ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ケルティック・ウーマン@大阪

ニュー・ジャーニー~新しい旅立ち~
 「リバーダンス」のミュージカル・ディレクター、David Downesが仕掛けた女性ケルト音楽ユニット「Celtic Woman」のコンサートを観て来ました。ファーストアルバム「Celtic Woman」は荒川静香がチョイスした「You Raise Me Up」で有名になり大ヒットしましたが、今回はセカンドアルバム「A New Journey」をひっさげての来日です。4人の女性ボーカリストの織成す清らかな歌声とフィドル奏者をはじめとするケルト楽器の音色を楽しんできました。

Celtic Woman  "A New Journey" Tour

Place: Osaka Kosei-Nenkin Kaikan Dai-Hall
Time: Nov.29th, 2007 19:00-21:00

Music Director
David Downes

Celtic Woman:
Chloe (vo)
Orla (vo, harp)
Lisa (vo)
Lynn (vo)
Mairead (fiddle)

Setlist

ACT1   
1. The Sky And The Dawn And The Sun (Chloe/Orla /Lisa /Lynn /Mairead)
2. Caledonia (Lisa)
3. The Butterfly (Mairead)
4. Danny Boy (Lynn)
5. Someday (Chloe) 
6. Siuil A Run (Walk My Love) (Orla)
7. Orinoco Flow (Lisa/Orla/Lynn)
8. Granuaile's Dance (Mairead)
9. Somewhere (Chloe/Orla /Lisa /Lynn /Mairead)
10. Scarborough Fair (Lisa/Orla)
11. Vivaldi's Rain (Chloe)
12. Over The Rainbow (Chloe/Orla /Lisa /Lynn)
13. Mo Ghile Mear (Chloe/Orla /Lisa /Lynn /Mairead)

ACT 2
14. Dulaman (Lynn)
15. Newgrange (Orla)
16. The Soft Goodbye (Chloe/Lisa/Lynn)
17. The Last Rose Of Summer (Chloe/Lynn)
18. The Last Rose Of Summer (Mairead)
19. Nella Fantasia (Chloe)
20. At The Ceili (Chloe/Orla /Lisa /Lynn /Mairead)
21. Shennandoh/The Contradiction (Mairead)
22. Carrickfergus (Osla)
23. The Voice (Lisa/Mairead)
24. Sing Out! (Chloe/Orla /Lisa /Lynn /Mairead)
25. You Raise Me Up (Chloe/Orla /Lisa /Lynn /Mairead)
28. Finale (Chloe/Orla /Lisa /Lynn /Mairead)
27: Spanish Lady (Chloe/Orla /Lisa /Lynn /Mairead)

 David Downesはこのグループを固定したユニットとは考えていないようで、アルバムとはメンバーが変更になっていました。ゲール語も歌えてアイリッシュトラッドを主なレパートリーとしていたMeavが抜けて、新たにLynnという女性がこの公演には参加しています。Lynnもリバーダンスのメンバーとしてオリンピックのセレモニーでも歌った事がある実力者だそうです。またセカンド・アルバムに正式メンバーとしてクレジットされている、「白い巨塔」の「Amazing Grace」が大ヒットした”ピュア・ヴォイス”Hayleyは来ていませんでした。

 よって今回のケルティック・ウーマンは4人のボーカリストと一人のフィドル奏者の5名でした。バッキングはコーラスが男女4人ずつ8名、勇壮なパーカッションが二人、パイプ・ホイッスル奏者、ギター、ベース、キーボードが一人ずつでした。キーボードはダウンズを含めて二人がクレジットされていますので交替で弾いていたのでしょう。ケルト音楽ということでバイロン、パイプ、ホイッスルといったケルト楽器の見せ場も盛り沢山に織り込まれていました。やはりこういうライブではパーカッショニストが大活躍しますが、本公演もその例に漏れずダブルパーカッションで派手に楽しくやっていました。

 公演は二部構成でMC一切なし、アンコール無しという完璧なショウ構成でした。衣装も第一部はChloeだけが少し青みがかったグレイのドレスですが他の4人は白いドレスでピュアネスを表現し、第二部では各人が異なった色のドレスで個性を主張し、という凝り様でした。バックメンバーは基本的に黒で彼女達との対比を際立たせています。

