ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

シューマン:謝肉祭(浜離宮朝日ホールライブ)他 / 田部京子

シューマン:謝肉祭[浜離宮朝日ホールライヴ]
 AMAZONから田部京子さんの新譜が出ると案内が来たので早速予約、先日届きました。あいにくエアコンの取替え工事中でメインシステムでは聴けないのですが、STAXで聴いて楽しんでおります。やっぱり田部さんはええわ(^。^)。

『 田部京子 (ピアノ、スタインウェイ)
録音:2007年12月5日(ライヴ) 浜離宮朝日ホール

1-21. 謝肉祭 作品9
22. アラベスク 作品18
23-35. パピヨン 作品2

シューマン生誕200年の2010年に向けた浜離宮朝日ホールのコンサート・シリーズ、「シューマン・プラス」の2007年末の第1回公演を収録した、田部京子初のライヴ盤。夢と現実の間を往来し、憂鬱と快活が交差するシューマン心理的多層性と構造的な複雑さという、ロマン派の中でも特異な世界を表現するには、その時その場限りの演奏が生み出す魔力が資する。 それまで慎重であったライヴ収録を選んだのは、そのためでした。
レコード芸術」準特選盤

(AMAZON解説より) 』

 2007年の録音ですし、CREST1000シリーズということは再販なんでしょうね、でも初めて聴く音源なので気にしません。音質も再販としては、なかなか良好ですし。
 でも不思議なのはライブであるにもかかわらず、拍手や雑音が全く無いんです。一体どうやって録音したんでしょうか?

 まあそれはともかく、シューマンの「謝肉祭」。田部さん独特の高貴な柔らかさと力強さが両立して気持ちよく聴けます。ある程度ライブならではの演出的なダイナミズムは感じますが、それでいてなおかつスタジオ録音のように実に丁寧に、一音一音を大切に弾いておられます。
 解説に書いてあるような「ロマン派の中でも特異な世界を表現するには、その時その場限りの演奏が生み出す魔力が資する」てな難しいことはわかりませんが、これだけの曲を20代にして完成させていたシューマンという人はやっぱり天才なんでしょうね。マルタ・アルゲリッチが「シューマンが一番好き」と先日の映画でおっしゃってましたが、なるほど、と思いました。解説の荻谷由喜子さんの文章を少々引用させていただきましょう。

「主旋律、対旋律、くるくるところを入れ替え、変化球や肩透かしも盛り込みながら奔放に曲が進む。よほど綿密な楽譜の読み込みのできる弾き手でなければ勤まるものではない。」

もちろん田部さんはその一人とだとおっしゃっていますし、この謝肉祭を聞いていると僭越ながら私もその感が強かったです。

 「アラベスク」はいかにもロマン派らしい美しい曲。これも田部さんのロマンチシズムにぴったりの、心の中で何かが溶けていきそうな美の世界です。

 最後の「パピヨン」という曲については全く知識が無く、初めて聴きました。解説によると20歳前後の若き日の作品だそうで、ロマン派の詩人ジャン・パウルの小説「腕白時代」の終わり近くにある舞踏会の場面に刺激されて書いた曲だそうです。フィナーレの第12曲が「謝肉祭」の終曲にもある楽想で始まっており、いわば「プレ謝肉祭」的な性格を持つ曲だということだそうです。ですから、感想は殆ど「謝肉祭」と同じで、完成度の高い美しくも端整なシューマンした。

 ライブでこれだけの演奏を聴けた人は幸せですね。田部さんのライブを聴く機会がまだ一度も無いのは本当に残念です。