ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

春を背負って

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  このところ観たい邦画がなくて困っていたのですが、急に色々と興味を惹かれる映画が公開されてどれから観ていいか困ってしまうくらいになってきました。で、今日はその第一弾として「春を背負って」を観てきました。
 山好きでもないのに、何故山岳映画を観るのか?まあ拙ブログ常連の皆さんご想像通り、蒼井優ちゃん目当てといっておきましょう。

 で、結局のところ山好きでもないただの映画好きを唸らせるには程遠く、あまり面白くも無い映画でした。木村大作さんの黒沢組で鍛え抜かれた撮影の手腕はもちろん評価していますが、監督としてはどうかなと「剱岳・点の記」でも思ったのですが、今回はそれ以上に凡庸だなと思いました。

『 2014年 日本映画、東宝 

スタッフ
監督・撮影: 木村大作
原作: 笹本稜平
脚本: 木村大作瀧本智行宮村敏正

キャスト
松山ケンイチ蒼井優豊川悦司檀ふみ小林薫 他

日本を代表する名撮影監督で、2009年の「劔岳 点の記」で初メガホンをとった木村大作が再び監督業に挑んだ長編作。笹本稜平の原作小説を映画化し、立山連峰を舞台に、山小屋を営む家族とそこに集う人々の人生や交流を描き出す。立山連峰で父とともに幼少期を過ごした亨は、厳格な父に反発し、金融の世界で金が金を生み出すトレーダーとして過ごしていた。しかし父が他界し、通夜のために帰省して久々に故郷の山に触れた亨は、父の山小屋を継ぐことを決意する。当初は山での生活に苦労する亨だったが、亡き父の友人でゴロさんと呼ばれる不思議な男・多田悟郎や、山中で遭難したところを父に救われたという天真爛漫な女性・愛に囲まれ、新しい人生に向き合っていく。(映画.comより)』

春を背負って (文春文庫)

 原作とは細かい設定が随分変っています。先ずは舞台が秩父が何故か立山に。そして訳ありであるが故に魅力的な人物ゴロさんが何故かただの良い人に(ちなみに演じるのは豊川悦司でこれはまあ悪くないキャスティングだと思いましたが)なってるし、「花泥棒」のエピソードは出てこずに蒼井優ちゃんの台詞だけで済ませてしまうし、わざわざ原作の面白いところを削らなくても、とツッコミを入れながら観ていました。

 ところがいくら突っ込みを入れ続けても暖簾に腕押しで、話がちっとも盛り上がらない。だらだらといくつかのエピソードをつなげただけで、盛り上がりに欠ける展開。最後のほうで脳卒中を発症したゴロさんを亨がかついで山を降りるあたりがクライマックスなんでしょうが、そういうあたりのカメラワークと編集は平凡。それにあの程度の天気ならヘリを飛ばせるでしょう、と思うとリアリティが半減。 

 せっかくの良いキャストも活かせていませんね。安定した演技を見せてくれる豊川悦司以外でいいな、と思ったのは新井浩文くらい。蒼井優ちゃんも頑張ってはいるのですが、あとワンステップの飛躍のないまま停滞しちゃってますねえ。特にショートヘアにしてから色気と陰影を感じられないのが女優としては痛いです。監督も彼女の演技力だけに頼っていて、奥に秘めた魅力を引き出そうとはしていないところがファンとしては悲しい。

 木村大作はやっぱり撮影が本業で監督をやるべき人じゃないのかなあ、と思いました。というか、彼はまず絵になる風景ありきで、俳優はその中に点在させればそれでいいと思ってるんじゃないの?とさえ勘ぐりたくなります。

 逆に言えば山好きの人にはその映像だけで十分楽しめる映画だと思いますけれどね。

 そういえば音楽も大仰過ぎて興醒め。一体いつの時代の映画だい、という感じでした。

 というわけで、山好きの方にはとても楽しめる映画だと思いますが、普通の映画ファンにはイマイチかなと思います。

評価: D:イマイチ
((A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ))