ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

小豆島紀行(1)「八日目の蝉」を行く

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(中山千枚田虫送り、短距離コース)
 7月5-6日の一泊二日で小豆島に出かけてきました。久々の家族旅行です。天気予報で雨が心配でしたが、最後の日の帰り際に降った程度で、楽しく、思い出深い旅行となりました。

 今回の旅の目的は

1: 映画「八日目の蝉」で印象的だった、半夏生の頃に行われる「中山の千枚田虫送り」を見ること(これが7月5日)

2: 映画実写版「魔女の宅急便」に出てきたグーチョキパン屋さんのセットが移設されたハーブ店を見ること

の二つで、余った時間で景勝地観光や映画にまつわるスポットを観光する予定としました。

 ということで小豆島紀行第一回は、早速虫送りを中心に「八日目の蝉を行く」と題して書いてみたいと思います。

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二十四の瞳映画村展示)
 映画「八日目の蝉」は近年の邦画作品の中でも飛び抜けて優れた映画だったと思います。特に、不実な男を愛し、子を宿すが堕胎させられた絶望の中で、男と妻の間に生まれた赤ん坊を連れ去る女、野々宮希和子(永作博美)と、その誘拐犯に愛情一杯育てられた秋山恵理菜(渡邊このみ)が、一番幸せだった小豆島での生活がとても印象的でした。

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(映画で永作博美さんと渡邉このみちゃんが履いた靴)
 その中でも特に素晴らしく、物語の重要な鍵となるシーンが「中山の千枚田虫送り」でした。これはリンク先から引用しますと、

 『 約300年前から伝わる中山地区の伝統行事で、半夏生夏至から11日目)の日に火手(ほて)と呼ばれる竹の松明を田にかざしながら、畦道を歩き、害虫を退治して豊作を願うものです。
 中山地区ではここ数年間途絶えていましたが、映画「八日目の蟬」で重要なシーンとして「虫送り」が行われたことをきっかけに復活しました。
 「とーもせ、灯せ。」の声をかけながら、火手を持ち、青々とした稲が育つ棚田の畦道を歩きます。真っ暗の中、列をなした火手の光がゆらゆらと揺らめきならが動いていく風景はとても幻想的です。  』

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というもので、映画が伝統行事を復活させた珍しい事例です。これを一度見たいと思いつつ多忙にかまけて徒に日時が流れ、今回ようやく休暇が取れて観にいくことができました。 天気予報があまりよくなさそうで心配だったのですが、天に願いが通じたか、幸い最後まで曇天ではありましたが降ることもなく行事は執り行われました。

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 先ずは昼間のうちに下調べに出かけました。中山地区は島の中央やや西よりの山奥にあります。とはいえ海岸沿いの道路から車で15分程度で着きました。有名な千枚田には稲が青々と育っており、とても綺麗でした。とは言え機械が入らない田の作業は大変な苦労だと思います(家内談です)。

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 火手の行列が最後にたどりつく春日神です。映画で農村歌舞伎も出てきますが、ここで催されます。天皇皇后両陛下のお座りになったという椅子も保存されていました。

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 その横にある、地域の精米所を改造して作った「こまめ食堂」です。とてもいい雰囲気で、働いておられる方も気さくに応じてくださいました。その日は飲み物だけを頼んだのですが、隣で報道陣や地元の方が食べておられる「棚田おにぎり定食」などがとても美味しそうで、翌日のお昼にもう一度足を延ばしました。予想通りとてもおいしかったです。小豆島の隠れスポット(満員だったのでもう有名なのかも)としてお勧めです。

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(湯船山・荒神社)
 さて、本番の虫送りです。一時間前くらいから休耕田で待機していると、続々と報道陣やカメラマニアのご老人方が上って来られます。また、近くに見える舟山荒神には火手を持つために観光客や地元の子供たちが次々と集まってきます。

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 午後6時半に棚田のはるか上の方に見える湯舟山の神社で祈祷の声が聞こえ始め、そうこうするうちに黄色の袈裟を着た宮司さんがいそいそと駆け足で荒神社へ松明を持ってこられ、移し火が行われました。

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(長距離コース)

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(短距離コース)

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 こうして午後7時ごろから30分ほどで、高い方の舟山からの行列(上級者・高年齢児コース)と、低い方の荒神からの行列(初心者、低年齢児コース)が田の畦道を降りて春日神社に向かいます。ようやく暮れなずんできた棚田の間を火の行列が進む様は映画そのままで、とても美しかったです。

 

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二十四の瞳映画村

 翌日「二十四の瞳映画村」を訪れると、「キネマの庵」というレストランで「八日目の蝉小豆島展」が催されていました(常設だそうです)。写真やパネル、実際の絵コンテ(福田港での別れのシーン)、映画で使われた火手や衣服が飾られているだけの簡単なものでしたが、実際に永作博美さんと渡邊このみちゃんが持った火手や、虫送りで着ていた服などを見ると、ジーンとくるものがありました。

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(実際に二人が使った火手)

 最後に海岸沿いにある二十四の瞳の分校のセットです。小学校での授業のシーンはここで撮られたそうです。

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 以上で「八日目の蝉を行く」編、終了です。またあの映画を観たくなりました。惜しむらくは福田港へ行けなかったことですが、またの機会に残しておきたいと思います。