休日の今日はまたまたシネリーブルで映画鑑賞。キーラ・ナイトレイの大ファンなので、以前から予告編を見て楽しみにしていた「はじまりのうた」を観て来ました。私の見た範囲内では、意外にもキーラは等身大で現代を生きる女性を演じたことはあまりなかったと思います。今回は思いっきりその希望をかなえてくれる映画でした。
キーラがあのつぶらな瞳で口角を少し挙げてはにかむように笑う表情だけでもファンには観る価値があります(笑。その上に今回はギターを弾き生歌まで披露してくれるのですから必見ですよ~。
ちなみに監督は「ONCE ダブリンの街角で」で音楽を通して心を通わせていく男女の感動的なラブ・ストーリーを作り上げたジョン・カーニー。今回は音楽を通して失った人間関係を「Begin Again」していく再生の物語。ベタと言えばベタな展開でしたが、音楽に溢れたハッピーな映画で素直に楽しむことが出来ました。
『 2013年アメリカ映画、原題:Begin Again 配給:ポニー・キャニオン
監督ジョン・カーニー
キャスト
キーラ・ナイトレイ 、マーク・ラファロ 、ヘイリー・スタインフェルド 、アダム・レビーン 、ジェームズ・コーデン 他
アカデミー歌曲賞を受賞した「ONCE ダブリンの街角で」のジョン・カーニー監督が、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのキーラ・ナイトレイ&「アベンジャーズ」「キッズ・オールライト」のマーク・ラファロ共演で描いたハートフルドラマ。イギリスからニューヨークへとやって来たシンガーソングライターのグレタは、恋人デイブに裏切られ失意のままライブハウスで歌っていたところを、落ち目の音楽プロデューサー、ダンに見出される。ダンに誘われてアルバムを制作することになったグレタは、ニューヨークの街角で次々とゲリラレコーディングを敢行していく。キーラがギターを演奏しながら歌声を初披露するほか、人気ロックバンド「Maroon 5」のアダム・レビーンがグレタの恋人デイブ役でスクリーンデビューを果たした。
(映画.comより)』
序盤は凝った構成になっていました。まず映し出されるのはNYの小さなクラブ。そこで歌っていた男が、「僕の友達の女性が今日は来てくれている、彼女の歌を聴いてみようじゃないか」と、嫌がるグレタ(キーラ・ナイトレイ)をステージに引っ張り出します。彼女はギター一本で歌を一曲歌いますが、あまり会場の観客には受けませんでした。一人を除いては。
その一人がかつてはレーベルを起こすほどの人気敏腕プロデューサーだったダン(マーク・ラファロ)。彼女の才能を見抜いた彼はぜひとも彼女と契約しようと決意します。
面白いのはここからの展開。まずダンの普段の生活が描かれます。今は落ちぶれ、音楽記者だった妻と娘とは別居、会社に行っても今は音楽配信の話ばかり。ついに癇癪を起こした彼は盟友だった社長とも決裂してクビ。乗ってきた車も故障して地下鉄で帰る途中で立ち寄ったクラブで、最初のシーンに戻るわけです。彼女の歌のバックにピアノ、チェロ、ヴァイオリンなどのアレンジが次々と涌いて出る演出は上手かったですね。
そして次はグレタ。彼女は作曲専門で恋人のデイブ(これがロックバンド「Maroon 5」のアダム・レビーン、映画初出演だそう)とコンビを組んでいます。映画の挿入歌がヒットしたデイブとグレタは豪華なマンションに引っ越すことが出来幸せ一杯でしたが、いざレコーディングとなるとグレタはただの付き添い扱い。そして西海岸でのレコーディングにもついていけません。やっと帰ってきたデイブが彼女に新曲を聴かせますが、段々と顔が曇っていきいきなりグレタはダンにビンタ。歌だけで浮気が分かってしまうのですね。デイブは正直にスタッフの一人と恋に落ちたと告白、グレタは即出て行きます。デイブやダンとバンド仲間だった、今は街角ミュージシャンをしているスティーブの元へ転がりこんだグレタ。彼女を慰めようとスティーブが連れ出したのが自分がステージに立っている小さなクラブ。そこで最初のシーンに回帰するわけです。
最初はその意図が分からず、随分くどい展開だなあと思っていましたが、種を明かされるとここまでで二人の失意の経過がよく分かる、憎い演出でした。
さて、じゃあ契約はすんなり進むかというとそうではない。「私は音楽家でポップスターになるつもりはない」とあっさり断ろうとするグレタ。そこからのダンとのやり取りが面白かったです。
「今時キャロル・キングのつもりか?」
「どんなミュージシャンが理想なんだ?」
「ディラン」
「あいつは偽者さ、10年ごとに髪型やファッションを変えてる」
「じゃあ、、、ランディ・ニューマン」
「うーん、そいつはOKだ」
なかなかいいでしょ(笑。
そんなこんなで意気投合した二人ですが、クビになったレーベルの社長に頭を下げて聴いてもらってもやっぱりダメ。そこで考え出したのが、ストリートやビルの屋上、NYのいたるところで歌って録音すること。そこからの展開はテンポよく音楽もふんだんに聴けるので楽しかったです。
さて、いよいよ完成したアルバムは評価してもらえるのか、ダンと家族の絆は元へ戻るのか、そして携帯に吹き込まれたグレタの新曲を聴いてショックを受けたデイブはどのような行動をとるのか。
そのあたりは観てのお楽しみです。エンドロールに平行してどんでん返しが待っていますが、そのやり方がいかにも現代。今やレーベルとの確執で悩むくらいならこちらの方が良いというミュージシャンも増えていますね。私の好きなレイチェル・ヤマガタもその一人です。
とにもかくにもキーラ・ナイトレイ。現代っ娘を演じさせてもやっぱり上手いし、決して上手いわけではないけれど味のある歌唱も微笑ましい。ギターはストローキングオンリーだったかな。とにもかくにも彼女を久しぶりに見られて良かったです。
というわけで、ストーリー自体はいかにもハリウッドなオールド・ファッションなベタな展開でしたが、冒頭の演出やNY各所での演奏風景、最後のアダム・レビーンの熱唱なども含めて、気軽に楽しめる良い映画だと思いました。
評価 C: 佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)