ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ピカソ、天才の秘密展 @ あべのハルカス美術館

Abeboharukasmuseum

 今日は半年に一回のあべの詣で、というわけであべのハルカス美術館で催されている「ピカソ、天才の秘密展」を観てきました。今回のピカソ展はピカソの「青の時代(1901-1904)とバラ色の時代(1905-1906)にスポットが当てられていました。

 親友の自殺でメランコリックな青の時代に入り、恋人ができて薔薇色の時代に入る、分かりやすい人です。というのは冗談ですが、いつの時代の作品を見ても、ピカソは別格、呆れるほどすごい、やはり20世紀最高の天才だった、と思います。いつ見ても。

 なお、音声ガイドは赤い彗星のシャアこと池田秀一さん。よかったですよ。

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『 20世紀最大の造形革命、キュビスムを創始し、91歳で没するまで驚異的な創造力を発揮し続けた不世出の天才、パブロ・ピカソ(1881-1973)。その天才たるゆえんを、キュビスム誕生以前の作品に探ります。少年期の早熟な才能を示す作品から、人間への深い洞察力にもとづく「青の時代」「バラ色の時代」の作品まで、ピカソ芸術の根幹にふれる絶好の機会です。 (公式HPより) 』

 というわけで、ピカソの絵はもう数え切れないほど様々な展覧会で見てきましたが、観るたびに新鮮な驚きや感動があります。もちろん、彼の本領はキュビズム以降になるわけですが、独特の寂しさや孤独を感じさせる一方、弱者への温かい視線も感じる青の時代もまた、ピカソにしかない魅力があって好きな時代です。萩尾望都先生も先日紹介した「一瞬と永遠と」の中で

「「おそらく、思春期において、誰もが青の時代を迎え苦しみのうちに再生するのかもしれない。その時代。我々は沈黙の中で肩をいからせ、自らを見すえるのだ。」(青の時代 - 「アイロンをかける女」)

と書いておられましたね。

 では展示にしたがって、購入したポストカードを紹介します。

第一章: 少年時代

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左:リカルド・カナルス撮影のパブロ・ピカソ(1904)、右:自画像(1896, oil on canvas

 ピカソは早熟の天才、「私は子どもらしい絵なぞ、描いた事がなかった」と豪語するほど幼少時代からそのデッサン力は圧倒的で、本業の父がわが子パブロのデッサンを見て筆を折ったほど。この自画像も、なんと15才のときの作品です。

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母と子 (1901、油彩、厚紙)

 ピカソの好んだ母と子のモチーフですが、解説によると母の手が直線的なのはゴッホに同じ絵があり、それに影響されて描いた可能性が高いそうです。

第二章: 青の時代

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青い肩かけの女(1902、oil on canvas

いかにも青の時代らしい、青で埋め尽くされたキャンヴァス。無理に作っているような笑顔の奥に秘められた悲しみがそこはかとなく伝わってくる、愛知県美術館が所蔵する逸品です。

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スープ(1902, oil on canvas)

  本展覧会の白眉の一つ。ピカソが数多く描いた「母と子」のモチーフ。しかしこの絵には喜びよりは寂しさが漂っています。その一方拝むような母の構図からはなにか敬虔さのようなものも感じさせます。

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貧しき食事 (1904、エッチング、紙)

 青の時代の特徴である、貧しいものへの温かい眼差し。左のやせ細った男は盲目だそうです。 色彩が青でないのは版画だから。この頃から版画にもめきめき才能を表していったそうです。

第三章: バラ色の時

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道化役者と子供 (1905、グワッシュパステル/厚紙)

 道化役者もピカソの好んだモチーフの一つ。「洗濯船」の近くのサーカスによく出かけていたそうです。と言っても、道化振りを描くのではなく、素の時の寂しさ、哀しさを表現した作品が殆どです。この作品も親子なのかそうでないのか分からないくらい、表情は素っ気無く、お互い反対方向を向いていますね。青の時代と違い、赤と青の対比も効果的。

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扇子を持つ女 (1905、oil on canvas

 本展覧会のアイコン。一見「青の時代」の作品っぽいですが、24歳の「バラ色の時代」の作品だそうです。青い服を来た女を横から描いていますがそのポーズが独特。東方、オリエント~エジプト地方の影響を受けているとか。扇子を持っているしもっと東方の極東の仏像をイメージしてしまいます。女性の表情もどこか神秘的。観音様?

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パンを頭にのせた女 (1906, oil on canvas

 ピカソにバラ色の時代をもたらした恋人フェルナンドをモデルとして、スペイン北部の地方の風習を描いています。色彩も今までになく明るいですね。

第4章: キュビズムとその後

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ポスターのある風景 (1912、oil and enamel on canvas )

典型的なキュビズムによる町の風景に、具象としてのポスターの文字を重ねあわせた面白い作品。ちなみにKUSとはスープの素だとか。

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肘掛け椅子の女 (1923、oil on canvas)

  今回とりわけ印象に残った作品。グレーの色調で統一された女性像。ふっくらとした落ち着いた大人の女性は妻オルガ。子供も生まれ、幸せな時代だったそうで「新古典主義」と呼ばれる、ピカソにしては普通の絵ですが、構図、色彩、その表現力、やはり天才にしかかけない作品だと思いました。是非実物をご覧ください。

 あべのハルカス美術館では7月3日まで催されています。