ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

The Great Gatsby

華麗なるギャツビー
ジャック・クレイトン
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン 2004-02-20


by G-Tools

1920年代、ニューヨーク郊外ロング・アイランドに豪邸を構える、謎の富豪ジェイ・ギャツビー(ロバート・レッドフォード)。かつて貧しい青年だった彼は、恋人のデイジーミア・ファロー)に裏切られたことをバネに、財界でのし上がっていったのだった。そして、彼は、今は人妻となっているデイジーの心を再び取り戻したかに思えたが……。(AMAZON解説より)

great_gatsby さて、フィッツジェラルドネタを2つ続けたからにはやはりこの不朽の名作を取り上げなくてはいけませんっ(断定調。私の場合この作品は

1:映画で初めて知り、字幕をみても何て言ってるのかさっぱり分からず、

2:原作を知りたいと思い生意気にも英語版の文庫本(写真左)を買い、

3:出だしのあまりの難しさに即日本語版(写真右)を買って平行して読み進んでいった。

という一粒で3度おいしい(か?)思いをした作品です。大変な感銘を受け、村上氏をはじめいろいろな評論本も読みました。ちなみに映画の公開が1974年ですから私はまだ中学生だったはず。その頃にこんな難しい文章が読めるわけはありませんから映画は後年リバイバル時に見たんだと思います。村上春樹氏は高校生の頃にはバンバン原書を読んでいたそうで、フィッツジェラルドも片っ端から読んでおられたそうですから凄いなあと思いますね。

 「アメリカンドリームとその挫折」というテーマを元に語られることの多いこの作品ですが、自分にとっては

表意文字である英語でこれだけの美しい文章が書けるのだ

という驚きを覚えた初めての作品だったような気がします。といっても先ほど述べたように私には歯が立たない部分も多いのですが、いくつかの名場面は英語版が手垢で黒くなるほど読み返しました。

 ラストで「私(ギャツビーの友達、ニック・キャラウェイ)」がギャツビーの死後、主を無くした邸宅(夢破れた成り上がりものの象徴)から対岸の緑の灯(そんなことにはびくともしない上流階級の象徴)を見ながら語るモノローグは、いつ読んでも震えのくるくらいの名文で未だこれを超えるような文章には出会えていないです。

 それだけに和訳には非常な苦労があるようで、最後の一文だけとってみても野崎孝氏、村上春樹氏、研究者の宮脇俊文氏等の文章は微妙に異なっています。スコットのお墓の墓碑銘にもなっているこの文章、さてあなたならどう訳されますか?

So we beat on, boats against the current, borne back ceaselessly into the past.