ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Dark Sky Island / Enya

Dark Sky Island

  2008年の「And Winter  Came」から実に7年ぶりとなるEnyaの新作が出ました。実在するサーク島にインスピレーションを受けて作られたという「Dark Sky Island (Delux Edition,inport)」です。ジャケットを見ての当てずっぽうの直感ですが、昔の「シェパード・ムーン」「モリー・オブ・トゥリーズ」あたりのサウンドが帰ってきそうな感じがして予約していましたが、昨日到着しました。

 早速聴いてみましたが、予想に違わない力作で直感どおり「モリー・オブ・トゥリーズ」にかなり近い力の入った作品となっており、さらにサウンド的にはよりヘビーになった印象を受けます。

1. The Humming… 
2. So I Could Find My Way 
3. Even In The Shadows 
4. The Forge Of Angels 
5. Echoes In Rain 
6. I Could Never Say Goodbye 
7. Dark Sky Island 
8. Sancta Maria 
9. Astra Et Luna 
10. The Loxian Gate 
11. Diamonds On The Water 
Bonus tracks
1. Solace 
2. Pale Grass Blue 
3. Remember Your Smile 

『 満天の星空から降り注ぐかのような奇跡の歌声———「オリノコ・フロウ」「オンリー・タイム」などの大ヒット曲をもち、全世界累計7,500万枚以上(日本でも累計450万枚以上)のセールスを記録している
アイルランド出身の“歌姫"エンヤの7年ぶりとなる最新作!

 1988年メジャーデビューアルバム『ウォーターマーク』以来、全世界累計7,500万枚以上(日本でも累計450万枚以上)のセールスを記録しているエンヤの最新作。08年『雪と氷の旋律』以来、実に7年ぶり7枚目となるオリジナル・アルバム。
 新作『ダーク・スカイ・アイランド』は、英領チャンネル諸島に実在する、“サーク島(the island of Sark)"から大きなインスピレーションを受けており、自動車の使用が禁じられるなど21世紀においても独自の法律や自治権を持っていて、「世界一美しい星空を眺めることが出来る島」として知られている。
 新作は、これまでの作品と同様、中心人物&リード・シンガーのエンヤ、プロデューサーのニッキー・ライアン、そしてニッキーの妻でありすべての作詞を手がけるローマ・ライアンの3名が中心となって制作されている。
 先行リード・トラック「エコーズ・イン・レイン」は、エンヤの並ぶ者なき素晴らしい歌声と荘厳なトラックの絶妙なハーモニーが胸をうつ、美しい一曲となっている。

(AMAZON 日本盤解説より) 』

Enyaのアルバムは正確には把握が難しいのですが、大体この7枚が加古に発売された主要作品だと考えられます。

Enya」 このアルバムは今はどうかわかりませんが辻は手に入らず、いくつかの曲がシングルと言う形で発売されていました
Watermark
Shepherd Moons
The Memory of Trees
A Day Without Rain
Amarantine
And Winter Came

 前回の「And Winter Came」のレビューでは概ね好意的な評価をしていますが、決して満足できるものではありませんでした。その記事の中にも書いていますように個人的にはEnyaは「シェパード・ムーン」を経て「モリー・オブ・トゥリー」に至るころがその芸術的なエンヤ・サウンドのピークではなかったかと思います。

 そのエンヤ・サウンドとは何ぞや、と問われると結構難しいものがあるのですが、前回の記事から引用させていただくと

ケルト音楽に根ざした美しい旋律、清らかな歌声、ニッキー・ライアンによるミルフィーユのように丁寧に積み重ねられた、シンセサイザーとリバーブを効かせたボーカルの多重録音」

でしょう。その多重録音のすごさは、オーディオ装置のグレードが上がるごとにその凄みが段々と分かっていく奥の深いもので、恐らくはEnyaの大ファンである傳信幸先生のノーチラスのレベルに至って究極の真価が分かるのだと思います。拙宅でも苦心してオーディオセットを追い込んでいくたびに「メモリーズ」のニッキーライアンの多重録音の凄さが分かるようになりました。

 前置きが長くなりましたが、その後はどちらかと言えば聴きやすさ、ポピュラー音楽としてのヒット性重視の方向にベクトルが振れていった気がします。

 その辺りに物足りなさがあったファンにはこのアルバムはかなり満足できる出来だと思います。特に5曲目の「Echoes In Rain 」でのメモリーズの頃へ回帰したかのようななつかしいエンヤサウンド、6曲目の「I Could Never Say Goodbye 」のえも言えぬ美しい旋律のボーカル、7曲目のタイトル曲「Dark Sky Island」、そして「サンタマリア」の合唱的リフレインの荘厳な8曲目「Santa Maria」と、この中盤の流れは素晴らしいと思います。そしてケルト音楽の粋を凝らした美の極致と言える11曲目の「Diamond On The Water」で幕を閉じます。

 と言いたいところですがデラックス・エディションにはボーナス・トラックが3曲も入っています。何れも佳曲で嬉しいことは嬉しいのですが、トータル・アルバムとしての構成にこの三曲を含めて考えていたのかどうか、ただのおまけなのか、そのあたりが良く分かりません。ただセールスを狙って「通常盤」「デラックス盤」と分けただけなのなら、アーチスト「Enya」が商業主義に負けていいのかな?と思ってしまいますね。

 輸入版での評価ですがオーディオ的には好録音でニッキー・ライアンの多重録音のどの層をとってもクリアでかつ以前よりもややヘビーな印象も受けます。Enyaのボーカルへのリバーブのかけ方も節度のある良い録音だと思います。「メモリーズ」以降オーディオ的に物足りなくなっていた方も、もう一度エンヤ・サウンドにトライしてみる価値のある作品であると思います。