ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

鋤田正義写真展SOUND&VISION+きれい@心斎橋BIGSTEP

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 「鋤田正義」という名前に馴染みのない方でも、David Bowieの「Heroes」やYMO(Yellow Magic Orchestra)の「Solid State Survivor」のジャケット写真なら一度は目にされた事があると思います。

Heroes Solid State Survivor

 このジャケット写真を撮られたのが世界のSukitaこと写真家鋤田正義氏です。上の二つはもちろんのこと、それ以外にも私の所持しているLPの中には氏の手になるジャケットがたくさんあります。例えばPanta&HALの「TKO Night Light」や大貫妙子の「Romantique」など。

TKO NIGHT LIGHT(紙ジャケット仕様) ROMANTIQUE

 その世界のSUKITAの写真展が大阪に来ている事は知っていたのですが、これまで機会がなく、ようやく今日都合をつけて観てきました。70年代からの音楽史を飾った数多くの作品をはじめとするSUKITA作品群をたった600円で観られる素晴らしい企画で、氏のジャケット・ファンは勿論のこと、ジャンルを問わず多くの人に観ていただきたい写真展でした。

『 デヴィッド・ボウイT.REXYMOなど国籍を超えて多くのアーティストから圧倒­的な支持を受けている写真家、鋤田正義氏の写真展を開催致します。

東京、福岡とそれぞれのコンセプトで注目を浴びた鋤田正義写真展を、これまで未公開の­作品も交えた絶対に見逃すことのできない世界初の“RETROSPECTIVE (回顧展)”として、大阪アメリカ村の心斎橋BIGSTEP B1 GALLERYにて開催致します。

[日時] 
平成25年11月23日〜平成26年2月2日
[会場]
大阪アメリカ村 心斎橋BIGSTEP B1 GALLERY

公式HPより)』

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(BIG STEP階段のディスプレイ)

 場所は心斎橋の通称アメ村にあるBIGSTEPの地下一ギャラリーです。オーディオファイルにはハイエンドショウで御馴染みのハートンホテルの南側にあります。本記事冒頭の大きなディスプレイですぐに場所は分かりました。

 中は思いのほか広く、数多くの写真、実験的BOX作品、映像作品などがあり、じっくり一つ一つ観ていると思いのほか時間がかかってしまいました。作品リストからテーマを列記します。

Early Days / 母、九州、大阪

デヴィッド・ボウイ / David Bowie

70's / New York, Punk and Rock'n'Roll

Vision 1/ 残像Special

布袋寅泰 / 忌野清志郎 / Yellow Magic Orchestra

Cinema

桑名正博/晴子

きれい

Vision 2 東京画+

Experiment(Box作品)

Projection(映像作品)

Banner

 メインはテーマである「SOUND&VISION」が傑作「Low」の一曲であることからもわかるように、何と言ってもデヴィッド・ボウイです。山本寛斎の衣装に身を包んだボウイの写真は見慣れたものが多かったですが、写真展であらためて観るとアートだな、と思います。

 興味深かったのは「Heroes」のジャケット写真がどのように撮られたかが分かる一枚。たくさんのフィルムに机の前で様々なポーズを取るボウイが写っています。そのうちの一枚を拡大し切り取るとあのジャケット写真が出来上がるのですね。1977、Tokyoとクレジットがありましたから、ボウイは来日して鋤田氏の被写体となったと推測されます。それだけ鋤田氏を信頼し信奉していたのでしょう。

 その他ではやはり個人的に思い入れの深いマーク・ボランの写真の前で足が止まってしまいました。以前自主的40万ヒット記念企画で勝手にフォトショさせていただいた写真も展示されていました。勝手に使って申し訳ありませんでした。
 

 もう一つのテーマである「きれい」と最後の「Banner」のコーナーには、それぞれ70-80人ものミュージシャン、俳優等のポートレイト写真が展示されていました。鋤田氏と言えばボウイボランイギー・ポップあたりをすぐ思い浮かべますが、これだけ多くのアーチストと関わっておられたことにあらためて驚きを禁じえませんでした。

 鋤田氏なら当然、と思われる方々ばかりでなく、チャック・ベリー加山雄三寺内タケシレイ・チャールズクインシー・ジョーンズウェイン・ショーターキョンキョン田中麗奈といった意外な方々の名もありました。

 そしてどの写真も凡百のポートレイトとは異なり、何気ない仕草にその人の個性が滲み出ていたり、新たな一面を発見できたりして、鋤田氏の非凡な手腕、人物観察と洞察力の深さにあらためて尊敬の念を抱いてしまいました。

 そういった中でも特に印象に残ったのは

コットンフィールドに佇む忌野清志郎
布袋&ボウイ日本武道館での競演
ニューヨークの街を歩く笑顔のトノバン(加藤和彦
フードをかぶり微笑む大竹しのぶの内面から滲み出る美しさ
若かりし頃のエルビス・コステロスティングラモーンズのTシャツを着ています)
白黒写真で撮られたジョー・ストラマージム・ジャームッシュの渋さ
田中麗奈のぞくっとするほどの美しさ

等々。著作権の関係で載せる事はできませんがどうしても観たいという方は、こちらへどうぞ。購入した写真集をスナップしたものですが、あくまでもナイショでお願いしますねm(__)m。

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(購入した写真集)

 そして今回鋤田氏の新たな一面を知ることができたのが、白黒写真の美しさと風景写真。初期の母親の写真や原爆を投下された長崎をテーマとした写真には心打たれるものがありました。また、風景写真で例えばスカイツリーを撮るにしても、スカイツリー自体はやや左に寄せて中央に飛ぶカモメ(上記写真の中央委右上にチラッと写っています)を配置して撮った写真などはさすがプロ、というレベルの高さを感じました。

 写真集のインタビューで鋤田氏は

モノクロームには写真にしかない独特の力を持っている、普段持ち歩いているデジカメの設定はいつもモノクロームにしている

と述べておられrます。そしてこの回顧展を振り返って

写真の数が意外に少ない、もっともっと撮りたかったし、もっともっと撮りたい

とも。今後の氏のますますの活躍を願って止みません。