1: デュフィ展@あべのハルカス美術館
真新しいあべのハルカス美術館を後にして、次は歴史ある大阪市立美術館へ向かいました。私としては天王寺というだけで遠い上に、さらに天王寺公園の奥というちょっと立地の悪い場所なのでなかなか行く機会のない美術館です。
その昔、2000年の伝説的な「フェルメール」展で長い長い行列ができていたのが懐かしく思い出されますが、それ以後はあまり訪れる機会がありませんでした。ブログ記事を見ると、2008年の「佐伯祐三展」が唯一の記事ですので、約6年ぶりになります。
さて、こども展という珍しくも面白そうな企画ですが、美術館HPの解説をコピペしてみましょう。今回も写真はクリックで拡大できます。
「 パリ・オランジュリー美術館で開催された展覧会“Les enfants modèles”(「モデルとなった子どもたち」と「模範的な子どもたち」のダブルネーミング)を日本向けに再構成したものです。
テーマは描かれた側=モデルとなった子どもの体験と、描いた側=子どもたちの親、または子どもたちと親しい関係にあった画家の想いです。画家に焦点を当て、その技術や特徴を鑑賞するという従来の展覧会の枠組みを超えて、子どもたちの目線を通じて作品に秘められたメッセージやエピソードを読み解くという、絵画の新しい鑑賞方法を提案する画期的な展覧会となります。」
というわけで、モネ、ルノワール、ルソー、マティス、ピカソを始めとする18~20世紀の主にフランスで活躍した画家たち47人による、86点の作品が出展されていました。
展示順に、またまた購入した絵葉書で主だった絵画を振り返ってみます。
序章・第一章:家族:
最初のほうは肖像画画家として有名なデュビュッフ一族の、典型的な肖像画がたくさん並んでいました。それもそのはず、この企画を最初に立案されたオランジュリー美術館の館長さんはデュビュッフ一族の末裔に当たられるそうです。
もちろんえこひいきではなく、教科書的な見事な肖像画ばかりで、当時の画家の貴重な収入源、というか主要な仕事であったことがうかがい知れます。
(ドニ「リザール号に乗ったドミニック」oil on canvas,1921)
そんなかしこまった肖像画群の中で、ドニが描いたヨット上の子供の伸びやかな姿は異彩を放っていて強く印象に残りました。それにしてもナビ派のドニが何でこんな初期のところに展示されていたんでしょうね?ドニは第4章で出てきますので後ほどまた。
第2章:模範的な子どもたち
このあたりもデュビュッフ一族の絵が多かったです。その他にはカリエールなど。そう言えばレヴィ=ストロースという画家がおられて驚いたのですが、当然ながら民俗学者のレヴィ=ストロースとは別人です。
(ルソー「人形を抱く子ども」oil on canvas、c-1904-5)
そしてこのコーナーの白眉はやはりアンリ・ルソーのこの絵でしょう。原田マハさんの「楽園のカンヴァス」で一躍有名になったルソーですが、どの派にも属さなかった「素朴派」ならではの首がなく奇妙な立ち姿の構図と筆致、色彩が異彩を放っていました。ちなみにルソーが生涯に描いたと確認されている4枚の子どもの絵のうちの1点となる、たいへん貴重なものだそうです。
第3章:印象派
さて、印象派です。もう代表的作品の宝庫です。いつも見飽きた見飽きたと言ってますが今回も既視感ありまくりのたくさんの作品が展示されていました。特に冒頭写真のルノアールが描いた「「ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子供」が今回の目玉作品です。私は「オルセー美術館展」で一度見ていますし、ルノアール展でもジュリーの肖像は見ていますので、お久しぶり、という感じでした。それにしても、ルノワールの描く子供には思わず口元がほころんでしまう柔和さがありますね。さすが陽だまりの画家です。
まあそれはともかく、ジュリーはマネの弟とベルト・モリゾの間に生まれた子供なので、モリゾも当然ジュリーを描いています。今回の展示でもドライポイントで、件のルノワールのジュリーとそっくりな構図のデッサンがあったのが微笑ましかったです。同時にデッサンしてたのかもしれませんね。
その他にもモネの子供ジャン、ミシェル、ルノワールの子供クロードなど有名なところがたくさん展示されていました。その中でもやはりルノワールのこの絵。
(ルノワール「道化姿のクロード・ルノワール」oil on canvas,1909)
なんともいえぬ巧まざるユーモアと優しさに溢れていますね。ちなみにクロードのこの絵に関する回顧談によると
「この服を着るのはいやだった、良かったことは半日学校を休めたこと」
と述べていたそうです。絵画制作の裏側が見える面白いエピソードですね。
ベルナール、ヴェイヤールなどとともにここでドニの作品が4枚展示されていました。
(ドニ「トランペットを吹くアコ」oil on carton, 1919)
三男のフランソワを描いたこの絵も今回の目玉の一つで、ドニ家が代々大切にしてきたもので本展覧会の趣旨にご賛同頂いたご遺族の協力のもと、日本で初公開となったそうです。なんともいえぬ可愛い表情は本当に無垢な子供にしか出せないものですね。ドニ家の家宝となって不思議のない作品だと思います。
第5章:フォービズムとキュービズム
最近の私の好みの分野に入ってきました。マティス、ピカソ、ジロー等に伍して3点もの作品が展示されていて嬉しかったのがアンドレ・ドラン。
(「ドラン「画家の姪」oil on canvas,c-1913)
先日紹介した「夢見るフランス絵画展」で「花瓶の花」という絵のもつ色彩の深みにとても惹かれた画家です。今回もこの絵の背景の暗色の深さから浮かび上がる花と少女の色使いとマチエールに魅入ってしまいました。
第6章: 20世紀のレアリスト
最後のコーナーです。レンピッカ、パスキン、プルトン、フジタ等草々たる作品の中でもその強烈な色彩で一際目立っていたのは、やはりキスリングでした。
(キスリング「オランダ娘
」oil on canvas,1933)
一目でキスリングとわかる強烈な色彩、無表情で人形のような顔、艶やかな肌。さすがに色彩を追求し続けた画家だけのことはあります。
その他には布団にくるまった子供の寝顔を描いたルーアールの「眠るジャン=マリー」が可愛かったです。
そして今回はじめて知った画家ですが、イラン出身のダヴード・エンタディアンという画家の二枚にとても惹かれました。絵葉書が無かったのが残念。
それと家内が大好きなアンカーの絵があるはずと期待して出かけたのですが、それが無かったのがとても残念でした。
というわけで、こども展も十分楽しめました。最後のなにわクルーズに向けて出発です。