クリント・イーストウッド x トム・ハンクスとなれば、押さえとかないと、と早速イーストウッド監督の新作「ハドソン川の奇跡」を観てきました。やっぱり安定のイーストウッド・クオリティ、安心してドキドキできます(笑。特に今回は練りに練られた構成に感服しました。
『 原題: SULLY
2016年アメリカ映画 配給: ワーナー・ブラザーズ映画
スタッフ:
監督: クリント・イーストウッド
原作: チェズレイ・サレンバーガー、ジェフリー・ザスロー
脚本: トッド・コマーニキ
撮影: トム・スターン
美術: ジェームズ・J・ムラカミ
編集: ブル・マーレイ
音楽: クリスチャン・ジェイコブ、ザ・ティアニー・サットン・バンド
キャスト
トム・ハンクス、アーロン・エックハート、ローラ・リニー 他
名匠クリント・イーストウッド監督がトム・ハンクスを主演に迎え、2009年のアメリカ・ニューヨークで起こり、奇跡的な生還劇として世界に広く報道された航空機事故を、当事者であるチェズレイ・サレンバーガー機長の手記「機長、究極の決断 『ハドソン川』の奇跡」をもとに映画化。09年1月15日、乗客乗員155人を乗せた航空機がマンハッタンの上空850メートルでコントロールを失う。機長のチェズレイ・“サリー”・サレンバーガーは必死に機体を制御し、ハドソン川に着水させることに成功。その後も浸水する機体から乗客の誘導を指揮し、全員が事故から生還する。サリー機長は一躍、国民的英雄として称賛されるが、その判断が正しかったのか、国家運輸安全委員会の厳しい追及が行われる。
(映画.comより) 』
冒頭、制作会社や配給会社のロゴがまだ出ているうちに、飛行機と管制塔の無線通信の切迫した声が聞こえてきます。そして、バードストライク(カナダガンの群れによると言われています)により両側のエンジンが停止したエアバスは反転して空港に引き返しますが、敢え無くNY市街に墜落しビルに激突炎上。。。
衝撃的な幕開けで観客を驚かせますが、もちろんこれは機長で原作者のチェズレイ・サレンバーガー(トム・ハンクス)、愛称SULLY(原題になっています)の見る悪夢。
実際は2009年1月、世界に衝撃と賞賛をもって報道された、ハドソン川への着水成功、周囲のフェリーやすぐに飛び立った救助隊のヘリによるたった24分間での全員救出、という奇跡的な結果でした。正確には「USエアウェイズ1549便不時着水事故」と呼称されています。
直後より機長サリーへのマスコミの熱狂的な称賛報道が始まりますが、実は機長、副機長は大変な試練を受けていました。国家運輸安全委員会(NTSB)による原因調査により機長判断の是非が厳しく問われていたのです。
なんと左側エンジンは完全に停止してはいなかった、コンピューター・シミュレーションの結果によると、元のラガーディア空港へも、直近の別空港へも着陸可能だったというのです。
自らの判断に間違いはなかったと確信しながらも、ホテルに缶詰になり心理的に追い詰められていく機長と副機長、そして家族。そんな中でも
「NYにとって久々のいいニュースだ、特に飛行機に関しては」
という会社役員の台詞に和まされますが、飛行業界にとってあの9.11の残した爪痕も感じました。
特に今回素晴らしかったのは時系列どおりに一直線には描かず、何度も着水シーンをくりかえす中で次第に現れる全貌を描くプロット、そして最後の公聴会の迫力。 実話とはいえ、本当のドキュメンタリーを観るような感覚で観る事ができました。
機長が最後の逆転劇で使う「Human Factor」という言葉。我々の業界でも他人事ではありません。感動しました。
もちろんイーストウッドの映画に出る俳優に外れはありません。トム・ハンクスは一瞬分からないほど白髪となり安定の演技を見せます。エンド・ロールで流された本当のサリーの姿を見て納得。なるほど、見事なメイクです。
音楽のほうもイーストウッドなら安心。でもジャズの匂いがしないな、と思ってましたが、ちゃんとエンドロールで楽しませてくれました。
小品ではありますが、観て損のない映画です。
評価: B: 秀作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)