ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Accuphase C-3800 導入記(2)基本特性確認&ツッコミ編

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 さて、具体的なインプレに入る前にC-3800の特徴や基本性能について、実際に見て聴いて触って感じた実感を交え、適宜ツッコミも入れながらおさらいしておきます。

 詳細はアキュフェーズの公式HPのPDFをご参照いただけると幸いですが、まず基本的な諸元を確認しましょう。

電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 55W
最大外形寸法 幅 477mm × 高さ 156mm × 奥行 412mm
重量 24.8kg

 まず外形寸法はパーシモンの天板カバーが薄くなった分だけC-290Vより若干ですが小ぶりになりました。薄くなった点については「さらばAccuphase C-290V」の記事のkoyamaさんのコメントにもありますように、部材の高騰が大きい要因でしょう。ま、拙宅の場合、C-290Vがラックキチキチだったのでかえってセッティングに自由度が増し、好都合ではあります。

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 そしてもう一つの要因として、放熱処理が必要という面も無視できなかったのだと思います。上記写真は天板の左右両側にある大きな放熱口です。

パワーアンプかよ!

と突っ込みを入れたくなりますが、実際C-290Vの倍の55Wという大消費電力、しかもルーツサウンドさんの情報によりますとそれが

純A級動作

してるそうです。って事は。。。単純計算ですがHoteiさんご使用の

A-20V 二台分じゃん!

。。。電気代が心配です(大汗。下手なクリーン電源だと持ちません。。。これも今後の課題。てな下世話な話は置いといて、実際発熱するのは両側に位置するAAVAのユニットだそうです。
 どれだけ熱くなるかな、としばらく使い続けて手をかざしてみましたがほんのり暖かい程度でした。やけどする事はなさそうです。

 そしてC-3800オーナーが等しく嘆息されるのがその重さC-290Vも相当重かったのですがそれでも23.8kgでした。天板が薄くなったにも関わらず、C-3800はそれを凌駕して24.8kg。再び言わせていただきます。

パワーアンプかよ!

 天板を外して中を覗いてみますと(実際は出来ませんが)、中央に巨大なトロイダルトランス2基、その両側にフィルターコンデンサが6個ずつ12個配置されています。これだけで相当重そうです。
 そしてその両翼にAAVAユニットが左右独立して配置され、これだけで筐体のスペースは一杯一杯のギュウギュウ詰め、ついにアキュ伝統のフォノイコライザーユニットを収納する場所がなくなってしまい、本機ではADスロットがありません。もちろんアキュではC-27使用を前提としており、私には異存ありません。

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 フロントパネル、背側端子群はアキュ党には見慣れ操作しなれた全く違和感のないものですが、個人的にはリモコンが付属していたのが斬新でした(笑。ルーツサウンドさんにも「え、初めてですか!?」と笑われてしまいましたが、

「リモコンはユーザー側の要望が強いんでアキュも無視できず導入しているそうです」

とのことでした。C-290Vの重く滑らかなロータリーノブの感触が好きだった者には少し寂しい話ですが、そのうち慣れてしまうのでしょう。早速ラップを巻いて汚れ防止して使っております。同時にCDPの基本的な操作もできるので便利です。

 さて、前置き的な話が長くなってしまいましたが、肝腎の物理特性です。

周波数特性  BALANCED/LINE INPUT
 3 ~ 200,000Hz +0 -3.0dB
 20 ~ 20,000Hz +0 -0.2dB
全高調波ひずみ率(全ての入力端子にて) 0.005%
S/N・入力換算雑音:BALANCED/LINE
定格入力時S/N 113dB, 入力換算雑音 -125dBV, EIA S/N:  110dB
クロストーク -90dB以上/10kHz(EIA)

 まあ、唖然とするような数字が平然と並んでおります。が、実は周波数特性、全高調波ひずみ率、定格入力時S/NなどはC-290Vと比して殆ど差はありません。EIA S/Nというのがどういうスペックか専門外の私には分からないのですが、これはC-290Vの95dBから15dBもアップしております。
 更にはクロストークですが、C-290Vにはスペックが載っていないのでクロストークはアナログでしか気にしていませんでしたが、C-3800では

