ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

田部京子のアルバムあれこれ

 関西では東大寺二月堂のお水取りも終わりようやく春を迎えつつあります。振り返りますと、我が家の冬はとても寒いので大半の時間を和室にこもって暮らしておりました。当然オーディオを楽しむ時間も少なかったのですが、その少ない時間の大半は田部京子さんのピアノを聴いて過ごしていたように思います。 私が紹介するまでもなく日本を代表するクラシック界の至宝といえるピアニストであられますが、今回は私がよく聴いていたアルバムを数点挙げてみたいと思います。

ブラームス:後期ピアノ作品集
ブラームス:後期ピアノ作品集
 私が田部さんにはまるきっかけとなった作品。当然ながらブログ記事にしようと思ったのですが、あまりにも素晴らし過ぎてレビューするのもおこがましく思われ記事に出来ませんでした。ちなみにレコ芸の『第37回リーダーズ・チョイス2012』で器楽曲部門第1位、総合部門でも第二位に選出されています。

 ブラームスの後期ピアノ作品集といえばアファナシエフが有名で私もずっと愛聴してきました。その極端なスローテンポでブラームスの楽譜を解析する透視図のような演奏も素晴らしいと思いますが、田部さんの自然体でありながら深い洞察を持って弾ききった本作も傑出した演奏であると思います。
 上野学園・石橋メモリアルホールの絶妙の残響をよくとらえた録音も素晴らしく、SACD層で聴くピアノのタッチはとても柔らかく、そして低音部の深みは格別です。

幻想ポロネーズ/ショパン・リサイタル
幻想ポロネーズ/ショパン・リサイタル
 20年余も前のデビュー作。当然ながら上記のブラームスと比べると硬い印象は否めませんが、とても新人の演奏とは思えないハイレベルな演奏。特に「幻想ポロネーズ」は素晴らしい。

メンデルスゾーン:無言歌集(抜粋)
メンデルスゾーン:無言歌集(抜粋)
 彼女の出世作ともいえるメンデルスゾーンの無言歌集。ドイツロマン派作品の持つ叙情性と田部さんの透明感溢れるタッチがとてもよくマッチしています。もちろん叙情性だけで名演になるわけもありません。確固たる技術と深い音楽解釈があってこその名演奏です。解説によりますと、ピアノ調律を担当した名調律師のロベルト・リッチャー氏が「ギーゼキング以来の名演」と称え、録音を担当したユルク・イェクリン氏はヨーロッパ音楽を「ヨーロッパの流儀」で演奏することの必要性を説いたうえでキョウコ・タベは間違いなく国際的トップ・クラスに属しており技術・解釈の双方で完全にヨーロッパ音楽の本質を自分のものとしていると称賛されています。
 まあ私のような素人にはヨーロッパの流儀とはどんなものなのかは分かりませんけれども、ナチュラルで奇を衒わない録音にその矜持を感じることはできました。さらにはBlu-Spec CDになり音質も良好です。SACDに比べると硬い印象を受けますが、高S/N比で透明感に磨きがかかっているのが田部さんの個性を更に際立たせていると思います。

ロマンス~ピアノ小品集
ロマンス~ピアノ小品集
 私お気に入りの一枚。企画モノではありますが、選曲が秀逸で一枚のアルバムとしての完成度の高い作品となっています。個人的には一曲目のシベリウスの「ロマンス」の小品でありながらスケールの大きな演奏がとても気に入っております。初期の作品集ですがすでにブラームス後期ピアノ作品集から一曲取り上げていることにも注目。

ピアニシモ
ピアニシモ
 こちらも企画モノで、ピアニシモで始まりピアニシモに終わる静かな作品集。アヴェ・マリア、子守唄、夢の三つのテーマで選曲されています。彼女の十八番のシューベルトのあまりも有名なアヴェ・マリアから始まりますが、二曲目のカッチーニのそれも素晴らしいです。

 他にもいろいろとありますが、というよりも他に紹介すべき傑作が沢山あるだろうとツッコミを入れられそうな紹介ではありましたが、まあこの辺で勘弁していただきます。それにしても田部さんの演奏、一度生で聴いてみたいです。