誰にでも「え(・・?、そんなものが怖いの」っていうのがありますよね。私の場合は「夜の電車」。もちろん、見るのも嫌とか絶対に乗れないと言う訳ではありません。でも、夜の闇の中を車内灯に照らし出された(がらがらの)電車が通り過ぎるのを見ると胸がどきどきしてくるんですよ。特に踏切では。これもどきどきしながら撮りました。ただしうまく撮れるかどうかの方が心配だったんですけど^^;。
何故そうなってしまったかと言うと、子供の頃
ウルトラQ第28話「あけてくれ!」
を見てしまったから。ウルトラQはTVSFの嚆矢ともいうべき名作で全28話ありますが、この第28話は初回放送時は放映されず再放送でようやく日の目を見たという曰く付きの作品です。(ただし内容のせいではなくTV局の都合)
なんと脚本は後年の「金八」シリーズで有名な小山内美江子。ウルトラQといえば早逝の天才金城哲夫や作家としても有名な山浦弘靖をすぐ思い浮かべてしまいますが、全28話で唯一これだけは小山内さんが書いていたんですね。
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ストーリーは大体下記のような感じでした。全て紹介したいけど、エチケットとして最後は伏せます。
シリーズを通しての主人公である万城目(佐原健二)と由利子(桜井浩子)がドライブの途中で泥酔した男を助けて車に乗せます。ところが踏切で止まった時にその男が「あけてくれ!」と大声で叫びだします。
その男の話を聞いてみるとこれが奇想天外。男はしがないサラリーマンなのですが、ある日電車の中で眠っていたところ、車掌に切符を持っていないと咎められ同乗していたSF作家(東大中退の怪優天本英世!)のところへ連れて行かれます。その作家が語る事には、この電車は普通の電車ではなく現実社会から異次元へ向かう電車であって、そこにはサラリーマンとしての苦労など現実社会の苦悩は何にも無い理想郷だというのです。その話を聞いて男は乗り続ける決心をしますが、時間を突き抜けようとするとき窓の外に家族や職場の上司が見えて思わず「あけてくれ!」と叫んでしまいます。
次の瞬間男は、現実の世界に戻っていました。これで一件落着と思いきや、男を待っていたものはーーー。
高度成長期を支え社会の歯車として働く人間の疎外感を空飛ぶ列車に託した名作、と今なら客観的に評価出来ますが見た当時は
ひたすら怖かった
です。もし電車に乗ってあんなところへ連れて行かれたら?本当に夜の列車にはあんなことがありえるのでは?なんてね。ウルトラQはTVの怪獣もののはしりと言う評価が高く、それに異論はありませんが、この作品とか「1/8計画」とか怪獣は出ないけど本当に怖い!という作品もありました。「Twilight Zone」を意識していたようですね。そういえば石坂浩二さんの
これから30分間あなたの精神(こころ)はあなたの身体を離れーー
というオープニングナレーションにもどきどきしました。
ほら、あの窓の中に今は亡き天本英世さんが---