-90dB以上

と堂々と記載されており、自信の程が窺えます。試しに片側大音量にして対側ユニットに耳を近づけてみましたが全く何も聴こえません。サファイアの能率が比較的低い事もありますが、とにかく事実上ゼロに限りなく近いです。

 さてこのようなS/N比、クロストークの改善に関与しているのが

Balanced AAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)方式

です。ようやく今回の本題に入りました(笑。

 AAVAは可変抵抗体を追放した、全く新しい概念のボリューム・コントロール方式としてC-2800発表当時大変な話題となりましたが、このC-3800は

これでもか!食らえこの野郎!

的に徹底した物量投入がなされています。なんと電流源も完全バランスとするため、+入力/-入力それぞれに16種類のアンプを配置、さらに上位2bitのV-I変換アンプは、パラレル構成にして合計36個としています。高S/N化するためここまでやるか、と素直に脱帽です。

 そしてAAVAを2回路平衡駆動とし、更にはバランス入力→バランス出力の「完全バランス回路」としたことにより、入力から出力端子までの信号の流れ全てがバランス構成となりました。これにより

「高純度の信号伝送が可能となり、電気的特性の更なる向上と高品位な音楽再生に大きく寄与」

しております(そうです^^;)。長年2チャンネルなどで揶揄され続けていましたが、もう

なんちゃってバランス

とは言わせません(*^^)v。実際聴いてみても、いやあ完全バランス回路とはこれだけ物理特性が凄いか、と感嘆しきりです。半分見栄、半分実用上の理由でバランスケーブルを用いてきましたがついに本領発揮です。

 そして左右各チャンネルを完全に独立させることができるため、左右の連動誤差(音量差)やチャンネル間のクロストークがほとんど発生しなくなったというわけです。

 その他にもC-3800につぎ込まれたAAVAの技術改良はいろいろとあります。先ほど発熱が多いと書きましたが、それもそのはず、最近のアキュのパワーアンプに用いられている、MCS+のカレント・フィードバック増幅回路を4個構成、インスツルメンテーション方式に発展させて入力アンプとして搭載しています。三度(みたび)言わせていただきます。

パワーアンプかよ!

というわけで、これは非常に高速でローノイズかつ優れた高出力電圧特性を兼ね備ているそうで、高S/N比とハイスピードサウンドに貢献しているようです。「ハイスピードとは自然な柔らかい音」という傳先生の持論が、C-3800の音を聴くとよくわかります。

 自然といえば逆に不自然に感じるのが、ボリュームをいくら上げても上げた気がしないことです。確かに音量は上がっている気がするのですが、音像音質(特に周波数特性)が変化せず、背景ノイズも皆無に近いため上げた気がしないのですね。どこまで変わらないかリモコンを押し続けていると、ボリュームノブが12時を回っていてビックリしてしまいました。単純比較はできませんが、C-290Vでは11時くらいが限界でした。
 解説によりますと、AAVAは、インピーダンス変化などの影響を受けないため音量を変えても高SN比・低ひずみ率を維持、周波数特性や音質が変化しないからだそうですが、2800シリーズ試聴の記憶ではここまで変化しないことはなかったと思います。

 以上長々と書き続けたことを一言で言ってしまうと

C-2810二台を一つの筐体にぶち込んで完全バランス構成にした

ということになるそうですが、決してそれだけではすまない音の品位の高さはどこからくるのか?その理由をPDFから探してみると「部品類全ての徹底した吟味と試聴を繰り返し、アキュフェーズの妥協のない技と感性」がそうさせたのだと思います。
 そうそう、そして今回特に力を入れたという付属の電源ケーブルの今まで有り得なかった太さも印象的で、これも高音質に寄与していると思います。

 と、まるでアキュの宣伝ブログみたいになってしまいましたが、お付き合いありがとうございました。次回はいよいよ音出しのインプレに移りたいと思います。