ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

カラスの親指

Karasunooyayubi
(公式HPのフリーDL素材)
 阿部寛ファンの家内とともに、面白い詐欺師映画と話題になっている「カラスの親指」を観てきました。原作を読むとネタが割れてしまうので未読のまま見ましたが、まあまあ楽しめました。。。とは言うもののシリアス路線を目指したのかコメディ路線を狙ったのかどっちつかずの感があり、ちょっと中途半端な仕上がりでした。

『2012年 日本映画 20世紀フォックス映画、ファントム・フィルム配給

スタッフ
監督: 伊藤匡史
原作: 道尾秀介
脚本: 伊藤匡史

キャスト
阿部寛村上ショージ石原さとみ能年玲奈小柳友、他

直木賞作家・道尾秀介の代表作を阿部寛主演で映画化。負けっぱなしの人生を送ってきた2人の詐欺師タケとテツのもとに、ひょんなことから不幸な生い立ちを背負った美人姉妹と1人の青年が転がり込んでくる。5人は家族さながらの共同生活を始め、タケが過去に起こしたある事件をきっかけに、人生の再逆転を狙った一世一代の大勝負に打って出ることになる。阿部演じるタケの相棒テツに村上ジョージ。2人のもとにやってくる3人の若者を石原さとみ能年玲奈小柳友が演じる。(映画.comより)』

 冒頭、競馬場で阿部寛村上ショージの組んだ芝居でプロの詐欺師を騙すエピソードは面白くテンポもあり、快調な滑り出し。これは面白くなりそうと期待を抱かせます。

 しかし、阿部寛が会社の同僚の借金の保証人になったばかりに膨大な借金を抱え込み、挙句の果てに取立て屋にされてしまい、一人の女性を借金苦から自殺に追いやってしまった腹いせに組織を裏切る、といった過去を語り始めるあたりからやや話は湿りがちになってきます。

 更にはスリの若い女の子を助けたのが縁で借家に5人住まいする羽目に陥るあたりでホーム・コメディ・タッチとなり、展開はかなりスローダウン。

 後半の裏闇金組織への反攻で再びテンポを回復しますが、その反攻もちょっと甘すぎるような気がします。原作はもっとしっかりと作りこんでいるのかもしれませんが、あんな甘い作戦にプロがひっかかるのか、と首を傾げたくなるシーンのオンパレード。特に阿部ちゃんの変装。帽子を脱いでばれそうになるシーンには手に汗握りましたが、いざ取ってみると。。。ネタバレはやめておきますが、あれでばれないなんてありえんやろう、笑いを取るシーンかと脱力してしまいました。

 最後15分程度で、今までの物語を全てひっくり返すようなネタ明かしをするところは御見事でしたが、それまでの引っ張り方がシリアスにも徹しきれず、コメディ・タッチにもなりきれずで惜しかったと思います。

 出演陣に関しては、阿部寛はもうすっかり安定した演技で文句のつけようがありません。問題はもう一人の主役、村上ショージでしょうね。大した芸も持っていないのに明石屋さんまに小判サメのようにくっついて浮き沈みの激しい芸能界を生き残ってきた芸人、というイメージでしたが、そういう頼りないダメ男的な雰囲気が新米詐欺師という役どころにあうと考えての起用だったのだろうと思います。確かに彼の醸す雰囲気や所作は悪くはなかったと思います。問題は台詞です。棒読みもいいところ。仙台出身という設定なので関西弁を使えず苦労したんでしょうけれど、あの棒読みを最初から最後まで聞かされるのはちょっと苦痛でした。

 ちなみにラーメン屋さん役ではるかに芸達者な関西芸人が登場するのですが、彼にやらせた方が安心して見ていられたかも。。。とはいえ、巧すぎて阿部ちゃんを食ってしまうかもしれないですし、ちょっと年もあいませんし、やっぱりショージでよかったのかなあ(苦笑。

 女性では新人の能年玲奈が溌剌として姉妹役のベテラン石原さとみに負けない演技を見せていたのが印象的でした。彼女は今後注目の逸材ですね、早くも来年のNHK連続小説のヒロインに決定しているようです。

 というわけで、悪くはない映画でしたが、手放しで褒めるわけにもいかないちょっと中途半端な映画でした。それにしてもこの映画、公開したばかりだというのに9時と17時10分という中途半端な時間帯の二回だけの上映。何故なんだろうとネットで調べてみたら160分という上映時間の長さがネックになっているようです。そんなに長かったとは感じませんでした。ということは頭で考えるよりも感覚的には面白い映画だったのかも、と最後に感想をひっくり返してみたりする(^_^;)。

評価: D: イマイチ
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)