ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

松方コレクション展 @ 神戸市立博物館

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 神戸で「松方」といえば名家中の名家。いよいよ連載終了する「こち亀」の秋本麗子の実家みたいな(笑。そして、大抵の(ある一定の年齢以上)の方が連想するのは、「松方ホール」などに名を残す川崎造船神戸新聞の祖松方幸次郎

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(「松方幸次郎肖像」 プラングイン、1916、oil on canvas、松方家蔵)

 その松方幸次郎は西洋絵画の蒐集や海外に散逸した浮世絵を日本に回収することにも熱心でした。海外に留め置かれた作品もありますが、国立西洋美術館国立博物館(浮世絵)、ブリジストン美術館などに多く収蔵されています。

 その彼のコレクションの展覧会「松方コレクション展」が昨日9月17日から催されており、小雨の中出かけて来ました。なかなか見ごたえがあり、好きな画家との意外な出会いもあり、楽しめました。

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 西洋絵画が120点あまり、ブロンズ彫刻が2体、歌麿北斎の浮世絵が19点、その他彼の時代の神戸の資料など。結構見応えがありました。

 基本的には風景画や肖像画、人物画などのオーソドックスな作品が多く、もちろんそれらは優れた絵画群で当時としては至極真っ当で正しい審美眼を持ったコレクションだったのだと思います。それだけにやや異色なロートレックモネピカソムンクなどの作品が逆に目立ってしまうという、やや皮肉な展示内容となっていました。

 そんな中でも、ロダンの「永遠の青春」、ブールデの「瀕死のケンタウロス」のブロンズ彫刻二品が生彩を放っていて印象的でした。

 では、購入した絵葉書から何枚か紹介。

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(「庭に座る女」 ロートレック、1891、油彩厚紙、オルセー美術館蔵)

 松方コレクションにはフランス絵画が圧倒的に多く、この作品もその一つでフランスにとどめ置かれたロートレックの傑作。今回の展覧会の目玉となっています。色使いの綺麗な作品ですが、実物は意外にあっさりとした印象を受けました。マチエールが平板的なせいでしょうか。

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(「おしゃべり女」 スキップワース、1889、油彩キャンヴァス、加西市蔵)

 面白い題名のついた作品で、精細に描かれたリアリススティックな女性像、表情が活き活きしていますね。センスと帽子飾りの黒が印象的。

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(「美しい肩」 ローラン、1920、油彩キャンヴァス、国立西洋美術館蔵)

 「おしゃべり女」とは対照的に輪郭などをぼかした技法が女性の肌の柔らかさを際立てているのが印象的でした。今ならフォトショ一発でできてしまいますが、よく見るとローランの筆捌きの見事さが分かります。

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(「ジョット」 ギュスターブ・モロー 1882頃、watercolor on paper)

 孤高の象徴主義画家、モローの絵は久しぶりで嬉しかったです。調べたら兵庫県立美術館でモロー展があったのは2005年でした。紙に水彩で遠景はさっと描かれており、素描画的作品ですが人物の描き込みはいかにもモロー。

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(「絵を書く少年」 モーリス・ドニ、1920、油彩キャンヴァス、国立西洋美術館蔵)

 最後に、 おお、ドニだ! 私は彼の「リザール号に乗ったドミニック」という、ヨットの上で誇らしげに立っている少年を描いた作品が大好きで長く絵葉書を飾っていました。その絵葉書は、ある事情で患者さんに差し上げたのでもうありません。

 だから彼の作品との再会は嬉しかったです。油彩でありながらパステルのような色使い、子供に注ぐ優しい眼差し、ドニの本領が発揮された良い作品でした。

 ということで多岐にわたった作品がありますので、あなたもお気に入りの作品を見つけられると思います。神戸に来られる機会があれば是非どうぞ。