ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

The Polar Express/急行「北極号」

 今日はもう少しロマンティックな列車の話題を。

急行「北極号」
クリス・ヴァン・オールズバーグ 村上 春樹
あすなろ書房
2003-11-10


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 今年のクリスマスシーズンに投入される洋画「ポーラー・エクスプレス」の原作絵本です。またトム・ハンクスかー(ファンの方失礼)という程度の認識しかなかったのですが、訳が村上春樹氏だったので買ってみました。村上氏が訳を担当するからには優れた作家なのだろうかと思ったわけですが、原作(絵、文とも)者のC.V.オールズバーグという方は彫刻、絵画が専門なのだそうです。なんとあの破天荒な洋画「ジュマンジ」の原作者でもあるそうです。そして、村上春樹氏は既にもう彼の作品を何作か訳されているそうです。彼の作風は現実世界と幻想の世界を行き来するようなものが多いとの事で、そういう点に村上氏も感応するものがあるのでしょうね。

クリスマス・イヴの夜サンタの鈴の音を心待ちにする少年の元へ現れたのはなんと白い蒸気に包まれた汽車だった

というプロットは典型的なクリスマス用おとぎばなしではありますが、この汽車は確かに現実世界と幻想の世界を行き来する道具立てですね。村上氏も純粋な文学作品として丁寧に訳されている印象を受けます。子供におもねったような甘ったるい丁寧語は一切使われていません。だから一つ一つの文章を見てみれば村上作品の中の文章だといっても分からないくらいです。たとえば冒頭の

ずいぶん昔、まだ子どものころ、クリスマス・イブの夜中に、ぼくは静かにベッドに横になっていた。シーツのすれるこそりという音さえ立てなかった。

なんてファンにはたまらない所謂「春樹節」ですよね。それに春樹氏の翻訳家としての良心がそうさせるものと思いますが、映画と違って題名も律儀にちゃんとした日本語になっています。

急行「北極号」

 う~ん、実に丁寧な仕事をされていますね。最近わけの分からない横文字の題名が多いと仰せの浜村淳さんもこれなら納得^^;。でもやっぱり映画の題名はポーラー・エクスプレスでした。残念!