ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

君となら@シアタードラマシティ

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 何気に竹内結子が好きなゆうけいです。その竹内さんが舞台初出演、しかも三谷幸喜のコメディ「君となら」、とくれば観ないわけにいくものか、というわけで先行抽選に応募して見事に外れました(号泣。
 しかしラッキーなことに家内が一枚当たり、その日に別の用事があるというこれまたラッキーに恵まれ、観にいくことができました。

 もともとは1995年に山田和也演出、斉藤由貴主演で上演され、大好評を博したコメディですので、今回も設定はその時代になっていますから、竹内結子さんのヘアスタイルもその頃を髣髴とさせる懐かしいものでした。ポケベル(これが笑いをとるんですよ)をはじめ、いろんな小物にその時代が見て取れます。

 だから笑いが古いかというと、、う~ん確かに古いか(笑、でも楽しく屈託なく笑える2時間で、7人の出演者全員のキャラが立っていて全員に見所をちゃんと用意してあるあたりは三谷幸喜ならではでした。

 場内が明るくなって帰りかけたお客さんもいるなかでもアンコールの拍手が鳴り止まず、おそらく予定外の三回目のカーテンコールまであり、スタンディングオベーションで拍手の嵐、竹内結子さんのこぼれんばかりの笑顔が印象的でした。

『 作・演出 三谷幸喜

キャスト 竹内結子草刈正雄、イモトアヤコ、長野里美長谷川朝晴木津誠之小林勝也

嘘が嘘を呼び、劇場を誤解と笑いで満たす、
抱腹絶倒のお茶の間ホーム・コメディ「君となら」

もしも娘の恋人が、父親以上に年の離れた人物だったら…。
好きだけど隠したい、そんな彼が突然家に訪ねてきたら…。
1995年と1997年に上演された、あの「君となら」が三谷幸喜の演出によって還ってくる!

竹内結子が初舞台でコメディに挑戦。
そしてイモトアヤコが「女優」として初舞台を踏む。
個性豊かなキャストで劇場を笑いの渦に巻き込みます。

(関西TVHPより)』

 

 KANの「愛は勝つ」が大音量で流れる中開幕、竹内結子さん、草刈正雄さん、いもとあやこさんたちが登場し、イモトさんがラジカセのスイッチを切るとぴたっと音楽が鳴り止み、物語が始まります。まあ、吉本でもよくやるSEネタですが、よく考えられた導入部でした。

 「 理髪店を営む小磯家。次女のふじみ(イモトアヤコ)と長女のあゆみ(竹内結子)があゆみの恋人・ケニー(小林勝也)について話をしている。次第に噛み合わなくなっていく2人の会話。どうやら”青年実業家”のケニーは実は70歳で父親の国太郎(草刈正雄)より年上らしい。この事実を両親にどう伝えようかと悩む2人。と小磯家に突然ケニーが現れて、事態は思わぬ方向に……。」

 そこから次々と嘘が嘘を呼んで必死に辻褄を合わせようとし続ける竹内結子イモトアヤコ
 途中で事実に気がつき、天然系のお母さん長野里美の為を思って嘘芝居に付き合わざるを得なくなるお父さんの草刈正雄
 まじめ一徹で家族に接する70歳(実はさばを読んでいて73歳(^_^;))ケニー役の小林勝也、ケニーの息子で自らも勘違いし母や従業員からも勘違いされる長谷川朝晴
理髪店店員であゆみに振られた過去を持つ木津誠之

 もう嘘が重なりすぎて、ついには「ケニー」が目にも見えないすばやい猫だということになってしまう始末。ありえんだろ、と普通は思ってしまうのですが、テンポが速く勘違いする方もさせる方も上手いので、観客はこの七人が繰り広げるシチュエーションコメディにぐいぐい引き込まれていきます。さて一体どう収拾をつけるのか?

 まあ最後は三谷幸喜らしいハッピーエンドですが、おまけがついています。そのおまけには劇の冒頭でちゃんと伏線を用意してあるあたり、さすがです。

 さて、竹内結子さん。レトロなヘアスタイルとなんと言うことのない水色のワンピース。それでもものがちがいます。一言綺麗です。「実物」を拝見したのは初めてですが、やっぱり一流の女優さんは違うなあ、というオーラがありました。
 昔「いま会いにゆきます」という、くっだらない映画があったんですが、その映画の中でこの世の人とは思えないほどの美貌に鳥肌が立ったのを思い出しました。
 今回が初舞台で、しかも20年前に大評判をとった劇、しかもあの斉藤由貴さんがやった役、ということで相当のプレッシャーがあったと思いますし、イモトさんがしょっちゅう海外ロケに出ているのでなかなか練習が進まず焦った時期もあったそうですが、コメディエンヌとして立派に舞台を勤めておられました。

 最高によかったのは草刈正雄さん。かつての二枚目俳優、長野里美さん演じる母さんの理想は「草刈正雄」というくらいの存在だった彼が、パジャマを着替えないオヤジとなり、自分より年上の娘の彼氏相手に右往左往。
 散々振り回された上に「隣の蕎麦屋の親父」「実はオカマ」にさせられてそれにのらざるを得なくなるあたりの演技にはもう爆笑の渦。お見事でした。

 三谷さんらしい斬新な起用に応えたのがイモトアヤコ。姉の嘘を手伝って大奮闘する、所謂「投げ」役を上手く演じていました。発声も演技もしっかりしていて、あの忙しいスケジュールを縫ってよく練習・適応できたな、と思います。

 天然系のお母さんを実は計算しつくされた演技で演じる長野里美さん、ケニーこと小林勝也さんも主役級の熱演、脇を固める長谷川朝晴木津誠之も大奮闘で、特に長谷川さんのポケベルで全身が震える演技、見えない猫にかぶりつかれる演技、流しそうめんのセットの矛盾点をつっこむところ等々、まあ見事なものでした。

 というわけで20年前のちょっとレトロな、それも一幕ものでセットもオーソドックスなシチュエーョンコメディではありますが、ほのぼのとした幸せな気持ちにさせてくれる三谷幸喜喜劇の真骨頂を見せていただきました。