ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Mint Tea / 南 里沙

Mint Tea
 先日「こんちはこんちゃん」という関西の名物ラジオ番組に生出演されていて、

この人は凄い!

とすぐにアマゾンに注文した、クロマティック・ハーモニカ奏者南里沙さんのデビュー・アルバム「Mint Tea」です。予約注文のBilly Bat 12とセットで注文したもんでやっと今頃届きました。

 「世界の数々のコンクールで優勝し、アジアでは無敵!」と紹介されていましたが、こんな童顔のかわいい方だったとは驚きです。このカワイイ新鋭の、確かな技術に裏打ちされた爽快な演奏は、ハーモニカというクラシック畑ではマイナーな楽器に新たな地平を切り開きそうな気がします。

 録音も中庸を心得た好感の持てる、そして聞き飽きないミキシングがされていると思います。ハーモニカの音が立っていて、他の各楽器のバランスもいいですし、なかなかの好録音だと思います。

1. Mint Tea 
2. For All We Know「ふたりの誓い」
3. Three Views Of A Secret
4. Cello Suites 1st Movement BWV1007 ~Prelude~ 
5. マリー橋を降りて 
6. Always And Forever   
7. Toccata In C Major BWV564 ~Adagio~ 
8. Blue Topaz   
9. Mint Tea ~Kitchen Mix~
10. Move Over   
11. Cafe 1930   
12. Moonlight Serenade
13. Treasure of Life ~命どぅ宝~ (Bonus Track) 

『 クロマチック・ハーモニカ誕生100周年の記念すべき年に発表される、美しすぎるクロマチック・ハーモニカ奏者、南里沙のデビュー・アルバム。様々な楽器編成をバックに、新旧・有名無名を問わず、優れた楽曲をとりあげて演奏。クロマチック・ハーモニカの新境地を魅せる1枚。 彼女の音楽性を余すところなく伝えるため、ジャンルを全く意識することなく、 ひたすら優れたメロディーのみに拘って幅広いレパートリーを収録。 カーペンターズからパットメセニー、そしてバッハにいたるまで、選りすぐりのメロディー集。 クロマチック・ハーモニカが奏でるメロディーの魅力を、きっと皆様に感じていただける作品。 正にクロマチック・ハーモニカ奏者「南里沙」の名刺がわりのアルバム!

AMAZON解説より) 』

 一曲目の「Mint Tea」がこのアルバムのベストテイクだと思います。ピアニスト丸山和範南里沙のために書き下ろしたオリジナルだそうですが、ハーモニカの魅力を余すことなく伝え、かつ弾むような楽しさに満ちた曲。解説にある「可愛らしくてフレンチなピアソラ」というテーマにぴったりのピアノ、ベース、バンドネオンという楽器編成、編曲も見事です。

 その他には溝口肇のオリジナル曲「マリー橋を降りて」もとても雰囲気のいい曲です。もともとオーボエ奏者宮本文昭のために書き下ろした曲ですが、ハーモニカのために書き下ろしたと言われても納得してしまうほど、ハーモニカにマッチした流麗なメロディーラインとその音色に聞き惚れてしまいます。

 デビュー盤でまずは一般受けを狙ったためか、その他の殆どの曲は広いジャンルからのカバー曲で占められています。カーペンターズの「二人の誓い」、ジャコの「Three Views Of A Secret」、パット・メセニーの「Always and Forever」、バッハのチェロ組曲トッカータピアソラの「Cafe 1930」、グレン・ミラーの「Moonlight Serenade」、更にはジャニス・ジョプリンの「Move Over」と、節操がないなと思わせるほど多種多彩。

 それぞれにマッチする編曲がきっちりとされていますが、パットの曲などはハーモニカの音がパット独特のギターのように聴こえてくるから不思議。ジャニスの曲はロックっぽく、ハーモニカの音色に思い切ったディストーションをかけていますが、残念ながらあまりこの楽器に合っているとは思えないですね。ちょっと意気込みが空回りしている感じがしました。ライブで聴くと印象が違ってくるかもしれないですが。

 最後にボーナストラックとして入っている「Treasure Of Life」は2013年1月にブルガリアの首都、ソフィア市でのコンサートでアンコール曲として披露されたそうです。プロデューサー石田氏の解説に曰く、

丸山和範作・編曲のアダージョ。南里沙が奏でる清廉なメロディーは国立ソフィアフィルのメンバーと共に気持ちを一にして命の尊さを訴えた。本作の締めくくりにファンの皆様にもその感動を共有していただければ幸いに思う」

その思いが伝わってくる心に染み入るような美しく清澄な曲です。

 以上、普段あまりメイン楽器として思い浮かばないクロマチック・ハーモニカという楽器の未来を感じさせるアルバムで、彼女のこれからの活躍が楽しみです。

 最後にYoutubeに南さん自身がアップされている桑名正博の名曲「月のあかり」の演奏を埋め込んでおきますので是非聴いてみて下さい。