ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Avanti!/ Giovanni Mirabassi (1)

Avanti!
AVANTI! Giovanni Mirabassi 澤野工房(SKE333015)

Giovanni Mirabassi (p)
recording date: May 14th, 15th, Nov 3rd, 2000

1: El Pueblo Unido James Sera Vecido
2: Le Chant Des Partisans
3: Ah! Ca Ira
4: Le Temps Des Cerises
5: Hasta Siempre
6: Je Chante Pour Passer Le Temps
7: Sciur Padrun Da Li Beli Braghi Bianchi
8: El Paso Del Ebro
9: A Si M'Bonanga
10: La Butte Rouge
11: Addio Lugano Bella
12: Johnny I Hardly Knew Ye
13: Bella Ciao
14: Imagine
15: My Revolution
16: Plaine,Oh Ma Plaine

はむちぃ: さて皆様大変お待たせいたしました、今回より3回に渡り「ゆうけいの月夜のラプソディ」200000ヒット記念企画をお送りいたします。お題は200001番を踏んでいただきましたk1xv1x様のリクエストでジョバンニ・ミラバッシ様のソロ・ピアノ集「AVANTI!」でございます。なお、御名前が長うございます故、以後はGM様と略させていただきます。
ゆうけい: 皆様こん**は、はむちぃ君前説ありがとう。しかしGMとは、なんかトヨタに抜かれそうになっている某大企業を連想しますね、「GM必死だな」みたいな(笑。
は: ご自身がライナーノートの中でそう略されておりますゆえ問題ございませんでしょう(-.-)(ボソッ、それよりご主人様、またまた長丁場でございます故、ボケは無しでさっさと参りませんと。
 さてこのアルバム、GM様の初ソロアルバムでございますが、なんと

「世界中の革命歌、反戦歌、或いは民衆の歌の私的なコレクション」

という珍しい構成でございまして、豪華なブックレットには18-20世紀の重要な政治的な写真と共にGM様の思いが記されてございます。
ゆ: GMはイタリア人なので主文は伊太利語なんですが、幸い英訳がついております。いやあホッとしたなあ、伊語だけだとどうレビューしたもんやら途方に暮れるところだったよ(汗。

は: というわけでさっさと参りますが、澤野工房様の常で堅牢かつ立派なデジパック仕様でございます。おまけに今回は先程述べましたように豪華ブックレットが付属しております。
ゆ: マーラー五番勝負で随分強くなったのう、はむちぃ君や('_')(遠い目)、というフェイクはさておき、本当に丁寧な作りですね。厚手の上質紙を用いてさながら歴史写真集の趣がございます。これで2500円は好事家の皆様には安く感じられるのではないでしょうか。

は: 写真集の事は後程検討する事にいたしまして、早速針を落としてみる事にいたしましょう。
ゆ: CDですから針を落としちゃイケませんな、はむちぃ君(^_^;)、でもこの写真集を見てると本当に古いSPに針を落として音を出したくなる雰囲気があるよね。
は: 失礼いたしました、さて一聴いたしますに流麗な演奏でございますね。ジャズと言いますと独特のタイム感覚やシンコペーション、不協和音、ブルーノート音階等を多用したりするものですが、そういう感覚がこのアルバムには希薄でございますね。
ゆ: キース・ジャレットが「Facing You」あたりでソロ活動を始めた頃を思い出しますね。その後「ソロ」や「ケルン」などに発展していくにつれ

「これはジャズではない」

という批判が巻き起こりましたが、もうあれから30年以上の歳月が流れていますし、こういうソロピアノも今は素直にジャズとして受け入れていいんじゃないでしょうかね。ここで聴けるGMの演奏の肌合いは、敢えて言うとECMあたりを源流とする

ヨーロピアン・ジャズ

というカテゴリーなんだろうなと感じます。
は: 左手の和音、右手の主題の単純なリフレインから始まり、徐々に展開していく流麗な分散和音の音粒の微粒子感、切なさが印象的なメロディライン、Silence Between Notes等々キース様が確立されたソロ・インプロのエッセンスのようなものが脈々と受け継がれているようですね。
ゆ: まあ、もういつまでもキースばかりにこだわらなくていいとは思いますけどね。特に今回は「元歌」があってそれに色付けをしていくところがあの頃のキースとは全く違うアプローチですよね。
は: 随所に聴き慣れた旋律が出てまいりますから、飽きずに最後まで聴き通せますね。
ゆ: 歌の性格上私より一世代上の全共闘世代には涙モノじゃないですか(笑。まあ冗談はともかく、革命歌が多いにかかわらず本当に旋律は美しいですね。キース的な演奏だけでなく、ビル・エヴァンスの様なタッチも感じますし、ジャズのみならずラベルドビュッシー等の印象派を連想させるようなフレーズもありますし、はむちぃ君が言うように退屈しませんね。
は: 確固たるテクニックをお持ちなのが良くわかります。
ゆ: 単純にテクニックということだけで言うと、ジャズにしてもプログレにしてもヨーロッパには恐ろしいほどのテクニシャンがゴロゴロいますよね、さすがクラシックの聖地ではあります。でもGMの演奏にはそれ以外のサムシング、人の心に訴えかけてくるエモーショナルな要素がありますね、そのあたりがさっすがイタリア、

