ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ゲド戦記四部作 /Ursula Le Guin

The Earthsea Quartet (Puffin Books) (Earthsea#1-4)ゲド戦記
(左:The Earthsea Quartet(Penguin Books), 右:映画ゲド戦記(DVD))
 ちょっと古い話になりますが第三回文春きいちご賞第一位はスタジオジブリのアニメーション映画「ゲド戦記」でした。その記事を書いた時には「まだ見てないので個人的にはコメントを差し控える」と書きました。実はその映画を昨年体調不良でブログを休止している頃に観ておりました。確かに出来の悪い映画ではありましたが、一つだけ解せなかったのが何故宮崎吾朗監督ばかりが叩かれているのか(それも父にまで)と言うことでした。

 まず私が感じた映画ゲド戦記の欠点を挙げてみます。

1: 原作者ル=グインをも怒らせるほど原作を改竄した
2: 声優が下手すぎる
3: 主題歌があざとい
4: 作画能力が落ちている
5: キャラクターデザインがマンネリ

2、3、5に関してはスタジオジブリの長期的な構造的欠陥であり、責任はこの路線を推し進めてきた鈴木敏夫プロデューサーにあると思います。4は制作費抑制のため海外に作画をアウトソーシングするというアニメ界全体の構造的問題でしょう。

 問題は1です。まず原作者ル=グイン女史との交渉はプロデューサーの責任だと思いますし、映画のエンドロールでは原案は父でジブリの顔である宮崎駿の「シュナの旅」であると明記されています。これだけの制約を受けて息子吾郎は一体何が出来たと言うのでしょう、ずばり鈴木敏夫宮崎駿の責任ではないでしょうか?その責任を取ったのかどうかは知りませんが、鈴木敏夫は先日代表取締役を辞任しています。

 さてこれだけのことを書く以上原作をちゃんと知っているべきなのですが、残念ながら30年近く前の古い記憶しかなく、映画を観ても原作を十分に思い出す事が出来ませんでした。その事がずっとひっかかっていたのですが、去年の年末「Breakfast at Tiffany's」を読み終わった頃、本屋で次の英語ペーパーバックを物色していて偶然「The Earthsea Quartet」が目に入りました。これも何かの縁だと思い購入して年末から読み始めていましたが、何せ4本の小説がセットになっており700P近くあるもので正直大変でしたが、先日ようやく読み終わりました。

 私が映画を観て原作のストーリーをよく思い出せなかった最大の理由、それは第四部にありました。私の場合1970年台に読んだわけですが、実はその頃は「ゲド戦記三部作」だったのです。もちろんそれすら忘れていたわけですが(^_^;)。四編の題名を列記してみますと

第一部: The Wizard Of Earthsea(1968) 影との戦い(1976)
第二部: The Tombs Of Atuan(1971) 壊れた腕輪(1976)
第三部: The Farthest Shore(1972) さいはての島へ(1977)
第四部: Tehanu(1990)  帰還(1993)

私が全く知らなかった第四部が映画の舞台であり、それに一~三部の美味しいところをつまみ食い的に採用し、更には原作には全くない設定も加えられているため、私を含め往年のゲド戦記ファンにはかなり奇妙に思える映画が出来上がってしまったわけですね。

 ただ、それにしてもきちいご賞一位を取るような映画ではないと思いますし、宮崎吾郎の悪評はひどすぎる気がします。ゆうはむ映画レビューは面白おかしくがモットーではありますが、雰囲気や伝聞だけでけなす事はしないということを心がけているつもりです。そこでこれからしばらくの間、この原作を検証してみることにしました。興味の無い方には退屈かもしれませんがしばらくお付き合いくださいませ。