先日紹介したNino Gvetadzeの「DEBUSSY」が素晴らしかったので、2011年に同じOrchid Classicsからリリースした「Widmung(献呈)」も買ってしまいました。
前回紹介したように、彼女は2008年にフランツ・リスト国際ピアノコンクール第2位、あわせて批評家賞と聴衆賞も授与されており、この作品はそのリストの生誕200年に捧げられているとのことです。
題名の「Widmung(献呈)」は収録されているシューマンの作品(リスト編曲)であるのですが、彼女のリストへの献呈の意味もこめられているのでしょう。
超絶技巧を要すると言われるリストのピアノ曲、新世代のニーノにとっては自らの個性を存分に発揮できる対象でしかないように思われるほど、彼女の個性が際立った演奏を楽しめました。
1: FRANZ LISZT
Hungarian Rhapsody No 10 in E
2: Ballade No 2 in B minor (original version)
3: ROBERT SCHUMANN transcribed FRANZ LISZT
Liebeslied (Widmung)
4: FRANZ SCHUBERT transcribed FRANZ LISZT
Gretchen am Spinnrade
5: FRANZ LISZT
Sonata in B minor
Nino Gvetadze, piano
まずは「ハンガリー狂詩曲第10番」で、超絶技巧を要するリストの名曲を華麗に披露します。冒頭のインパクトのある強打と華麗な速弾きは、さすがリストコンクール第二位だけのことはありますね。
中間部での静かで美しいメロディラインのパートも、一音一音を丁寧に繊細に紡いでいく様は「DEBUSSY」と共通していますし、低音の力強さをちゃんと備えているところも素晴らしい。多用されるトリルなどを含め、実に演奏が正確でかつ流麗です。
オーディオファイルの間ではリストと言えば「Nojima Plays Liszt」が有名ですが、超絶技巧を要するリストの曲を一音も間違えずに正確に打鍵するのは至難の技で、Nojimaは完璧にそれをこなしており、それを正確に再現するのがオーディオの醍醐味だとされてきました。それと同じ醍醐味をこの曲にも感じます。
そして際立って素晴らしいのがシューマンがクララに捧げた「献呈」をリストが編曲したピアノ曲。3分37秒と短いものですがまさしく美の極致ですね。最初の伴奏の和音からしてとても美しく、右手の主旋律が静かに滑り込んでくるところなどはぞくっとします。ここでも「DEBUSSY]のようにレガートを敢えて粒だった様に弾く彼女独特の奏法がみられ、それが非常に清清しい印象を聴く者に与えているように思います。
シューベルトの「糸を紡ぐグレッチェン」のリスト編曲も繊細な演奏ですが、これを彼女のサイトでアニメーションをまじえた動画として見ることができます。是非ご覧ください。
そして最後はリストに挑むものなら避けて通れない「Sonata in B Minor」。個人的には正確無比な演奏として先ほど紹介したNojima、荒れ狂うような熱情的な演奏としてエレーヌ・グリモー が心に残っています。
が、このニーノの演奏にも心を奪われてしまいました。この長大な曲を上手く解説など私の能力をはるかに超えているのですが、もう
「新たな世代の新たなリストのソナタ」
としか言いようがない斬新で魅力に溢れた演奏です。
ちなみに今回はどの曲も録音は素晴らしいと思います。スタインウェイの煌くような高音域と力強い低音、ぺダリングによる適度な残響音まで非常にクリアにとらえられていると思います。
Primex64さんの解説というアンチョコがないので、全く素人の感想ですが、興味を抱いていただければ幸いです。