ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ブログ十周年記念企画(3) 洋画「この10年この10本」+1

Anydaynow

 10周年企画第三弾は、前回に引き続き洋画で「この10年でこの10本!+1」を選んでみました。

映画レビュー: 281件

 邦画: 171件
 洋画:  110件

 邦画の半分くらいしかレビューしていないかな、と思っていたのですが意外に多いですね。ハリー・ポッター・シリーズなどが貢献しているのかもしれません。ハリポタは残念ながら「この10本」には入らなかったのですが、特別賞をあげたいくらい日本の洋画興行収入に貢献していますね。

 では「この10年この10本」を邦画と同じく時系列で紹介していきたいと思います。+1の「愛すべきトホホ映画」はおそらく皆さん完全に忘れておられると思いますが、とっておきの隠し玉ですよ(笑。

1: この10年この10本 

チャーリーとチョコレート工場 (2005年9紹介)

 私はジョニー・デップティム・バートンのコンビが作り上げる奇抜な着想と演出過剰気味の演出のファンです。その最高作は「シザーハンズ」だと思いますが、ブログ開設以降に作られた映画ではこの映画が一番出来が良かったと思います。エキセントリックな部分と原作の持つ悲しみが程よく溶け合った佳作でした。

アメリカ、家族のいる風景」 (2006年4月紹介)

 ハリウッド史上屈指の傑作「パリ、テキサス」から20年の時を経て再びヴィム・ヴェンダースサム・シェパードが組んだ映画です。脚本のサム・シェパード自らが主演をつとめ、当時私生活でもパートナーであったジェシカ・ラングと丁々発止の火花の散るような演技を見せています。閑散とした地方都市を舞台にしてアメリカの原風景を描いた秀作であったと思います。

ブロークン・フラワーズ」 (2006年4月紹介)

 示し合わせたわけでもないのでしょうが、ヴィム・ヴェンダースの「アメリカ・家族のいる風景」とちょうど同時期に、ジム・ジャームッシュも「ストレンジャー・ザン・パラダイス」 から20年を経て再びロード・ムービーを撮りました。それがこの「ブロークン・フラワーズ」でした。主演のビル・マーレイがとてもいい味を出していたのが印象に残っています。シャロン・ストーンジェシカ・ラングティルダ・ウィンストンをはじめとする豪華女優陣それぞれの個性も光っていました。

カポーティ」 (2007年3月紹介)

 トルーマン・カポーティの半生に迫ったドラマで、カンザスでの一家惨殺事件に興味を持った彼が、服役中の犯人に取材を試み、「冷血」と名づけた小説に書き上げるまでを描く映画です。原作は「ニュージャーナリズム」という新しいジャンルを開拓した傑作ですが、この映画も傑作。それは先日惜しくも亡くなった名優フィリップ・シーモア・ホフマンの入魂の演技の賜物でしょう。奇矯な私生活を送りつつも純粋で子供のような無垢な精神も持ち合わせていたカポーティという人物が乗り移ったかのようで、オスカー獲得も当然だったと思います。

善き人のためのソナタ」 (2008年11月紹介)

 2006年1月紹介の「ヒトラー最期の12日間」もきわめて優れたドイツ映画でしたが、これもドイツ映画の傑作。冷戦時代の東ドイツ諜報機関シュタージを題材としています。
 あるカップルの部屋を盗聴するウルリッヒ・ミューエの、表情一つ変えずに心理面の変化を表現する演技はみごとでした。彼が演じるシュタージの一員の勝手な心理的成長が、全く関係のない「他人の生活(ドイツ語原題)」に劇的な変化をもたらしてしまう、ということは本来あってはならない事であり、実際彼も落魄の余生を送らざるを得ないわけですが、それでも最後に本屋で盗聴した相手の本の謝辞を見てかすかに微笑むところには何か救われる思いがしました。

グラン・トリノ」 (2009年5月紹介)

