ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

陽だまりの彼女

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 実は上野樹里はとてもいい女優だと思っているゆうけいです。「虹の女神」「サマータイムマシンブルース」などは青春映画の傑作と言っても過言ではないでしょう。というわけで、おじさんが観る映画でもなさそうなのですが、どうしても気になるので勇気を出して「陽だまりの彼女」を観てきました。

 上野樹里松本潤の個性を上手く引き出した三木孝浩の手腕は評価されるべきだと思いますが、ストーリー自体にはあまり期待しないほうがいいです。あくまでも主役の二人のどちらかを観たい人向け。

 まあそういう意味では観てよかったです。上野樹里は決して演技が上手いわけではないけれど、同世代では彼女以外誰も持っていない唯一無二の個性があり、スクリーンに独特の雰囲気を醸しだしてくれる、稀有な女優だとあらためて認識しました。
 ちなみに相手役の松本潤君の役名の苗字が偶然私と同じで、「○○君」と上野樹里が呼びかける台詞でホンワカいい気持ちになれました(笑。

『 2013年 日本映画  配給:アスミック・エース東宝

スタッフ
監督: 三木孝浩
原作: 越谷オサム
脚本: 菅野友恵、向井康介
撮影: 板倉陽子

キャスト
松本潤上野樹里玉山鉄二大倉孝二谷村美月 他

「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」というキャッチコピーが話題を呼び、累計発行部数が60万部を超える越谷オサムの同名人気小説を、松本潤上野樹里の初共演で映画化。監督は「ソラニン」「僕等がいた」の三木孝浩。新人営業マンの浩介は、仕事先で幼なじみの真緒と10年ぶりに再会する。中学時代は「学年有数のバカ」と呼ばれ、いじめられっ子だった真緒は、見違えるほど美しい大人の女性になっていた。浩介は恋に落ち、やがて結婚を決意するが、真緒には誰にも知られてはいけない不思議な秘密があった。原作にも登場し、物語ともかかわるザ・ビーチ・ボーイズの名曲「素敵じゃないか」がテーマソングとして本編を彩る。

(映画.comより)』

 冒頭小さなフレームで松本潤演じる主人公の子供時代のエピソードが簡潔に描かれます。多分それがストーリーの鍵なのだろうと容易に想像はつきましたが、映像的にも演出的にもこの導入部はなかなか良かったと思います。そして前半はありがちなラブストーリーが展開し、後半徐々に彼女の秘密が明らかとなるのですが、まあ語らぬが華でしょう。

 江ノ島を中心とした湘南の風景を切り取ったカメラワークは青春映画としてはステレオタイプなものですが、松本潤上野樹里がその風景の中に納まるとしっくりきてよかったです。

 そして一連の出来事が終息したラスト近くで画面が暗転し、この映画で大きな役目を果たしているビーチボーイズの「素敵じゃないか」をバックにその歌詞とその日本語訳がテロップのように流れます。そのあとエピローグが少しあるのですが、個人的にはそんな余計なことはせずにこの歌詞のテロップに引き続いてエンドロールに入っていったほうが余韻を残す良い終わり方だったんじゃないかと思います。

 ちなみにこの歌はビーチボーイズの最高傑作といわれる「ペットサウンズ」というアルバムに入っています(映画の中でも出てきます)。ところが今でこそ傑作とされるこのアルバムも出た当時は散々な評価でした。
 そのあたり、以前村上春樹ステレオサウンドに連載していたエッセイをまとめた「意味がなければスイングはない」の中の「ブライアン・ウィルソン 南カリフォルニア神話の喪失と再生」という章で詳しく語られています。涙なくしては読めない名文ですので興味のある方はぜひ読んでみてください。

 というわけで、個人的には上野樹里の演技を堪能しましたが、映画として評価するとなると難しいものがあります。まあ彼女に敬意を表して「トホホ」はやめておきましょう。

評価: D: イマイチ
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)

Hidamarinokanojo
(オフィシャルHPより、フリー・ダウンロード素材)