ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Pearl; Legacy Edition / Janis Joplin

Pearl
は: おや、ご主人様、CD聴きながら泣いておられるではありませんか。
ゆ: おっ、はむちぃ君、風邪から復活したようだね。そうなんだよ、不覚にも涙が止まらんのだ。
は: 一体どうされたのでございます?
ゆ: 話せば長いことながらーー
は: 聞けば短い物語、でございますか、おつき合いさせていただきますですよ。皆様もよろしければおつき合いくださいませm(__)m

ゆ: 時は1970年10月4日、アメリカで一人の女性がストリート売りの質の悪いヘロインのオーバードーズでこの世を去ったのだ。彼女はジャンキーアルコール依存症で生活も乱れておったようじゃ。
は: ベトナム戦争やらヒッピームーブメントやらで当時なら珍しくもない話でございますね。まあモルグにぶち込まれていても不思議のないようなケースでございますね。
ゆ: ところが、彼女には一つだけものすごい才能があったのだ。それが歌うことだったから事は一大事になり、世界中をそのニュースは駆け巡ったんだな。
は: ははぁ、それが今聴いておられるジャニス・ジョプリンなのでございますね。
ゆ: そういうこと。その頃シンガーとしては彼女、キャリアのピークに達しつつあってね、Full Tilt Boogieという凄腕のミュージシャンを集めたバックバンドで音が固まってきて、新しいアルバムを録音していた真っ最中だったのだ。結局一曲だけジャニスが吹き込めなかった「Buried Alive In The Blues」を含めて彼女の死後、そのアルバムは発表されたんだが、
は: それが涙が出るほど凄いアルバムだったんでございますね。
ゆ: まあまあ、早とちりしないでくれたまへ、はむちぃ君、先は長いといったでしょ。

   このアルバムは「Pearl」と言う題名で、これがまた、古今東西稀に見る傑作だったから、もう大変。彼女は伝説と化してしまったんだな。ちなみに題名は彼女のニックネーム。死の直前当たり、彼女は自分の事をそう呼ばれる事を好んでいたそうだ。「Rose」と言う名前も候補に挙がっていたんだが、
は: 存じております。ベット・ミドラー渾身の演技でジャニスを演じた「Rose」でございますね。
ゆ: そうそう。それくらいの伝説的ロック・クイーンになってしまったわけじゃ。だから死後もあまたのアルバムが出ているんだが、In Concertなんか鳥肌が立つくらい凄いライブアルバムじゃ。どうしてオラシオさんの企画に出さなかったんだろう(涙
は: ご主人様、話がそれております(-_-;)。で、PearlはもちろんLPで持っておいででございましょ。
ゆ: あたり前田のクラッカーじゃ。
は: ご主人様、いくら古い話とはいえ、白黒テレビ時代のギャグをかまさないで下さいませ。
ゆ: そうそうその頃の私は厨房じゃったから、ジャニスのしゃがれ声でちょっと柄の悪そうな英語に憧れてね、習ったばかりの単語や熟語なんか出てくると嬉しかったぞ。「 Me And Bobby McGee」の

Freedom is just another word for nothing left to lose

とかね。Mercedes Benzを「まーしーでぃ~ず・べんず」と発音するのもこのアルバムに教えてもらったし。
は: その割にはこの頃聞いておられませんですね。

ゆ: そこなんだよ、はむちぃ君!!
は: わっ、びっくりした。私病み上がりでございますゆえ大声を出さないでくださいまちぃ(>_<)
ゆ: すまんすまん、実はこのアルバム、再販ものを買ったせいなのかどうか、ぺなぺなのへなちょこ音質で今のシステムではなかなか聴く気にならないんだよ。まだI Got Them Ol' Kozmic Blues Again, Mamaの方が良く聴くかな。
 ところが、今回発売されたこのPearl:Lagacy Edition、恐ろしく音質が良いんだな、マスターテープにはこれだけの音が入っていたかと思うと嬉しいやら悔しいやら。これで聴くとBig Brother And Holdding CompanyとFull Tilt Boogieの演奏力の差が否応なくわかってしまうぞ。
は: それで泣いておられたんでございますか?
ゆ: まだまだ、早とちりするでない、はむちぃ君。
   実はDisc 1にはボーナス・トラックが6曲入っているんだけど、その楽しそうなレコーディングの様子を聴いて、ロードマネージャーJ.B.Cookeのライナーを読んで、そして最後の今回初公開「Pearl」という曲を聴くとね、ぐっとこみ上げてくるものを押さえきれなくなるんだ。
は: これは演奏だけですね、それも切なくて心に沁み入るような演奏でございます。
ゆ: そう、録音日を見てくれたまえ、10月10日となっているからジャニスの急死後Full Tilt Boogieが彼女を悼んで録ったんだろうな。心情を慮るに、その悲憤察するに余りある状況であったろう彼等が、こんな曲を作っていたとは本当に驚いた。その演奏は押さえ切れない悲しみに満ちているのに素晴らしく美しい。それだけにその切なさがこちらの心に刃物のように突き刺さってくるんだよ、どうしてこんな良い曲を今の今までお蔵入りさせていたんだろう。

は: なるほど、そういうことでございましたか、ところでこのアルバムは2枚組みでございますね。
ゆ: そうそう、Disc 2は1970年6-7月にナダで行われた伝説のロック・フェスティバル、The Festival Express Tourからのライブを編集して収録してるんだ。先ほどのIn Concertに入っていた曲もあるけど、未発表曲もあってジャニスファンには嬉しいおまけになってますな。
は: 未発表ではどの曲が良かったでございますか?
ゆ: ウィニペグで演奏した「Maybe」が良いねえ。声の調子が抜群だし、バックのサポートも完璧に近い。これを聴くとIn Concertに入ってる曲の多くはドラッグやら酒やらで体調は万全でなかったんじゃないかと思っちゃうね。
 また、これは未発表ではないらしいんだけど「Little Girl Blue」は自分にとっては初出だから嬉しかったよ。
ゆ: 先ほどおっしゃられてたKozmic Bluesに入ってるスタンダードのカバーでございますね。
は: そうそう、彼女のカバー曲と言えば「Summertime」が圧倒的に有名だけど、こっちの方が断然良いな。

は: ところで、このアルバムAMAZONから

入手不可能ですでキャンセルさせてください

と言うメールが来ていたんじゃあございませんか?
ゆ: おっ、言い忘れておりました。その通りでございます。半分あきらめてたんだけど、先日マーカス・ミラーのライブの前にJEUJIAで偶然輸入盤が置いてあるのに気が付いて即ゲットいたしました。皆様も偶然目にされましたら是非買いましょう。きっと宝物になると思いますよ。