ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

思い出のマーニー

Marnieposter

 ジブリの今夏の最新作「思い出のマーニー」が公開されました。先日原作「When Marnie Was There」をご紹介しましたが、舞台が英国ノーフォーク地方から北海道に変わり、アンナが日本人になると、肝心の謎解きがどうなるのかなと心配でしたが、意外にもうまく処理してあり、全体にとても良い出来栄えで感動しました。

『 2014年 日本映画、スタジオ・ジブリ作品、配給:東宝

監督: 米林宏昌
製作: 鈴木敏夫
プロデューサー: 西村義明
主題歌: プリシラ・アーン

キャスト(声): 高月彩良有村架純松嶋菜々子寺島進根岸季衣 他

イギリスの作家ジョーン・G・ロビンソンの児童文学「思い出のマーニー」(岩波少年文庫刊)を、スタジオジブリがアニメーション映画化。物語の舞台を北海道の美しい湿地帯に置き換え、心を閉ざした少女・杏奈が、金髪の少女マーニーと出会って秘密の友だちになり、体験するひと夏の不思議な出来事を描く。札幌に暮らす12歳の内気な少女・杏奈は、悪化するぜん息の療養のため、夏の間、田舎の海辺の村に暮らす親戚の家で生活することになる。しかし、過去のある出来事から心を閉ざしている杏奈は、村の同世代の子どもたちともうまくなじむことができない。そんなある日、村の人々が「湿っ地屋敷」と呼び、長らく誰も住んでいないという湿原の古い洋風のお屋敷で、杏奈は金髪の不思議な少女マーニーと出会い、秘密の友だちになるが……。「借りぐらしのアリエッティ」で監督デビューした米林宏昌の長編第2作。杏奈役はドラマ「GTO」や映画「男子高校生の日常」などで活躍する高月彩良、マーニー役はNHK連続テレビ小説あまちゃん」でブレイクした有村架純が、それぞれジブリ作品初参加でアニメ映画の声優に初挑戦。

(映画.comより) 』

あなたのことが大すき。「思い出のマーニー」歌集アルバム
(「思い出のマーニー」歌集アルバム: プリシラ・アーン)

 今回は宮崎駿が引退宣言をして初の長編映画でしたが、「借り暮らしのアリエッティ」の米林宏昌さんが監督ということであまり心配はしていませんでした。むしろ、宮崎臭が消えるのは大歓迎。ただ、原作のレビューで書いたように、この作品に思い入れのあるのは宮崎駿のようでしたから、その辺どうなるかな、と思っていました。

 結局今回は、HPの「二枚のポスター」という頁を読んでいただけるとわかりますが、宮崎駿は映画自体にはタッチせず、米林さんが完全に自立して作り上げた映画となりました。

 冒頭の札幌の公園シーンの作画が結構貧弱で、ストーリーも前半が少々退屈だったのでどうなることかと思いましたが、比較的忠実に原作をなぞった上で、時系列をうまく処理してあり、最後は原作を知っていても涙が出てきました。

 原作を知らずにご覧になる方は、前半「もらい子」で暗くてひねくれた主人公に全然感情移入が出来ないと思いますが、そこをしばらく我慢してご覧ください。中盤から何か不思議な雰囲気が漂い始め、後半は結構面白くかつ劇的な展開になり、ラストの謎解き、最後の古ぼけた写真の場面では涙腺がきっと緩んでくると思います。

 一方原作をご存知の方は、舞台を北海道にして主人公を日本人にしたら、謎解きが成り立たないんじゃないかと心配されると思いますが、結構うまく処理してありますからご安心を。(ただし、原作が肯定できなければ、アリエネ~、で終わりですけど)

 作画も先ほど述べたように冒頭の札幌のシーンがちょっと貧弱ですが、釧路地方の海辺の町になると、「アリエッティ」でジブリを蘇らせてくれた米林クオリティ全開となります。海辺の光景、沼地の自然描写、大岩さんの家、そして湿っ地屋敷、幻のような見事な舞踏会、すべて見事なできばえでした。大岩さんちのたわわに熟した大きなトマトは特に美味しそうでした! 惜しむらくは、アンナが花売りに化けて売る花(原作ではSea Lavenderという花です)がちょっとしょぼかったかな。

 さて、ジブリの最大のウィークポイントは「きっちりとした声優を起用しないこと」と私はこれまでずっと言い続けてきましたが、まあ今回は良しとしましょう。やや棒読みっぽいですがひねくれた性格を押し隠し「普通(ordinary)の子」で押し通す役割の主人公に素人同然の高月沙良を起用したのは正解だったかも。マーニーの有村架純はまずまずの出来でしたし、周囲を固める根岸季衣寺島進森山良子吉行和子、そしてキーパーソンの黒木瞳、と安心して聞いていられました。松島菜々子はイマイチだったかな?

 まあそんなこんなで欲を言えばキリがありませんが、とても良く出来た映画だったと思います。

 家内も観るまでは「女の子二人が愛してるなんて気持ち悪い」と消極的でしたが、最後は涙して「なるほどね」と納得してくれました。帰りに本屋で岩波少年文庫版の原作を買ったくらいですから気に入ってくれたのでしょう。

 

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 私はプリシラ・アーンCDと米林さんのマーニーのイラスト付のスケッチブックを買いました。プリシラ・アーンの歌声はとても素敵です。Youtubeで散々聴いてなかったら、エンディングでもっと感動してたかも(^_^;)

 というわけで、小学校高学年以上のお子さんをお持ちの家族なら、家族の絆ということを考える上で、とても良い映画だと思います。もし映画に感動されたら、原作もお読みください。

評価: B; 秀作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)