ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

聲の形

Koenokatachi_2

 記録的な大ヒットとなった「君の名は。」に隠れた形になってしまいましたが、もう一本気になるアニメが公開されています。「聲の形」です。今日ようやく観てきました。

 原作は「聾唖者へのいじめ」という際どい内容ではあったものの、全日本ろうあ者連盟の承諾も得て週刊少年マガジンに連載され大きな反響を呼んだ漫画でした。

 本作品はその映画化ですが、いたずらに美化もせず説教臭くもせず、そして実写化もせず、素直にアニメーション映画に移し変えたことが功を奏して、とても良質な作品になっていました。もう率直に良かったです。感動しました。今、Kindle第一巻が無料で読めるのでDLして予習していかれることをお勧めします。

『 2016年 日本映画 制作:京都アニメーション 配給:松竹

キャスト:
監督: 山田尚子
原作: 大今良時
脚本: 吉田玲子
キャラクターデザイン:西屋太志
美術監督: 篠原睦雄

声優: 入野自由早見沙織悠木碧小野賢章、金子有希 他

週刊少年マガジン」に連載され、「このマンガがすごい!」や「マンガ大賞」などで高い評価を受けた大今良時の漫画「聲の形」を、「けいおん!」「たまこラブストーリー」などで知られる京都アニメーション山田尚子監督によりアニメーション映画化。脚本を「たまこラブストーリー」や「ガールズ&パンツァー」を手がけた吉田玲子が担当した。退屈することを何よりも嫌うガキ大将の少年・石田将也は、転校生の少女・西宮硝子へ好奇心を抱き、硝子の存在のおかげで退屈な日々から解放される。しかし、硝子との間に起こったある出来事をきっかけに、将也は周囲から孤立してしまう。それから5年。心を閉ざして生き、高校生になった将也は、いまは別の学校へ通う硝子のもとを訪れる。 (映画.comより) 』

Koenokatachispecialbook
( 来場者限定のショートストーリーが読めるSpecial Book )

 いきなりThe Whoの「My Generation」が鳴り響くアヴァンギャルドな演出で始まります。この音楽センスはさすが「けいおん!」の山田尚子、なんて思いながら観ていますと、いきなり主人公将也が自殺を考えているシーン。なかなかスリリングな出だしです。

 小学校時代、刺激を求めて毎日三人組で遊んでいたガキ大将将也の人生を変える転校生がある日やってきます。聾唖の硝子です。退屈の捌け口を硝子へのイタズラに求めた将也の行為は段々とエスカレートし、ついに大人の怒りを買い、そこから将也は苛められる側に落とされてしまいます。

 小中高と誰にも相手にされず、心を閉ざしたままだった将也はもう一度硝子と会って小学生時代返しそこねた会話ノートを返し、その上で自殺しようと考えていたのです。

 自殺できなかった将也は次第に硝子と心が通うようになりますが、小学生時代の行いは今でも烙印となって小学生時代の同級生たちとの間の溝を埋め切れません。一方の同級生も、硝子を疎ましく思っていたことに複雑な思いを抱えていたり、助けられなかったことをトラウマとして抱えていたりします。

 ろうあの硝子さえ転校してこなければ、自分たちのクラスは楽しく何事もなくみんな友達として卒業していけたのではないか、という問いは大人が見ても考えさせられるものがあります。

 そういうわけで将也と硝子には数々の試練が降りかかり、そして我慢に我慢を重ねて生きてきた硝子は18歳になったある日重大な決断をします。

 そこからの展開はやや漫画チックで、実写化しなくて本当によかったと思います。アニメだからこそ泣きに泣ける、本当に心に沁みる展開でした。

 主人公二人の設定も声優(入野自由早見沙織)もよかったですし、どのキャラクターにもそれぞれにろうあ者に対する異なる観点をしっかりと持たせたところが、この作品を深いものにしていたと思います。

 そしてこういう物語に欠かせない、ストーリーを進めるエンジンとしてのサブキャラ、将也の只一人の親友永束小野賢章)と、ボーイッシュで登校拒否のカメラマニア、硝子の妹結弦悠木碧)の二人がよかったですね。声優さんも活き活きとしていました。

 エンディングテーマは残念ながらと言っては失礼かもしれませんが、The Who ではなく、aikoさんでした。でも良かったですよ。

 というわけで、「君の名は。」と同時公開が気の毒であったと思いますが、良質なアニメ映画でした。

評価: B: 秀作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)