 マカロニ・ウェスタンの二流俳優からキャリアが始まり、いまや押しも押されもせぬ名監督となったクリント・イーストウッド。彼の近年の作品の中でも特に傑出した一本だと思います。自らが監督・主演双方をこなした、かつての名車「グラン・トリノ」に象徴されるアメリカ産業が栄光に包まれていた時代へのオマージュ作品です。かつて車産業で栄え今はすっかり廃れてしまったデトロイトの町を舞台に、新しい世代に希望を託して壮絶な最期を遂げる老人イーストウッドの演技は、自らの俳優としてのキャリアに落とし前をつけるとともに、かつての栄光に包まれたアメリカへの挽歌となっていました。この映画の後破産したデトロイトはそれ以上の廃墟になりつつあると言います。彼の先見の明にも脱帽です。

ハート・ロッカー」 (2010年3月紹介)

 かつての伴侶ジェームズ・キャメロンの大ヒット作「アバター」を押しのけてオスカーを獲得した女性監督キャスリン・アン・ビグロー監督の傑作。スポンサーのつかない低予算で灼熱のヨルダンロケという過酷な状況の中で撮られた目を背けたくなるような悲惨な映画なのですが、後々まで深く心に残る内容でした。ちょっとトラウマになりそうな(苦笑。 キーワードは「War Is A Drug」、未見の方で、骨のある映画を見たいという方には絶対お勧めです。ビグローはこの後「ゼロ・ダーク・サーティ」と言うこれまた傑作を撮っています。あえてベスト10には入れませんでしたがこちらもお勧めです。

わたしを離さないで」 (2011年4月紹介)

 日本生まれの英国作家カズオ・イシグロの傑作の映画化。クローン人間に生まれ、大人になると「提供」でその生を終わらなければならない者たちの「人間」としての悲しみや怒りを静謐な演出で描いた傑作です。その美しい寒色系の映像と深い余韻は近年の洋画の中でも群を抜いていたと思います。キャリー・マリガンアンドリュー・ガーフィールドキーラ・ナイトレイの演技も見事でした。キーラはもうオスカーを獲得していましたし、キャリー・マリガンもある程度知られた演技派でしたが、アンドリュー・ガーフィールドはまだ当時無名に近かったと思います。今ではスパイダーマンで大活躍してますね。

ヒューゴの不思議な発明」 (2012年3月紹介)

 これもレビューした「ディパーテッド」で念願のオスカーを獲得したマーチン・スコセッシが映画そのものへのオマージュとして作り上げた愛すべき傑作。この作品もオスカーの有力候補でしたが同じ古き良きサイレント映画へのオマージュであった「アーティスト」にさらわれてしまいました。しかし面白さ、心温まるストーリー、そして見事な映像はけっして引けをとらない見事なできばえであったと思います。老若男女を問わずお勧めできるという点でも優れた映画でした。少女役のクロエ・グレース・モレッツ、怖そうで実はとても悲しい過去をもつよき人サシャ・バロン・コーエンの演技も心に残ります。

チョコレートドーナツ」 (2014年5月紹介)

 「チョコレート工場」で始まって「チョコレートドーナツ」で終わる見事な構成(笑。いやいや、先日紹介したばかりの映画ですのでまだ余韻が残っています。心を鷲づかみにされるような感動作です。ネグレクトを受けているダウン症児を引き取って育てようとするゲイのカップル。しかし時代はまだ同性愛に対する偏見に満ちていた1979年。さまざまな障害が二人を待ち受けていました。
 とにかくゲイの歌手を演じたアラン・カミング一世一代の演技を是非見ていただきたいです。最後に歌う「I Shall Be Released」の歌詞「Any Day Now(原題)」に彼がこめた思いは観る者の心に突き刺さってきます。まだ上半期が終わったばかりですが、今年これ以上の映画にお目にかかれるかどうか、というくらいの傑作です。

 以上でベスト10終了です。こんな感動作の後にこれを紹介するのも気が引けるのですが。。。

2: +1: 愛すべきトホホ映画

尻怪獣アスラ」 (2006年9月紹介)

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 10年のブログ史上最低なお下劣映画なんですが、もうあまりのひどさに「笑って許して」しまう文字通り「愛すべきトホホ怪獣映画」で「ゴジラ」なんて目じゃありません(笑。とにかく百聞は一見にしかず。レビューをご覧になって少しでも興味をもたれた方は是非探してみてください。ただし苦情は一切受け付けません!

 長のお付き合いありがとうございました。10周年記念映画企画これにて終了です。またいつかこんな企画ができれば良いなあと思います。