけい: 55点

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