(上段: わが唯一の望み、中段左より触覚、聴覚、嗅覚、下段左より視覚、味覚)
大阪中之島の国立国際美術館で開催されている「貴婦人と一角獣展」、気にはなっていたのですがなかなか大阪まで行く機会がありませんでした。ようやく快晴の休日の今日、ドライブがてら車を飛ばして観てきました。先日はジョルジュ・サンドとこのタペストリーにまつわる物語を上梓された原田マハさんも訪問されたとか、お話を聞いてみたかったです。
とはいうものの、実質の見ものは
たった6枚のタピスリーだけ
というキュレーターの「力技」が光る展覧会でした。
フランス国立クリュニー中世美術館の至宝《貴婦人と一角獣》は、西暦1500年頃の制作とされる6面の連作タピスリーです。19世紀の作家プロスペル・メリメやジョルジュ・サンドが言及したことで、一躍有名になりました。
千花文様(ミルフルール)が目にも鮮やかな大作のうち5面は、「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」と人間の五感を表わしていますが、残る1面「我が唯一の望み」が何を意味するかについては、“愛”“知性”“結婚”など諸説あり、いまだ謎に包まれています。
本作がフランス国外に貸し出されたのは過去にただ一度だけ、1974年のことで、アメリカのメトロポリタン美術館でした。 本展は、この中世ヨーロッパ美術の最高傑作の誉れ高い《貴婦人と一角獣》連作の6面すべてを日本で初めて公開するもので、タピスリーに描かれた貴婦人や動植物などのモティーフを、関連する彫刻、装身具、ステンドグラスなどで読みといていきます。
クリュニー中世美術館の珠玉のコレクションから厳選された約40点を通して、中世ヨーロッパに花開いた華麗で典雅な美の世界を紹介します。
(公式HPより)
『機動戦士ガンダムUC』のepisode 1「ユニコーンの日」の劇中に登場したことでも話題になったこの6面のタピスリーですが、それぞれが約3~4メートル四方の大きさで、合わせると全長22メートルにもなる大作ですので、さすがに見応えのあるものでした。
特に「わが唯一の望み」というタピスリーの醸し出す神秘な雰囲気は独特のもので、6枚の中でも特に人だかりがしておりました。
他の5枚は冒頭のポストカードの名前のごとく五感を表していると言われていますが、これも確かなものではなく、幾つかの説があります。
この見事なタピスリーが本作がフランス国外に貸し出されるのは1974年のアメリカ以来であり、日本では本展覧会が初公開だそうで、とにもかくにも眼福でした。
とはいえ、あとはその6枚のタピスリーにまつわる一角獣の図像学、植物・動物の表現、服飾と装身具の説明とそれにまつわる展示、1500年ごろのタピスリー2枚の紹介、そして楯型紋章と標章の説明と、これと言った目玉もなく、結局6枚のタピスリー頼みの展示だったのでした。
そんな退屈してしまいそうな展示巡りを充実させてくれたのは音声ガイドでした。オードリー・ヘップバーン役で有名な声優池田昌子さんの説明と、シャア・アズナブルの声で一世を風靡した池田秀一さんによるリルケの小説「マルテ・ラウリス・ブリッゲの手記」引用文の朗読は聞き応えがありました。ちなみに二人とも「ガンダムUC」に出演されているので起用されたそうです。
というわけで、ちょっと物足りない気がする展覧会でした。まあ、原田マハさんの小説を読む予習ができたと前向きに考えています。