ラテンの血が騒いだの」(by未知やすえ姐さん)

は: ちょ~~~っと待~ったりぃぃぃぃ~な~、未知師匠は河内の出でございます
(--〆)
ゆ: ちっちゃい舌を思いっきり巻きましたな、はむちぃ君(^O^)

は: ボケてる暇はないんでございますご主人様(怒。さっさと次へ参りましょう、そのエモーショナルな要素の源泉はGM様ご自身が語っておられますように、元歌へのシンパシーでございましょう。
ゆ: いよいよブックレットについて語らねばなりませんね。
は: それぞれの曲に一枚ずつその曲に縁りのある報道写真が添えられております。唯一の例外が15の「My Revolution」なのですが、
ゆ: 小室哲哉だから?
は: 「わ、か、り、はじめたマ~イレボリューション ♪」って、ち・が・い・ま・す!渡辺美里様の歌ではございません、GM様のオリジナルでございまして写真の代わりにこのアルバムに関しての重要なステートメントが掲載されているのでございますっ!

ゆ: 結構ノってるやないの、はむちぃ君(^_^;)、いや、ごめんごめん。この所信表明を読みますと彼が革命やパルチザンなどの歌に感動したのは

「歌わねばならない切羽詰った状態」

において産まれた曲の真の強さに感動したからだと言う事です。さて、彼が取り上げている歴史的事件とはどのようなものなのでしょうか、ぱらぱらとめくっているだけではランダムで分かりにくいですな
(?_?)。
は: そうおっしゃるに違いないと思いましてはむちぃめ、写真を年代順に整理して年表を作ってまいりました。

1789年5月: フランス革命、(イラスト) [3] 
1871年  : パリ・コミューン、モンマルトルの大砲 [4]
1870年代  : ミハイル・アレクサンドロヴィッチ・バクーニン [11]

1915年9月: 第一次世界大戦シャンパーニュ地方バポームの丘の攻防戦 [10]
1930年代 : イタリアファシストデモ [13]
1938年2月: スペイン市民戦争、エブロ川の戦い [8]
1942年  : 第二次世界大戦スターリングラード包囲戦でのロシア軍兵士 [16]
1944年8月: 第二次世界大戦フランスのパルチザン [2]
1945年  : ルイ・アラゴン [6]
1949年  : シルヴァーナ・マンガーノ(映画「苦い米」) [7]

1965年  : コンゴチェ・ゲバラ [5]
1967年  : ペンタゴン前の平和主義者のベトナム反戦デモ銃口に花を挿すデモ参加者、[14]
1973年  : クーデター直前のアウグスト・ピノチェト [1]
1981年  : ハンガーストライキに入ったシン・フェイン党員受刑者に祈りを捧げるため刑務所の前に集まった民衆を制止する警察のバリケードライン [12]
1989年9月: 南アフリカケープタウンアパルトヘイト平和大行進、[9]

ゆ: おおっ、はむちぃ君、それでこそ我が家の筆頭執事じゃ!こうしてみるとやはりGMは欧州人ですね、自分が生まれるより前の時代の歌は伊仏西露を中心とした欧州の曲で占められております。
は: 子供の頃から聴かされたり教えられたりした曲なのでしょうね。同時代を生きて能動的に選べるようになると、中南米やアフリカなど第三世界のものも増えてまいります。
ゆ: まさに「映像の世紀」を観ているようですね。二十世紀を振り返るいい機会ですから、次回からはそれぞれの曲について検討してまいりましょう。

は: おおっ、いつに無い綺麗なまとめ方でございますっ、ご主人様。困難な作業ではございますが頑張ってまいりましょう!
ゆ: 実は一番苦労してるのは記事冒頭の写真作りだったりして(笑。
は: 相変わらずしょうもないところに凝るんですから(ーー;)。。。ところでご主人様、k1xv1x様のリクエストにも関わらず、重要な要素が抜けております事に、はむちぃメ今気が付きました。

ゆ: へ?(゜o゜)、総論はこんなもんで十分じゃないの?
は: ずばり、「オーディオファイル」としての視点に欠けておりますよ(-_-)。
ゆ: そ、そうであった、ハンドル名からしAyre使いのk1xv1xさんのシステムで聞きたいものじゃ、SPもSystem 7をお使いらしいしのう(羨。
は: ご主人様、自分のシステムではどうなのかと言う視点が欠けております(ーー;)。
ゆ: そ、そうだな、う~ん、うちのシステムでピアノを云々するのは一番苦手なんだけど、一つだけ感じるのは音量を上げるほど感動できる音になっていくんですよね。
は: 確かに音量アップとともにグランドピアノ特有の余韻や共鳴が段々原寸大に近づいていく気がいたします。まずは良識ある録音と言うことでしょうか、なおSKETCHレーベルはあまり聞き馴染みがございませんがフランスのレーベルだそうでございます。では皆様、次回よりの各論をお楽しみにお待ちくださいませ。