さて、話は6月7日のお昼に戻ります。ルーツサウンドのジュニアさん(マスターの息子さん)がC-3800を配達に来てくださいました。前回も書いたように重いのでラックに入れるところまでしていただき感謝しきりです(冒頭写真右端中段)。
早速結線し、定番の「Fourplay」で音出しすると、新品とは思えないほどスムーズに音が流れ出しあっけにとられてしまいました。最初からネーサン・イーストのベースの響きと弾み方が違います。思わずにんまり。
ジュニアさんがしばらく無言で聴いておられて緊張しましたが、いきなり
「今何か不満なところあります?」
というドキッとする質問。「いや、特にないです。」と答えると、ジュニアさん曰く
「でしょうね。実は私が聴いておかしなところがあったらこれを買い替えなさいと勧めようと思ったんですが、私も不満なところが無いんですよ。部屋の天井高を高くしたのも正解でしたね、良いバランスで鳴ってます。」
いやあ、ほっとしました。マスターもジュニアさんもセールストークやお世辞は一切言わない人なので、とりあえずリビングオーディオとしては合格点のようです。というわけでしばらくティーブレイクで雑談した後、長年頑張ってくれたC-290Vを引き取っていただきジュニアさんはお帰りになりました。
さてこちらはその後もいろいろと試聴を続けました。ルーチンのCDを一通り聴いてみての感想としては、音質は肩透かしを喰うほど素直で普通です。
でもその普通さが凄い。まずは背景の静寂さ。ボリュームを回しきっても残留ノイズが聞こえません。驚異的です。
そしてそこから立ち上がる音の一粒一粒が深い。物理特性の完璧さに裏打ちされた上で適度な響きを付与した音作りがされている印象を持ちました。音離れのよさ、三次元的音像構築の正確さもこれ見よがしではなく自然な佇まいで表現されています。
C-290Vもいいプリでしたが、このC-3800に比べると音像がやや平板でこじんまりしており、音もメリハリやコクのようなものを付加した色づけがされていたなと感じます。
敢えてC-3800の特徴と思われる点を挙げると、低音部を引き締め傾向として全帯域をフラットに出すようにつとめている感じです。
また、前回書いたようにボリュームに定位や音像が左右されないので、小音量でもフォルテシモからピアニシモまで十分に表現されるので、音量をそれほど上げなくても十分満足できてしまいます。リビングオーディオ派としてはありがたいことです。
ジャンルや楽器も問いません。拙宅のシステムには不向きと思っていたソースでもあっけないほど上手く鳴らしてくれます。例えば「Stereo Sound NOBU'S POPULAR COLLECTION」中で、これまで苦手だったTOTOの「ロザーナ」のきつさを感じなくなったり、平凡だなと思っていた松本俊明の「月の庭」のベーゼンドルファーの深みがよく分かったりしました。
敢えて言うと弦と女性ボーカルの表現が特に素晴らしいと思います。サラ・マクラクランの「Angel」などちょっと鳥肌モノです。マイケル・ヘッジスのギターも柔らかくしなやかに鳴るようになりました。しつこいようですがハイスピードサウンドとはエッジの立った音ではないという事が良く分かります。
というわけで、2日間鳴らしこんで、日曜日に久しぶりにDG-38を用いて部屋の音響測定をしてみました。結果は以前と殆ど同じ。まあ当然といえば当然です。とりあえずこれで左右を揃えるヴォイシング処理を行なって、イコライザーはフラットでメモリーしました。音は。。。やっぱり変わりませんね、変わるほうがおかしい(w。
一方C-3800のエージングは徐々に進んでいるようです。先ほど述べたようにどちらかと言えば引き締め気味の低音作りをしている感のあるC-3800ですが、2日間で低域の深いところまでフラットに出てくる様になった気がします。
例えば初日に聴いた田部京子のシベリウスの「ロマンス」の左手低音領域のペダリングでの胸にずしんと来る迫力と残響感がC-290Vに比して減じているように思っていたのですが、誇張感なしに十分出るようになりました。
そして音数も増え音色が豊かになってきました。例えばギドン・クレーメルやヒラリー・ハーンのヴァイオリンの音色に適度な艶が乗ってきました。
そこでいよいよ大編成の音楽にチャレンジすることにしました。ヴァンスカ&ラハティ市響のシベリウス第二交響曲を聴いてみましたが、弦楽パートの音像の定位と深み、残響の絶妙なさじ加減はちょっと感動的でした。
これをかけた後はいつもサファイアが好調になるので、これも久々にLed ZeppelinやKing Crimsonのライブを聴いてみました。標準設定のゲインだと少し元気が無いのでmaxの24dBにすると闊達に鳴り始めました。C-3800にはロックだけはあわないかな、と思っていましたがまずまず及第点の再生です。
ただ、昔Hoteiさんに言われたのですが、これらの70年代ロックの録音は意外に低域の底までは入ってないようです。めげずに今まではガンガン鳴らしてたのですが、このプリだと腰高感があからさまに暴かれてしまいました。でもやっぱり良いです(w。一方で定番のジェニファー・ウォーンズの「The Hunter」の底なしの低音はあらためて凄いな、と感じました。
そしてクールダウンはマイブームのキースの「Somewhere」、もう中毒です(笑。
ルーツさんによると一月ほどすると真骨頂を発揮するとのことですので、それを楽しみにエージングしていきたいと思います。というわけで3回に渡り長々と書いてしまいましたが、C-3800導入記、一旦これで終了です。ここまでお付き合いただいた皆様、どうもありがとうございました。