ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

If On A Winter's Night... / Sting

If on a Winter's Night...
 冬はX'mas企画アルバムのシーズンで、人気ミュージシャンにはオファーが大抵あります。勿論質の高いX'masアルバムを作る人もいますが、、中にはオファーを逆手にとって冬をテーマにした優れたオリジナルアルバムを作ってしまう実力者もいるわけで、例えば去年のEnyaの「And Winter Came...」がそうでした。
 そして最近の私のヘビー・ローテーションがStingのこのアルバムです。クラシック・ファンは驚かれるかもしれませんが、彼はなんと現在ドイチェ・グラモフォンと契約しています。DGでの第一作「Songs From The Labyrinth」はなんとリュート奏者ダウランドの作品集でした。本気でクラシックをやってるのは凄いなと思いましたが、余りにもイメチェンし過ぎて面食らった方も多いと思います。そして第二弾となる本アルバムのテーマは

『時代を超えてイギリス諸島で歌い継がれてきたわらべ歌、子守歌、そしてクリスマス・キャロルの数々。コンセプトは冬。』

1. Gabriel's Message 
2. Soul Cake 
3. There is No Rose of Such Virtue 
4. The Snow it Melts the Soonest 
5. Christmas at Sea 
6. Lo How a Rose E'er Blooming 
7. Cold Song 
8. The Burning Babe 
9. Now Winter Comes Slowly 
10. The Hounds of Winter 
11. Balulalow 
12. Cherry Tree Carol 
13. Lullaby for an Anxious Child 
14. Hurdy Gurdy Man 
15. You Only Cross My Mind in Winter 
16. Blake's Cradle Song (Bonus Track - Deluxe Version Only) 

 詳細はSting自身がライナーノートに記していますが、全曲実にしっかりと歌いこんでいて感心します。一曲目のクリスマス・キャロルの名曲「Gabriel's Message」から早くも濃厚なケルトっぽい雰囲気が漂い、クリスマスの時期に貧しい子供たちが家の前でクリスマスキャロルを歌うお礼にごちそうかお金をもらうというイギリスの伝統行事を歌った“A Soalin”をベースにしたと思われる曲「Soul Cake」は実に楽しく軽快に、ニューカッスル・バラードの「The Snow it Melts the Soonest」、パーセルの『妖精の女王』からの佳曲「Now Winter Comes Slowly」、シューベルトの『冬の旅』の終曲「辻音楽師」をベースにスティングが英訳&編曲をおこなった「Hurdy Gurdy Man」等々のクラシックの数々はベルカントこそ無いもののしっかりと歌詞をかみしめる様に歌いこみます。それらの名曲に混じってスティングのオリジナル曲2曲「The Hounds of Winter」「Lullaby for an Anxious Child」も全く違和感なく溶け込んでおり、さすが稀代のコンポーザーだけの事はあります。

 それにしても感心するのがStingの歌唱力。今更何をと言われるかもしれませんが、ポリスのデビュー時には、彼が将来これ程コクのある芳醇な声質を以て説得力のある歌唱をするシンガーになるとは思ってもみませんでした。ちょっと古すぎますか(^_^;)、まあ確かに名作「シンクロニシティ」からソロ名義の傑作を連発した80年代に大きく成長したことは明らかですが、年輪を重ねるに連れ、ウィスキーが樽の中で熟成されるように更に上手くなったなあと思います。去年のポリスReunion Tourでは逆に年齢を感じさせないパワーも見せ付けていましたけどね。

 さて、楽器の方ですがさすがに今回は前回ほどシンプルではなく、コンサートでお馴染みのドミニク・ミラーは勿論、クリス・ボッティ(トランペット)、ダニエル・ホープ(ヴァイオリン)も参加しています。また先ほど述べたように、ケルト楽器であるフィドルスコティッシュ・ハープ、バグ・パイプなども加わり、英国・アイルランド地方の冬の夜を髣髴とさせる上質な出来上がりとなっています。もちろんポリス時代のロックのビートやソロ時代に傾倒していたジャジーな雰囲気は望むべくも無い地味なアルバムではありますが、冬の夜長にはじっくりと楽しめる一枚だと思います。

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