ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ホドラー展@兵庫県立美術館

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(入り口看板の「感情III」)

 日本・スイス国交樹立150周年記念として神戸で開催されている美術展、先日は「チューリヒ美術館展」を観てきましたが、今回はもう一つの兵庫県立美術館で催されている「ホドラー展」を観てきました。

 ホドラーは先日「チューリヒ美術館展」で初めて見ましたが、スイスでは国民的画家だそうです。「平行主義」と「リズム感」が彼の持ち味とのこと。

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(「恍惚とした女」、美術館サービスのメール画)

『 フェルディナント・ホドラー(1853-1918)は、19世紀末のスイスを代表する画家です。国内での絶大な人気に加え、近年ではフランスやアメリカでも相次いで個展が行なわれるなど、その存在にはあらためて国際的な注目が集まっています。

 ホドラーは、世紀末の象徴主義に特有のテーマに惹かれる一方、身近なアルプスの景観をくりかえし描きました。また、類似する形態の反復によって絵画を構成する「パラレリズム」という方法を提唱したホドラーは、人々の身体の動きや自然のさまざまな事物が織りなす、生きた「リズム」を描き出すことへと向かいました。今回の展覧会は、ホドラーの画業をたどりながら、世紀転換期のスイスで生まれた「リズム」の絵画を体感する場ともなるでしょう。

 日本とスイスの国交樹立150周年を記念して開催される本展は、日本ではおよそ40年ぶりに開催される最大規模の回顧展となります。ベルン美術館をはじめ、スイスの主要な美術館と個人が所蔵する油彩、素描など約90点により、ホドラーの芸術の全貌に迫る、またとない機会となります。(公式HPより)』

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(「悦ばしき女」、メール画)

 リズム感という点では「リトミック(英語で言うとユーリズミックスとなります!)」を開発した作曲家エミール・ジャック・ダルクローズと交流があり互いに影響しあったとか。「恍惚の女」の踊る女や「感情III」の四人の女性、「オイリュトミー」の五人の男性などにその成果を見て取れました。

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(看板の「オイリュトミー」)

 とはいうものの、具象でリズムを表現するのは意外に難しく、むしろアブストラクトの方がそれは表現しやすいと思います。ホドラーのそれもそう言われるとなるほどな、と思うものの静止画でリズムを感じるのはちょっと難しかったですね。

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(「トゥーン湖とニーセン山」、メール画)

 一方彼のもう一つの持ち味は風景画。もともとみやげ物としての風景画の工房出身と言うこともあり、初期は具象的で特に個性は感じませんでしたが、途中平行主義を取り入れたり、かと思えばセザンヌの「サン=ヴィクトワール山」風になったり、ちょっと迷走気味でしたが最後にたどり着いた境地は抽象化された形態と色彩のパターン。ニーセン山はクレーも描いていますが、メール画のようにピラミッド型に簡素化して描き始めたのは彼が嚆矢であったそうです。

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(「無限へのまなざしの単独像習作」、メール画)

そして大家となったホドラーは装飾画家として、1913年から1917年にかけて、チューリヒ美術館にある階段間のための壁画を制作します。五人の女性が並ぶ構成の壁画は「無限へのまなざし」と名づけられました。この絵はその秀作の一つです。

 そして最終展示、晩年の恋人ゴデ= ダレル(写真で見る元気な頃の彼女はとても美しい)が出産時に癌を患い、その病と死と向かい合った作品群、特に最後の展示「バラの中の死したヴァランティーヌ・ゴデ= ダレルの遺骸」のやせ衰えて身罷ったゴデ= ダレルを見つめるホドラーに思いを致すと深い感慨に包まれました。

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 日本では無名の画家の単独展ということで比較的空いており、個人的にはゆったりとした時間が過ごせてよかったです。「チューリヒ美術館展」とセットで是非どうぞ。