ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Violin Concerto, 2, : Mullova(Vn) P.Jarvi / Frankfurt Rso +sonata For Violin Solo, 2 Violins: Papavrami

Prokomullova

Violin Concerto, 2, : Mullova(Vn) P.jarvi / Frankfurt Rso +sonata For Violin Solo, 2 Violins: Papavrami

 「Music Arena」で紹介されていたムローヴァの昨年の作品です。primex64さんの推薦でムローヴァとなれば買わねば、と早速ポチしました。

『  女王ムローヴァプロコフィエフ!P・ヤルヴィ、パパヴラミと共演!

五嶋みどりマリア・ジョアン・ピリスオーギュスタン・デュメイミハイル・プレトニョフパスカル・ロジェなど、メジャー級アーティストたちが続々と録音するイギリスのレーベル、ONYX(オニックス)。2005年の創立初期からONYXに録音を行っているヴァイオリンの女王ヴィクトリア・ムローヴァのONYX第11弾となる新アルバムは、パーヴォ・ヤルヴィ、テディ・パパヴラミといった有力アーティストたちと共演したオール・プロコフィエフ・プログラム!
パーヴォ・ヤルヴィとの「ヴァイオリン協奏曲第2番」。アルバニアからフランスへ渡り世界的な活躍を果たす奇才ヴァイオリニスト、テディ・パパヴラミとの「デュオ・ソナタ」。そしてムローヴァの独奏で行われる「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」。ONYXという新天地で大活躍を続ける女王ムローヴァのオール・プロコフィエフ、ご期待ください!

東京エムプラス  』

 

Prokofiev:
 Violin Concerto No.2 in G minor, Op.63
  ⅰ Allegro moderato
  ⅱ Andante assai
  ⅲ Allegro, ben marcato

 Sonata for Two Violins in C Major, Op.56
  ⅰ Andante cantabile
  ⅱ Allegro
  ⅲ Commodo (quasi Allegretto)
  ⅳ Allegro con brio

 Sonata in D major for solo violin, Op.115
  ⅰ Moderato
  ⅱ Andante dolce. Tema con variazioni
  ⅲ Con brio

Viktoria Mullova (Vn)
Tedi Papavrami (2nd Vn, Op.56)
hr Sinfonie Orchester - Frankfurt Radio Symphony Orchestra
Paavo Jarvi

プロコフィエフ:
 ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調 Op.63
 2つのヴァイオリンのためのソナタ ハ長調 Op.56*
 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 Op.115

ヴィクトリア・ムローヴァ(ヴァイオリン)
テディ・パパヴラミ(ヴァイオリン)*
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
hrフランクフルト放送交響楽団

Onyxは2005年の創立から10年余りの新興ではあるが、その間にメジャーな演奏家が次々と専属契約を結び、今や中堅以上クラスのバリエーションを誇る優秀レーベルとなった。パスカル・ロジェマリア・ジョアン・ピリスオーギュスタン・デュメイミハイル・プレトニョフなどを擁し、最近では五嶋みどりが移籍してきている。そんな中、ムローヴァはOnyx設立当初から所属する中核メンバーの一人で、今まで精力的な録音を重ね今日に至る。

ムローヴァは数年前にバロックに本格回帰し、バッハ無伴奏を頂点として目覚ましい成果を挙げたが、今回は近現代ロシア作品に挑み、オール・プロコ・プログラムを出してきた。

プロコの多くの三楽章形式の作品、特に中期から後期作品においてはあるパターンがあって、それは、デモーニッシュ→ピュア→デモーニッシュというもの。換言すると、濁→清→濁とも。トップのVnコン#2もこのパターンだ。1楽章は短いVnソロによるイントロダクションから暗く不気味な第一主題が層を重ねるように膨らみ、そして明るめで割と整った第二主題が早めに出現。その後この二つがスパイラル構造を形成して絡み合い、揺らぎながらドラマティックに進行。

二楽章は三拍子系の華やぐ緩徐楽章であり、春を思わされるフローラルな音楽だ。ここは非常に綺麗な純音系による建付けとなっている。主旋律を奏でるムローヴァのE線が咽ぶようにすすり泣くところが甘美、優美でやるせない。こういったところを聴くとムローヴァは年齢を重ねるごとに表現幅と深みを増してきたことがよくわかる。

三楽章はスパニッシュ風味が少し入ったロンド形式で、ここは一転して濁音系による重層的な建付け。アチェレランド、リタルダンドが多用されており強い加速度感が特徴。手に汗握るソロ/オケのハードな掛け合いが展開されるスリリングなフィナーレは、まさに音のスペクタクルと言える。ムローヴァの切れが抜群であることに加え、パーヴォの乗り乗りのリード、hrの面々による緻密だが分厚くもある熱気のこもったサポートが非常に好印象。

2挺のVnのための作品はありそうでそうは多くない。ソナタOp.56は四楽章形式で、ピュア→デモーニッシュ→ピュア→デモーニッシュ、即ち、清→濁→清→濁、テンポ的には緩→急→緩→急。相方は、アルバニアからパリに移ってからアクロバティックな超絶技巧でブレークし、21世紀の鬼才と評されているテディ・パパヴラミ。誰がどのパートを弾いているかは判然としない部分が多いが、どちらも勿論とても巧い。この作品はVnコン#2などよりかはインサイト寄りの瞑想的な旋律と静かな和声で、構造としてはより複雑。特に三楽章の浮遊するような瞑想的で観念的なデュオが不可思議な風情を醸していて印象に残る。

最後の無伴奏Op.115はプロコ晩年の作品であり、どの楽章の主題の旋律・和声ともロシア民俗的な土着メロディーの風味が特徴。ダブルストップを駆使するムローヴァの弦捌きの巧さ、情熱的なアーティキュレーションには唸らざるを得ないところだ。

以上、コンチェルトとソナタでは録音年月日は異なるが、すべてライブ収録となっている。全体を通してムローヴァのVnが冴え渡り、聴衆の耳をグリップする能力の高さは際立っている。今更だが、彼女が女王と言われる所以がよく理解できる渾身の一枚。素晴らしいのひとこと。

(録音評)
Onyx ONYX4142、通常CD。録音は、コンチェルトの方が2012年5月17~18日、Alte Oper, Frankfurt、ソナタの方が2014年12月7日、Hessischer Rundfunk, Sendesaal, Frankfurt。プロデューサーはOnyx:Matthew Cosgrove、hr:Andrea Zietzschmann(コンチェルト)、Astrid Gubin(両ソナタ)、録音プロデューサー&編集がEckhard Glauche、録音エンジニアがRudiger Orthとある。録音会場が異なるが両方の音色は殆ど同じに聴こえる。コンチェルトの録音は立体3D画像を見るような鮮烈な臨場感、アンビエンスに包まれる圧巻のパースペクティブだ。Cbやグランカッサの発する超低域がそのままフィルターなしに録られており、また金管隊の発する鋭いビーム、木管隊の繊細な吹かれ音やリードの振動を余すところなく捉えている。それでいて過度で刺激的な輪郭協調をするわけではなく極々ナチュラルで柔らかな風合いに仕上げているところがOnyxの良心たる伝統。相当にハイレベルなライブ盤で、ムローヴァのファンはもとより音場再生に拘りのあるオーディオ愛好家にもお勧めの一枚。

Violin Concerto, 2, : Mullova(Vn) P.jarvi / Frankfurt Rso +sonata For Violin Solo, 2 Violins: Papavrami