 第一部は主にファーストアルバム、第二部は主にセカンドアルバムから選曲されており、各人のレパートリーがバランス良く並べられ、最後は彼女達の大ヒット曲「You Raise Me Up」からフィナーレへなだれ込むというよく考えられた構成でした。なお、販売されていたプログラムやHPに記載されているセットリストとは異なった部分があり、公演毎に少しずつ変更をしているものと思います。

 さてさて、肝心の5人のインプレッションに移りましょう。

 先ずは一人だけドレスの色が違うなどリーダー的役割と思われるのが、Chloeです。4人のピュア・ヴォイスの中でもとりわけ優雅で柔らかい声質をもっており、家内もあの人の声が一番柔らかくて素敵、と感動していましたし、帰路あちこちから

「あの一番太った人の声が一番良かった」

という声が上がっていました。私が言ったのではありません、念のため(^_^;)。確かに豊かな体躯ならではの発声なのかもしれませんね、B&W801Dといったところでしょうか(笑。勿論色々な歌でその真価を発揮していましたが、特に声楽の素養が十分あると見受けました。だからクラシック的なナンバー「ヴィヴァルディの雨」「庭の千草」、そしてサラ・ブライトマンも取り上げたモリコーネ・ナンバー「ネラ・ファンタジア」などが素晴らしかったです。

 続いてLisaですが、彼女が一番透明で質感の高い声を持っており、ミュージカル・スターらしいボーカリストですね。だから「カレドニア」「スカボロ・フェア」の独唱も素晴らしいですし、終盤「ザ・ヴォイス」「シング・アウト」「ユー・レイズ・ミー・アップ」と至るクライマックスを構成するナンバーでも中心的な役割を果たしていました。

 個人的には「ユー・レイズ・ミー・アップ」がどういう構成で歌われているのか興味があったのですが、先ずOrlaで始まり、Chloeが次いで、やはりサビはLisaが取るという展開でした。

 その「ユー・レイズ・ミー・アップ」で先陣を切るOrlaですが、彼女にはハープ奏者と言う一面もあります。今回も「スカボロ・フェア」をはじめ数曲でその美しい調べを聴かせてくれました。もちろんヴォーカリストとしても一流で、特にゲール語で歌えるという強みもあり、以前ザ・チーフタンズ来日公演元ちとせさんで聴いた「シューリ・ルー」もさすが本家という感じでした(^_^;)。

 新入ボーカリストLynnも前述したようにリバーダンスにも参加していたくらいで細身ながら歌唱力は十分、声質もLisaに近い感じがしました。アイリッシュ・トラッドの定番中の定番である「ダニーボーイ」も心に沁みる歌唱を披露してくれました。

 この4人のハーモニーの美しさも特筆ものでしたが、白眉は4人だけのアカペラで歌われた「虹の彼方に」でした。欲を言えばマイクを外して欲しかったですけどね。

 さて、最後、この人抜きにケルティック・ウーマンは語れません、フィドル奏者のMaireadです。マレードと発音するようです。ヴォーカルの4人が静とすれば、彼女は動の部分を一人で受け持っていました。動き易いように切れ込みを入れたドレスの裾からカモシカのような足を覗かせながら軽やかにステージを駆け巡ります。まさに3曲目の「バタフライ」の様でもあり、コケティッシュな笑顔と仕草はアイリッシュ・フェアリーの様でもありました。いやあ、おじさんすっかり魅了されちゃったなあ(笑。

 もちろんヴァイオリンの演奏も素晴らしい、というかあれだけ動き回ってスピンしてよくミストーン無しに弾けるものです。ケルト音楽のフィドルとクラシックのヴァイオリンの違いはヴィブラートの有無だそうですが、彼女は両方の素養があります。それが一番見事に披露されたのが「シェナンドー / コントラディクション」の流れでしょう。この公演で初めて動きを止め、ヴァン・モリソンチーフタンズビル・フリゼールライ・クーダーキース・ジャレット等の名演でも有名なアメリカのトラッド「シェナンドー」を技巧を尽し切々と奏でます。そして一転してこれがフィドルだと言わんばかりに賑やかに楽しく弾きまくる、ファーストアルバムにもボーナス・トラックとして収録されていた「コントラディクション」。本公演での彼女の最大のハイライト・シーンだったと思います。

 敢えて言えばアイリッシュ・ダンスが無かったのが少し残念でしたが、それは来年またやって来る「リバーダンス」を見てくれ、ということなんでしょうね。

Sing Out!Sing Out!Sing To The World!
Sing Out!You Will Be Heard.
Sing The Message And The Word!
Sing A New Song To The World!Sing Out!Sing To The World!