ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル @ 兵庫県立芸術文化センター

Hilaryhahn20160611
 今年はなかなかコンサートに行く機会が無く残念な思いをしていましたが、今日ついにヒラリー・ハーンのリサイタルに行くことができました。もう、今までの欲求不満が一気に吹き飛ぶ、素晴らしい演奏でした。愛用のヴィヨームから紡ぎだされるエレガントな音色、緩急自在にどんなパッセージも無駄な音不快な音を一切出さずに弾ききる完璧なテクニック、やっぱりヒラリーは最高です。

日時: 20106.6.11 14:00-
場所: 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

ヴァイオリン:  ヒラリー・ハーン 
ピアノ:  コリー・スマイス

プログラム

モーツァルト: ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.379 
J.S.バッハ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 BWV1005

intermission


アントン・ガルシア・アブリル: 6つのパルティータより  第2曲「無限の広がり」、第三曲「愛」
アーロン・コープランド: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 
ティナ・デヴィッドソン: 地上の青い曲線(27のアンコールピースより)

アンコール

佐藤聰明: 微風
ガース・ノイシュタッター: ヴォリテーション (世界初演
マックス・リヒター: 慰撫(Mercy)

「今や名実ともに世界のトップ・ヴァイオリニストとして君臨するヴァイオリン界の至宝・ヒラリー・ハーン。待望のリサイタルでお届けするのは、モーツァルトの霊感溢れるヴァイオリン・ソナタK.379、バッハの無伴奏ソナタ第3番という2大名曲に加え、20世紀アメリカを代表する作曲家、コープランドソナタから現代作曲家への委嘱作品まで。繊細で完璧なる美音で世界を魅了する天才ヒラリーの現在を凝縮した濃密なプログラム。どうぞお聴き逃しなく!
(公式HPより)  」

Img_1262

 結婚・出産でしばらくブランクがあったヒラリーですが、出産後初来日となります。前回ヤンソンス率いるオケとの来演でしたが、今回はヴァイオリンとピアノのDUOということで、本来なら中ホールくらいが丁度いいのですが、ヒラリーの人気を考えると大ホールにせざるを得ないのでしょう。私は2階のほぼ正面席だったのでかなり遠く若干心配していました。しかし、杞憂でした。ヒラリーのヴィヨームの音色は大ホール一杯に広がり、指弾きの音さえも明瞭に聞き取ることができました。

 パートナーのコリー・スマイスは、以前私がヒラリーのサインをもらった「Encores」でパートナーを務めています。今回の演奏でも時には堅実に時には華麗に、珠を転がすような美しい音色で楽しませてくださいました。ヒラリーがパートナーに選ぶだけのことはある素晴らしいピアニストでした。

 さて、本日のヒラリーさんはとてもゴージャス。もちろんその美貌と抜群のスタイルは健在、出産後とはとても思えないほど。そして宝石がちりばめられた美しいティアラがライトに輝き、赤、青、白のグラデーションの明るい色のストラップレスドレスも映えてまるで王女様のようでした。

 一曲目はモーツァルトのヴァイオリンソナタK.379。どちらかといえばピアノに主体がおかれた曲で、コリーさんの浪漫派のような美しいソロで始まります。そこへ滑り込む、ヒラリーのヴィヨームの奏でるたおやかでゆったりとした旋律は美しいの一言。

 二曲目は言わずと知れたバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの中から第三番ソナタ。緩急緩急の四楽章を現代奏法で完璧に弾き切るヒラリー。ダブルストップも第四楽章のクライマックスの16部音符も苦も無く弾ききり、喝采を浴びて前半終了。

 休憩を挟んで後半は現代音楽集。

 三曲目はスペイン作曲界の重鎮アブリルがヒラリーのために作曲したパルティータ。全6曲はHILARYの6文字から始まるタイトルがついています。今回はその中から第二曲「Immensity(無限の広がり)」、第三曲「Love(愛)」。現代音楽とはいえ、ヒラリーは不協和音も現代音楽的旋律も一切不快な音を出さずに引ききるので、ぐいぐい引き込まれます。

 四曲目はコープランドのヴァイオリンとピアノのためのソナタ。これはヴァイオリンのシンプルかつメロディアスな旋律を基本とした曲で、かつピアノの和音の響きも美しい佳曲でした。

27の小品

 終曲は「アンコール 27の小品」の中からティナ・デヴィッドソンという方の「地上の青い曲線」。左手の指弾きによるピッツィカートから両手に移っていき、更にボウイングによる鋭い高音も重なるという複雑な序奏部から美しい旋律に移行していく、短いながらも高難度な曲でしたが、ヒラリーは当たり前のように完璧なテクニックで弾ききりました。

Hilary201606112

 しかし、まだまだサプライズが待っていました。アンコールが凄い、もう第三部と言って良いほどの力の入りようで、世界初演の曲も含めて三曲。

 一曲目の佐藤聰明と三曲目のマックス・リヒターは「アンコール」に入っている曲ですが、双方とも、特にリヒターの「慰撫」の妙なる調べは天から降りてきたような美しさ。CDで聴いているよりもはるかに良かったです。

 二曲目の世界初演ノイシュタッターの「ヴォリテーション」はもちろん初めて聴きましたが、緩二曲にはさまれた「急」の究極のような劇的な曲。アンコールに持ってくるには高度すぎる、と思えるこの曲を凄いテクニックでヒラリーは一度のミストーンも無く演じきりました。凄い。。。実はこの曲でびしっと終わるだろうと思っていました。まだあと一曲あったなんて嬉しすぎるサプライズでした。

 ヒラリー・ハーンはやはり最高、カーテンコールに何度も応えた笑顔はやはり美しかったです。