ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

立川談春独演会@兵庫県立芸術文化センター

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  立川談志の一周忌が近づいていますが、その故談志師匠に「俺よりうめぇな」と言わしめ、今「最もチケットの取れない落語家」と言われている立川談春の独演会を聴いてきました。人情噺の語り口の見事さに江戸落語の粋を知ることができました。

立川談春独演会

日時: 2012年9月29日(土)  開 演 15:00
会場: 芸術文化センター 阪急中ホール

演目

一.  一目上がり 立川春松

一. 黄金の大黒 立川談春

仲入り

一. ねずみ穴 立川談春

 噂どおり、芸文の中ホールに補助席が出るほどの超満員。前座は評価に値するほどの芸でもなくあっさり退場。続いて登場した談春、いきなりその弟子をいじる前振りで笑いを取ります。そして一番目の演目「黄金の大黒」は落語の定番、貧乏長屋ものです。正直言ってそれほど笑えませんでした。談志の流れを汲むきっぷのいい語り口ではありますが、関西落語に比べて「せわしない」気がしました。

 仲入りをはさんでいよいよ本日の大ネタ。演目は人情噺「ねずみ穴」、マクラは無く、いきなり話に入ります。田舎で父の死後、財産の半分を受け継ぎながら放蕩で全財産を失った弟が、もう半分を受け継ぎ江戸へ出て商人として大成功している兄の元を訪ねます。その兄から商売の元手として渡されたお金はなんとたった三文。怒りと悔しさから一念発起した弟は見返してやろうと必死に働き、廻船問屋として成功し10年後に再び兄を訪ねますが。。。

 笑いを取るのが主目的ではなく、こういう噺をじっくりと聞かせるのが立川流江戸落語の持ち味なのだなと思わせる見事な語り口。夢オチという定型構成の中に兄弟愛のみならず人間の業さえも描き出す、懐の深い人情噺の世界に観客を引き込んでしまう力量の凄さ。さすが評判だけのことはある、と思いました。

 話が終わったあと、「やりながら談志に語り口がどんどん似て来ているなあと思っていた」と述懐され、「離れよう離れよう離れようともがいて、結局似てくる」ことに感無量の様子、いかに立川談志という存在が大きかったかを改めて認識しました。とともに談春さんがもう既にその域に達していることも良く分かった独演会でした。